夢の中
目を覚ますと、蒼く広がる神秘的な草原が視界に広がった。
冷たく澄んだ風が頬を掠める。
とても気持ちが良い。
(ここは……どこだ?)
辺りを見渡してみると、一本の大きな木の下にぽつり。青年が一人立っていた。
とりあえずここがどこなのか聞いてみよう。
「ここは君の夢だよ。」
青年のいる木の元へ近づこうと少し歩いたところで青年が口を開いた。
「待ってたよ。スズ。」
青年はボクの方へと来るわけでも、遠ざかる訳でもなくただこちらをじっと見て、ボクが来るのを待っていた。
ボクは青年の元へと行き、青年に問う。
「どうしてボクの名前を知ってるの?」
青年は答えた。
「そんなことどうだって良いじゃないか。ここは君の夢の中なんだから、なんだってありえるでしょ。」
確かに。夢なら何事も起こり得る。夢にこれはおかしいと言ったって、夢は元々おかしなことに溢れているのだからそれこそおかしなことだ。
青年は隣に来るようにと手招きした。
導かれるままに、ボクは青年の隣に座る。
青年とふたりぼっち。ボクはどこか懐かしい気分になった。
「お話、聞く?」
青年は表情ひとつ変えずに言う。
ボクはどこかふわふわとした思いのまま頷いた。
そこでようやく青年はボクの目を見て、ふわりと笑った。
そして一冊の本を開き、語りだした。