ビバ5★少女の過去を知りました
「それは不可能だ。なぜなら俺、山田鑑真には三人の嫁がいるから」
少し学習した。多分、この局面でも誰かが見ているだろう。言っていることは馬鹿馬鹿しいが。
すると彼女は札束を無造作に投げつけた。
「あなたがこの私、宮本瑠璃の婚約者になってくださるのでしたら、このくらいいくらでもあげますわ」
「よろしくぅ!!」
目がくらんだ。物凄い大金だったのだ。宿を買えるような金だった。いや俺がニートだから目がくらむとかそういうんじゃなくて、これは物凄いのつく大金だ。まじです信じてください。
そしてもちろん現嫁は見ていた。瑞希だ。
「そこの女の子と何をしていたの?」
「あ、いえそのですね」
「何ですのその女は」
バリバリバリリィ!
瑞希の能力の放電で黒こげにされた。
実に三分後。
「瑞希ちゃんに放電食らいました」
「また不倫なのね。いい加減女の子を籠絡するのはやめなさい」
「そうだぞ、鑑真。子供作っても相手が子供じゃ意味ないぜ」
「むぅ、子供扱いして……私子供じゃないもん」
いやいや! 小学生の言うことじゃないね!
「それより、新入りに挨拶してもらわないか?」
全員が頷いた。
「私本日よりここでお世話になる宮本瑠璃ですわ。これからよろしくお願いいたします」
「えーと、これも告白して不倫ってことでいいのかしら。実は私も告白して彼は瞬時にオーケーしたのよ」
「あたしもだな」
「私は少しシンキングタイムがあったけど、鑑真お兄ちゃんはすぐオーケーしてくれた」
「…金で買いましたわ」
誤解のあるセリフを吐かないでくれ!
「お金、購入、奴隷、肉奴隷…」
「肉奴隷なんか作ったの?バカバカしいわね」
「ええっ、鑑真お兄ちゃんそんなこと考えてたの!?」
全部違います。火に油を注ぐように瑞希が言った。
「でも、ここ、寝るところ一室しかないよ」
「おい! 子供ができるぞ!」
「子供ができたら大問題ね。やめて頂戴」
「これが噂のハーレムというものなんですのね…」
「もうやめでぐれよ!」
すでに半泣きだった。
夜になった。
女の子たちは眠ってしまったので、一人であっちの世界について考えていた。
(まずギルマスには謝らないとな。この最強格無課金アタッカーの俺が抜けたらいろいろピンチだろ)
「お兄ちゃん、あっちの世界はもういけないかもしれないよ」
「瑞希? どうしたの?」
「お兄ちゃんの顔で前いた世界のこと考えてるって、すぐわかったよ。私も、小学校でいじめられて不登校になって久しぶりに外に出ようとしたら穴があったの。それまではずーっとニート生活してた」
「瑞希はもう戻りたくはないのか?」
「うん、もう戻りたくないよ。毎日ファイア・ファンタズマってゲームやってた時代は終わったの」
「俺もやってたよそれ! なんて名前だったの?」
「ウォーター」
「あんた、2カ月前に失踪したうちのギルドのサブマスターじゃん」
意外な出会いだった。女の子を名乗っていたのでネットのオカマ通称ネカマかと思ったのだが、本当に女の子だったとは。
「そうか。でも俺は、姉さんって物を置いてきてしまったからな。姉さんが来ればいいんだけど」
「そうなの、家族かぁ、私も優しい家族が欲しかったの」
今にも泣き出しそうだったので止めた。
「じゃあ、今日からは、俺はお前の家族だ。瑞希の実の父さんよりいい奴になってやるよ」
「本当!? 嬉しい! お兄ちゃん大好き!」
また抱きつかれた。十歳とはいえとてもいい匂いがする。そして体の欲望がそそられていく。
その瞬間を、瑠璃がバッチリ見ていた。
「家族、ですの? 何をおっしゃいますの。鑑真は私のものですわ。だいたいあなたの年じゃ結婚も出来ないでしょうに」
「兄と妹って設定だからいいの!」
「兄弟愛なんて不純ですわ。妹さんが目も当てられないような雌豚になっても知りませんわよ」
「お兄ちゃんはそんなことしないよ!」
この中で一番鑑真のことをよく知っているのは瑞希だ、と痛感した鑑真だった。
翌朝。
「オハヨー」
「流石に六時は早すぎるわよ」
「俺そんなだったぜ」
「規則正しいニートなのね」
そんなこと言われたの姉が言ってくれたとき以来だ。ただしそのときはニートを強調していて、今は規則正しいを強調していたが。
「おはよう、お兄ちゃん」
「おう、オハヨー」
「今日はえっちなことしないんですのね」
「いつもしてるのかしら」
「してねえよ」
朝からえっちなこと考えるな。
すると、開店前の店に少女が入ってきた。
「失礼します。山田鑑真さんはあなたですね」
声で少年とわかった。そして、
「僕、ファイア・ファンタズマのあなたのギルドのメンバーの、麻咋行基です」
と言った。