last blood.
雪刃はがくんと力が抜けたようにその場に座り込んだ。莉音たちは確かに消えた。辺りには倒れている珱華のみが横たわり、静けさを取り戻していた。
「雪刃っ!!」
ドアを開け悠兎がかけよってきて抱きしめる。
「(あたたかい…)」
「しっかりしろ、雪刃!聞こえるか!?」
雪刃は静かに頷く。視界がぼんやりする。悠兎の声が必死で呼んでいるのが伝わってくる。珱華を…みんなを…わたしは…無事守れた…。一国の姫として…やり遂げた…。
「雪刃、死ぬな!!まだ…」
悠兎、泣かないで…。そっと手を伸ばして頭を撫でる。
「悠兎…愛してる…わたし、みんなを守れたよ…」
涙を流す悠兎はただただ頷く。
「俺もだ、雪刃。よく守ったよ、お前は。ありがとな…」
「うん。星悟と珱華、それに国民たちを守れてよかった…」
珱華のほうを見つめると既に使用人たちが駆けつけていて手当てを始めていた。
「雪刃。」
「お母様…」
「今はゆっくり療養なさい。皆のためにも。貴女のためにも。」
「ありがとうございます…」
「雪刃?!」
「大丈夫です、眠っただけですから。悠兎、雪刃をよろしくお願いします。」
「もちろんです、魅姫様」
「…ではそろそろわたくしは消えますわ。またお会いしましょう。」
「どこへ?」
行くのか、と言う前に、魅姫はウィンクをして偉大なる王の元へ、とだけ告げて消えた。
それから幾つか年月が経つも、雪刃は今も眠り続けている。珱華たちは立派になり、姫として、王子として振る舞い、珱華は雪刃のように勇ましく育った。
「雪刃。珱華はお前のようになると言って勇ましく育った。星悟も王子らしく育った。お前にも見てもらいたい…」
悠兎は雪刃の手を握り話しかける。返ってこなくても待ち続けると決めた。またあの笑顔で雪刃が話すまで。