blood04.
「莉音はこの城の中ね。…行きましょ」
ヴーンッ
「「!?」」
「ここから先は通さない。我らがいる限り。行くぞ、優羽」
「ああ、わかってるよ櫂。お嬢さんとガキが相手か。面倒だがすぐ済む」
シュッと腕から剣と鎌が出てきて構える青年二人に構える珱華たち。
「困ったわね、通してもらえないなんて」
「姉さん大丈夫だよ。僕たちが勝つから」
「ほう、面白いな。どんな根拠がある?」
「(こいつ…っ…普通じゃない)」
「お嬢さん、名前は?」
「珱華よ。夜空珱華」
「珱華、ね。覚えといてやる。では、ひとつ教えてやろう。俺と優羽はお嬢さんたちの親のコピーだ。葉城颯真が完成させた俺と優羽が揃い、お嬢さんたちの国を滅ぼせと主人が命じれば国が滅ぶ。お嬢さんら共々サヨナラってことだ。」
「そんなこと…させない」
「国は…滅ばない。だって自慢の母様と父様がいるもの」
優羽と櫂はニヤリと笑うと、こう言った。
「「安心しろ、お前たちの親は今頃、場内で国民たちに反乱を起こされ死にかけている、からな」」
「!?」
珱華の動きがぴたりと止まる。直後。
「んんんっ!」
無理やりキスをされ、櫂はにこっと笑った。
「感情がないキスのお味は?」
「っ…まずいに決まってんでしょっ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「姉さんになにをした?」
「別になにも?挨拶代わりにキスをしただけだよ」
「くっ…」
ふらり、と身体がふわふわとする感覚に襲われる。2人を倒して星悟と莉音の元に行かなきゃ。けれど…
「(身体が…言うことを聞かない…っ…麻酔?)」
「お嬢さん、どうした?ふらふらして。そんなんじゃ俺らの主人のとこなんて行けないぜ?」
「な…にを…したの…」
「ちょーっとね。おてんばな次期姫君をおとなしくさせただけさ。さて、そこのガキ。てめーの名は?」
「…夜空星悟。」
「ふーん…てことはてめーは弟か。聞いてた通りだな。」
「……」
星悟は剣を構え睨みつけながら一歩ずつ下がる。そして詠唱した。
「星よ、我に答えよ。我、夜空、翡翠の血を引く者。この剣の真のチカラの元に命ずる。クローンを滅するチカラを我に与えよ。来れ、星のレクインズ・キル。」
ふっと息を吹き込むと剣が光り出す。
「はあああああああ!」
飛びかかり、優羽と櫂の心臓とも言える場所に同時に剣を刺した。
「お前らの負けだ。」
「「!?な…にを!?」」
二体は自爆した。
星悟は煙の中、珱華を背負い、先へと進んだ。
静かな無音状態が続く空間。昔の城の名残りなのだろうか、部屋には鍵がついており、まだ使えるようだった。
「(ここで休もう。鍵をかければ誰もわからない)」
珱華をベッドに寝せて、星悟は見張りながら眠ったのだった。
ギシっ…
「(こ…こは…?…星悟…?)」
目を開け、辺りを見回すと星悟は眠っていた。確かあの二体のクローンに……ああ、自分を守ってくれたのか。
珱華はぼんやりと窓に目を向けた。まだ、夜明けじゃない。父さまも母さまも無事かしら…。星悟が守ってくれたことに感謝しつつ、
そんなことを考えながらまた意識を手放した。
翌日。
「珱華、行こう、莉音を倒しに」
「ええ、星悟、行きましょ」
二人は辺りを警戒しながら奥へと進む。すると声が聞こえ、暗闇に隠れた。
「莉音さま、例の魅血鬼姉弟が侵入したようです。クローンを倒し、煙の中に消えたとの報告。行き先は莉音さまの元かと」
「そうか、報告ご苦労。下がれ」
「はっ」
兵士と思わしき男は部屋を出て行った。
「大したチカラもないくせに我を倒す気か、魅血鬼姉弟。ふん、笑わせる。この手で殺すのは簡単すぎて退屈だ。まあ、ここまでたどり着くなぞ簡単すぎたかの。…魔蠣姉妹。」
「「なんでしょうか、莉音さま」」
「魅血鬼がきても手を出すな。我一人で十分だ。」
「…私たちでは役に立てないと?」
「いや、殺すのは我だ。邪魔をするな。」
「…はい、マスター」
聖奈は下を向きつつも玲奈を連れ、下がった。
「時はきた。この手で倒す。魅血鬼を。魔血鬼の新時代を開く、必ず」
拳を握りしめ、莉音は不敵な笑みを浮かべた。