blood07.
バンッと扉が開くと国民たちが一斉に振り返った。
「殺せええええ!!姫を殺すんだーー!」
そんな声がたくさん重なって聞こえ出した。雪刃は目をつぶるとゆっくり目を開け国民たちに向かって声をあげた。
「いくらでもかかってきなさい!!!…私はここにいます。死ぬ覚悟がある者はすぐにでも来るといい。これは姫としての命令よ!!」
国民たちがびくりとして静まり返り、動きを止める。
「ひ…姫様…」
「私が死んでも一族は死なない。いや、誰だとしても死なせやしない。きなさい、夜空雪刃という、魅血鬼の姫を本気で殺りたいのならば。」
雪刃の赤い瞳がまっすぐ国民たちをとらえる。国民たちは誰一人として動こうとはしなかった。
「母様…」
「…珱華」
二人は同時に剣を抜いた。次の瞬間、舞うように雪刃がなにかを避けた。
「見事だ、雪刃姫」
秋冬が拍手をして目の前に立っている。その後ろには颯真が立っていた。
「雪刃、君との再会を望んでいた人物を連れてきた。颯真だよ。」
「……」
「…あなたと話すことはないわ。母様から全て聞いた。」
「…雪刃。こうして秋冬のおかげで生きられた。姉が君を殺したがっているらしいことは聞いた。…申し訳ない…」
「颯真は悪くない。けど、あなたを倒す責務があるようね。」
剣を構え、まっすぐ見つめる。
「容赦はないわ、颯真。秋冬側についた以上、あなたを倒す」
「そんな簡単に颯真を倒されては困るな、夜空雪刃」
莉音がタイミングよく現れる。
「!!」
「あなたの相手は私よ、莉音」
「ほう、小娘がいきがりおって。手加減はせぬ」
一瞬だった。莉音が手をかざした瞬間珱華がゆっくりと倒れる。
「珱華!!」
「小娘には、黙っていてもらいたいのでな」
「莉音様、オレが倒しますよ」
秋冬が前に出てきて、手のひらに炎を灯す。直後、その炎は形を変え、見覚えのある短刀に変わった。
「…私のと同じ…」
「行け、雪刃を殺せ」
ふっと息を吹くと短刀は雪刃めがけてまっすぐに飛んだ。雪刃はひらりとかわすとくるりと宙を舞い、離れた場所に着地した。
「さすがは魅血鬼の姫。短刀を向けただけでは殺せないか。…颯真、雪刃を殺してこい」
颯真はゆらりと身体を雪刃のほうへ向けると一瞬で瞬間移動した。
「ゆ…きは…」
「っ…く…ぁ」
ぎりぎりと首を絞められる。力が徐々に強くなり、苦しさにもがいた。
「(なんとか…抜けなきゃ…)」
雪刃は颯真の手を掴むと手に短刀を突き刺した。
「っ…!」
力が緩んだ隙に抜け出し、雪刃はなんとか体勢を整える。
「っ…はぁはぁ…」
「姫、さすがだねえ。でも、颯真はそんなくらいじゃ死なないよ?下がれ、颯真」
颯真は痛みすら感じないのか、秋冬の側に行くと虚ろな目でただ見つめていた。
「オレを殺してみな、姫」
秋冬は手のひらに炎が灯る。雪刃は剣を再び構える。
「国民たちを返して」
「雪刃次第だよ。莉音様の下につくかどうか」
「断るわ。そんなことしない。」
「へえ、じゃあ、オレと姫弥乃と勝負だね。雪刃が勝ったら返してあげる」
ニヤリと笑うと一瞬で二人に囲まれる。
金属音がぶつかり合う音が響く。
「二人を相手にするなんて大変じゃない?早く死んだら?」
「…くっ!」
チカラを使い二人を吹き飛ばした。目が赤くなり手をかざす。
「我に従え」
「う…ごけない…」
「この能力は…莉音様以上だ」
「秋冬、姫弥乃、何をしておる!早く殺さぬか!」
「莉音様…私たちが」
聖奈たちが拳銃と剣を構え雪刃に向かっていく。
雪刃は瞬時に避け、蒼い花吹雪を拳銃に複製し聖奈たちに向ける。
「!!」
「この国は、渡さない。魔血の者たちよ、出て行きなさい。」
「くっ…許さぬ」
莉音は雪刃を睨みつけると瞬時に消えた。
「(…いなくなった?)」
雪刃は警戒しつつ辺りを見渡す。