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消えたカラアゲの行方  作者: みりん
新しい『いばしょ』
39/51

左手

投稿してるつもりでしてませんでした!Σ( ̄□ ̄;)


少し長くなったので2話に分けましたが、切りどころが悪かったらすみません。

 私と魔力のご対面から、はや一月が過ぎた。

あのあと落ち着いてから、今後無意識にでも魔力を使ってしまったときはその都度報告するように言いつけられた。


夢の中で私が無理矢理に魔力と融合しようとしていたとき、私の身体が危篤な状態に陥っていたというのはその時説明を聞いて判明したことだ。

死にかけの私をこれ以上見たくないのだろうし、私自身そう何度も死にかけたい訳ではないので、素直に報告するようにしている。


そして私の状態を聞かされた後、モココの花の保存魔術をどうやったのか聞かれた。

あのときの適当無茶苦茶な魔術を説明(ちゃんと幼児レベルで)したら、お父様もお母様も蒼くなっていた。

一体どうしてだったのだろうか。

私の下手な説明と舌足らずな発音では上手く伝わらなかったのかもしれない。

そういえば私はまだ魔術の勉強をしたことがないし、前世でも魔術の知識なぞ無かったのにどうして魔術が使えたのだろうか。

魔力が私の意図をくみ取ったから魔術が構築されたにしても、魔術の仕組みを知らない私の意図を魔術として発動するのは至難の技だろう。


……もしや魔力さん、あなたチートですか


と言っても、かつてお姉様が読んでいた魔術についてかかれた本の超初級魔術の詠唱は成功しなかった。

滑舌のせいかとも思ったりしたが、私の中の魔力にとっては滑舌なんて関係ないだろう。

よくわからない。





 シャッシャッシャッ、シャッ、カリカリ…


 そんな、答えが見つかりそうにない考え事をしながら鉛筆を動かす。

 私は今、いつもの勉強ノートに直線や円をかいている。


部屋の中でひとり、遠慮なくノートを黒くしていく。


「ふむ」


「ちょと、なれてきたでしゅか」


気づけば、くにゃくにゃひょろひょろだった筆跡が思い通りに近くなってきたのを見て思わず顔が緩む。

そう遠くない内に絵が描けるようになるだろう。


そう、私は今、絵の練習をしているのだ。


 あのとき絵を描きたいという意思は伝えることは叶わなかったが、今思うと伝わらなくて良かったような気さえする。

何故なら、私が絵を描きたいなんて言ったら、紙やら筆やら絵の具やら、何から何まで買い集めてきそうな気がしたからだ。

例えが落書き程度の絵を描こうと思っていたとしても。


私が生きている内に、私が望むことを何でもさせようとする節がある家族みんななら、やりかねない。


そんなこんなである意味伝わらなくて良かった様なものなので、伝えることは置いておいて、取り敢えず感覚を取り戻したいと考えたのだ。



「ふぅ」


 一息ついて鉛筆を左手に持ちかえる。

何かというと、私は前世の時から、絵の左右のバランスが取れないときに利き手とは逆の左手にペンを持ち変えて描く、ということをしていた。

いつもしていたわけではなくても、結構便利な技だった。

前世とは違うこの身体に有効かは分からなくても、練習するに越したことはない。


私は絵が描きたいんだ!


「って、あにゃ?」


私は左手に持った鉛筆を持って首をかしげた。

何故か左手に持った鉛筆の安定感が良いのだ。

前世ではコツをつかむのにひどく時間がかかったのに。


まさか、転生チートは左手に!?


とか一瞬考えたが、この恐ろしいほど非力な左手にそんな凄いものあるわけがない。

今だって、鉛筆の重さにぷるぷる震えている。


……安定感と筋力は等しくはないのだ。


どちらかというと、有るべきものがここにある、みたいな。


まさか、まさか


左手で恐る恐る文字を書く。

初めてであるためか、ひどく汚いが違和感はない。


「わたし…“びだりきき”?」


つい、日本語が口から溢れた。

だって、こんな言葉、この世界の言い方を知らないから。

だが、口にして改めて確信した。

私は左利きだ。

前世で右利きだったために勘違いしていたらしい。

と言うことは……私は、


「“りょうきき”ですっ」



藤あげは…生まれ変わったら両利きになりましたよ、お母さん!お父さん!

ああ、そういえば、ことはちゃんは左利きだった。

同じだ、いっしょだ!


「はあっ、はぁっ、、ふぅ」


嬉しすぎて興奮したら苦しくなってきた。

息切れするほどに嬉しい。

少し憧れていた両利きになれたこと。

そしてなにより、前世の家族みんなのことを思い出せたこと。

ことはちゃんと同じ左利きになれたこと。



 しばらくして呼吸が落ち着くと、私は興奮するままに鉛筆を動かし始める。

まず文字を沢山書いて、左手の感覚を身体に覚えさせる。

慣れてきたら、右手の時と同じように直線や円が描けるようにひたすら練習する。


疲れたら右手に持ち変えて、また左手に持ち変えて。


右手、左、右、左………


嬉しさのあまり、無心に書きつづけた。


~ちょこっと振り返り~

忘れっぽいので用語メモしておきます


・モココの花

お母様の誕生日にアルフィがプレゼントした花


・藤あげは

アルフィの前世の名


・ことはちゃん

藤あげはの姉『ことは』

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