ビバ6★王家最弱の能力でした
「誰だよ」
それが鑑真の第一声だった。こいつが誰かすら知らない。大体オフ会なんて行ったことがないからわかるわけない。
「ユザネも行基です」
「あぁお前か!」
わかったようだ。ヘエウレーカ!
「でも行基さんって女性の方じゃなかった、お兄ちゃん?」
「ネカマですかそうでふか」
「いいじゃないですかそれで。どうせ僕は女の子みたいな奴ですよぅ」
どうやら自分の意志でやっていたようだ。それまた恐ろしい。
「で、何の用だよ」
「あ、あのぉ。言いにくいんですが」
「何だよ。俺にホモになれってか」
「いえ、あなた達の仲間に入れてくれませんか?」
「大歓迎だよ行基お姉ちゃん」
瑞希にも性別を間違えられた。てか、さっきネカマだったって確認しただろ!
そして行基は焦った顔で、
「ありがとうお二人とも」
と言いそわそわしていた。
が。
紗良がこの光景を見ていた。
「また新しい肉奴隷かしら」
「こいつ男だよ!」
「あら、ホモになったみたいね」
もちろん殴られた。ついでに瑞希も殴られた。
「お兄ちゃん紗良のグーパンチ痛かったよぉ…」
瑞希は今べそをかいていた。理由はさっき紗良の放った、鑑真が吹っ飛ばされるようなパンチを瑞希も食らったからだ。一応、鑑真は瑞希を慰めた。
「ま、まあ、泣かないでくれよ」
「でも、今度やったら氷付けにするっていってた」
「それ俺十回ぐらい食らってるからね?」
「じゃあ弱そうだね」
なんだその決め方は。まあ怒らないでおいた。
こういう、瑞希と二人の時間が鑑真には心地よかった。紗良に虐げられたり龍羅にパンチされたり、瑠璃に暴言吐かれたりするよりはよかった。何か、ゲーム以外の場所でも繋がっているんじゃないか、と思った。いや、繋がってなくても、今は立派な第二の家族だ。
ぼうっとしていると瑞希は心配そうに顔を覗き込んだ。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「おう、お前といると心が安らぐよ」
満足そうに笑う瑞希に癒された鑑真だった。
のもつかの間。今回は瑠璃が見ていた。
「あら、随分楽しんでますのねお二人とも」
「うん、楽しいよ」
なんでそんなこと言いますかね。
「な、なんですのこんなチビとラブラブして」
「人はそんなチビをロリという」
なんでそんなこと言いますかねその二。
「鑑真さん、あなたには教育が必要ですわ! 私の秘奥技見せてあげますわよ! 爆流!」
消防のホース10本分ぐらいの水圧が襲いかかってきた。
「まさかあなたの能力が水だったとは恐れ入りました」
「でも私の能力では勢いよく出すことしか出来ませんわ」
「私の放電も、勢いよく直流の電流が流れるの」
へえ、コントロールできないんだ。勝ったぞ勝ったぞ。
「でも龍羅ちゃんの回復はすごい。真回復師と呼ばれるまでの回復力だったんだよ」
「すげえな」
龍羅はコントロールできる感じのやつか。確かにすごい。
「そして紗良もコントロールできるし、鑑真お兄ちゃんは、絶対にできる側だよ。だって火事の事件もお兄ちゃんがやったんでしょ?」
「はい、そうです」
「あのときは格好良かったのにどうしてこうなったんですの」
「すみません」
英雄扱いされながら落とされるのが一番落差が大きくてきついものだと思った。
「格好良さは消しなさい。消火したのは私なのよ」
そして二段で落とされた。
「でも早く操れるようにならないとまずいわよ。あなたのは操作できるのだから。獄炎の使い手さん」
「「獄炎!?」」
意味分かんねえ。
「獄炎って、あれですの?」
「最後の栃木王が使っていた…」
そんなのいたんだ。取りあえず話を聞こう。
「「王家最弱の能力…?」」
聞かなきゃよかった。いいのかだめなのかわかんないよそれ!
「そうですよね期待した方が悪かったいきなりあっちの世界に行ったからって大成功するわけないですよねすいませんでした」
「落ち着きなさい」
「獄炎がこの世界中で最強格だってことに変わりはないよお兄ちゃん」
「そうなの? やったー」
今度能力の実験でもしようかな。
夜になった。
やっぱりもう一度あいたい。
きっと俺を待っているあの人に。
ギルドマスターの、空海さんに。
ふと、遠くで車の音がしたが、まあ気のせいだろう。