ビバ9★炎の消し方を学びました
朝が訪れた。ワイヴァーン殺しまであと六日。
鑑真は龍羅に頭を下げていた。
「あ? 消し方のレクチャーだぁ?」
「よろしく」
既に決まった様に言えば反抗しないだろう。しかし、
「あとで千円な」
予想とは大きく違う形で承諾された。
「それにしても俺の意見なんか受け入れてくれないと思ったぜ」
「ち、ちょっとしたサービスだよっ!」
「大人のサービスかい?」
「違う!まあ、お前がそこまで言うならやってあげなくもないけど…」
最後の方が口ごもっていた。そして、
「って、なんてこと言わせんのじゃあ!紗良に言ってこいや!!」
痣ができた。あととても痛かった。つまり殴られた。
「んで、まず操作系の能力の基本はここまでだ。あとは、型がどれか当てはめてみるだけだな」
長い話だった。六時間はゆうに越える壮絶な講義だった。長いので要約すると、操作系は型と呼ばれる四つのものに分類され、その型が解らなければ、能力停止ができないそうだ。能力停止はそのまま文字の通り。
「んじゃ、俺はこれで」
「おいちょっと待てよ! 講師にもの言わせるだけ言わせといて颯爽と居眠りかよ! クラスに一人はいるよなそういうの」
はい。いました。三人ほど。ちなみに俺も。
「といわれても、俺だけじゃ型とかわかんなくね?」
それは深刻な問題であった。はっきり言ってわからない。はい、寝てたので一からどうぞ。補習? 知りません。
「だからさ、型を見るんだよ。いや、見てもらうんだ」
え? やっぱアナライザーとかいるの? 王道じゃん。やだやだ。
「お前今さっきアナライザーいるのかと思っただろうが違う。あたしのような知識でわかる」
そりゃすごい。エスパーもあるんですね。頭を龍羅に入れ替える。
「じゃあ、今から言う二つのことを全部やれ。まずその一。その炎でお前の体のどっか焼いてみろ」
「死ねって言うんですか!?」
それは言葉にさせてもらうぜ!しかし龍羅はマジのようだったので、やってみた。
熱くない。
「熱くない!?」
「おー。はいはい、今これで、お前の能力がお前自身に効果を及ぼすことがないということがわかった。つまりお前は、その能力を従属させている。消せることがわかったはずだ」
は? ニュービーにも解るように説明してね!
「じゃ、次行くぜ。次は、その炎を調節してみろ」
ほいほいほい。こんな風にすると、
ボオッ!
となったり、
ぽっ、となったりする。
「おし、出来たな。お前は、その炎を消すために、その炎をなくすではなく、火力をゼロにするというイマジネーションをしないといけない。その理由は噛み砕いてあとで説明してやる」
今してよ! 気になるよ!
「じゃ、やってみろ」
「ほいほい」
鑑真は炎を出し、言われたとおり「炎を消す」というイマジネーションではなく「火力を消す」というイマジネーションをした。
すると、いとも簡単に炎が消えた。
「おお、やべえ! ほんとに消えたよ!」
「だろ。教えた甲斐があったぜ」
半分以上あの講義で寝ていたことは言わないでおこう。
「あら、おかえりご主人様」
その呼び方やめてください。
「お兄ちゃんおかえりなさい」
かわいいよ最高だよ!
「なんだよ、あたしへの歓迎はなしかよぅ」
「歓迎の代わりにお酒を買ってきましたわ。存分に飲みませんこと?」
「それ最高だね」
鑑真が条件反射で答えていた。なに、ニートでへべれけ? ごめんなさい。社会のゴミ屑です。
というわけで宴会が開かれることになった。すると行基が、
「あの、僕からもひとつ」
と言ってきたので、
「宴会の後でね。それよりお前も飲もうぜ!」
とフった。盛り上がるムードのなか一人だけお酒を飲めない瑞希が涙目でこちらを睨んでいた。