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異能探偵社の新参者  作者: nasa*
17/25

第十七頁 【孤立無援 ①】

 こりつ-むえん【孤立無援】

①頼るものがなく、ひとりぼっちで助けのないさま。


――――――――――――――――――――――――――――――






 【帝都拾参区(じゅうさんく)

 広大な【帝都】の中で最も治安が悪く不安定な地区。

 無法者が入り乱れ、闊歩し、軍警もその治安を放棄しているこの地区では、全うな商店など無いに等しく、ボロボロの闇市や酒場の看板が下がり、薄暗い路地には人買いやら売人やら怪しい男たちや危険な空気を纏った人間がたむろしている。

 そんな暗い通りが並ぶ一つの道に我が物顔でたむろしていた男達は奥から響いて来た乾いた下駄の音に動きを止めるとスッと道をあけた。


 その間から、この空間に似合わない白い服を纏った黒髪の美人が現れた。透けるような白い肌は薄化粧で整った顔立ちが良く生えている。少し遅れて赤みを帯びた茶髪に燃えるような赤い瞳の男が続く。全く真逆の二人のようだが纏っている危険な雰囲気は同じだ。

「お帰りなさい、禅さん」

 水無月小夜(みなづきさよ)が薄い微笑みで迎える。

「ただいま、小夜。__焔も」

 男、陣刀焔(じんとうほむら)は軽く会釈を返した。その間も一行は歩みを止めず更に通路の奥に進んだ。

「ちゃんとできたの?」

「出来たに決まってんだろ!ちゃんと殺しといたって」

 小夜のからかうような言葉に悠真は頬を膨らませて言い返す。


「で、なんで路佑はダウンしてるわけ」

 焔が面白そうにボロボロの路佑を見つけると聞いた。その言葉に路佑の表情があからさまに不機嫌になった。

「なんだよ? やられたのか? 誰だよ、探偵社のやつか? 縁か? 東郷か? 園村か? 暮葉か能登か……それとも」

 絶え間なく言う焔の言葉と名前に路佑の顔が更に不機嫌になるが、その一瞬を焔は見逃さなかった。

「ハッ、東郷か!あの甘い野郎にやられたわけ!?」

「…………」

「ちょっと、焔」

 さすがに小夜が諌めに入るが焔はまったく気にも止めていない。

「油断でもしたか?あいつの異能は知ってんだろ?」

「…………それ以上言ったら」

「やるか?」

 口を開いた路佑と焔の間で殺気が交差する。


「焔。それぐらいにしとけ」

 禅十郎の言葉にさすがに焔も両手を上げて路佑からはなれた。そこではじめて少し離れた場所を歩く桃矢を見つけた。

「……なんだ、お前もか。てっきり逃げ出したのかと思ったぜ?」

「……お久しぶりです」

 桃矢は会釈を返しつつも、久しぶりに訪れたこの空間に吐き気を覚えていた。

 周囲にいる血の気の多い男達は相変わらず、目の前に立っている以前は櫻の同僚として見ていた人間達も、自分の異能を知った今では違う感情を抱いてしまう。

 今目の前で繰り広げられる殺伐とした会話も空気も。それは異能探偵社の人間達との会話で感じていた心地よさとは何処かが違う。

 黙った一行は入り組んだ路地を二度三度右折左折を繰り返し古い建物の前に立った。

 レンガで出来たその古い建物は周囲の高い建物に囲まれているようで一様に怪しい雰囲気を孕んでいた。

 【亡霊(レムレース)】の拠点だ。


 花が先頭に立って扉を開け、他の面々はその後に続いた。中の廊下は外見と違って簡素だが整えられた空間だった。最低限の明かりしかないが汚いと言う印象はない。

 そこをさらに進んで開けた空間に出た。

 【亡霊(レムレース)】の構成員達が拠点に使っている空間で、開けた工場跡地のようにも見える。

 そこにも数人の人間達が集まっており、彼らも到着した禅十郎一行を見ると立ち上がって敬礼した。


「あぁ、黒尾さんおかえりなさい~」

「お疲れさまです」

 軽い調子で声をかけたのは色素の薄い灰色の髪、桃矢とあまり歳の変わらない少女だ。女性の割に高い身長と厚着のせいでかなり大柄に見える。【亡霊(レムレース)】で桃矢に対して普通の態度を見せた数少ない人間である(まだら)だ。

 斑の隣に立っているのは長い黒髪をひとつに結った女性だった。小柄であまり化粧をしていないが深緑色の瞳で禅十郎たちを見ると会釈した。桃矢はどこかで見たような気がしたがその記憶を掴む事は出来なかった。


「とりあえず、桃矢は【墓地】にいってもらおうか」

 散らばっている資材のひとつに腰をかけた禅十郎はこともなげに言った。

「え……?」

「逃げた罰だよ」

 いつもと変わらない感情の読めない不敵な笑み。

 その台詞に焔がニヤニヤ笑った。

「まさか、大人しく帰ってくればなんのおとがめもなしで、あの探偵社の奴らも巻き込まずにいられると思ってたのか?」

 桃矢の心を見透かしたような言葉。

 【墓地】とは建物の最上階にある。簡単に言えば監禁部屋だ。


「連れてけ」

 唖然とする桃矢をあざ笑うように焰が構成員の一人を呼んで連れて行かせた。

「俺たちは、あの探偵社の連中みたいなお人好し集団じゃないんだよ」

 何も言えない桃矢をひきづるようにして、桃矢は【墓地】に連れて行かれた。



「失敗も逃亡も同じだ」

【資料09】


  ■水無月小夜/ミナヅキ サヨ  【女/21】


 【亡霊】の構成員の異能者。

 氷のように冷徹であまり感情を見せない。桃矢(櫻)に良い感情を持っていない。



  ■陣刀 焰/ジントウ ホムラ  【男/22】


 【亡霊】の構成員の異能者。

 狡猾で残忍な戦闘狂。禅十郎以外の仲間にも容赦ない。


   ■瀬良 悠真/セラ ユウマ  【男/22】

 【亡霊】の構成員の異能者。

 殺しにも明るく純粋。

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