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消えたカラアゲの行方  作者: みりん
新しい『いばしょ』
37/51

落としたベル

「ケホッ~っっ!」


 喉が痛すぎて、ボーッとするのも我慢できなくなってきた。


誰かが来るまで待とうと思っていたが、このままだと私の虚弱さからして呼吸困難になるのが目に見えている。

幸い、長い考え事のお陰か少しだけ身体が動かせそうだ。

とは言ってもまだ腕は動きそうにないから、動かせそうな首で頭を動かしてベルを鳴らそうと思う。


頭はとても重いから持ち上げることは出来ないが、浮かせずに横を向くと額が触れそうなところにベルがあった。

これに額を当てて倒すことができれば倒れたときに音が鳴るだろう。


「ふぅ~っ!?うっぇ、ケッホケホッ…んんっ!」


気合いを入れようとしたら嗚咽に邪魔された。


……くやしい


少しイラッとした勢いで鬱憤を晴らすように頭を動かした。

すると、視界の端でベルが傾いて―


――カラン…



やった!



イライラを晴らせるほど頭は動かなかったが、動いたときにベッドがへこんだお陰でベルを倒すことができた。

音が小さく頼りなかったが、お母様なら気付いてくれるだろう。


「っ、んぇうっ!!!?」


ほっとしたのも束の間、一際苦しい嗚咽が込み上げた。


「けほ、ケホケホッ…っひぅっゲホッ…!」


追い討ちをかけるように喉の痛みまで。


急に動いたせいで喉が閉まってしまったらしい。

吃驚して慌てて頭の向きを直すと、その拍子に倒れているベルに頭が当たった。



―カラン、カラ、ン、カラ、カラ……



「ケホッ!?、ゲッホ」


視界の端でベルがベッドの上をコロコロと転がってゆく。



カンカラカラカラ カラン――……



「!!!!」


音が止まった瞬間、ベルがベッドの上から姿を消した。


ああ、落ちてしまう……


手を伸ばすことなんて、出来っこなかった。

ただ目をぎゅっと閉じて、息まで止めてしまうことしかできなかった。



………――カァァーンッ!!!!!!



ベルの音が部屋に響き渡る。

ひとりぼっちの部屋に盛大なエコーがかかったベルの音が。


びっくりしすぎて、咳がピタリと止んだ。

心臓がびっくりしすぎて咳をする余裕もなくなったとも言うが…。


だがこれだけ鳴らせば間違いなくお母様が駆け付けてくれる。

むしろ驚いて飛んでくるかもしれない。

呼吸が危ない私にとってはその方が助かる。

結果オーライ?なのか?





――――……!!!!


来た…



「アルフィっ!!!?」


 ものすごい形相と勢いで扉を開けて飛び込んできたのはお母様だ。


扉を物凄い勢いで開けたのに無音だったのは、お母様がそういう魔術を瞬時に扉に施したからだろう。

今の勢いで音が聞こえていたら、音で驚いてポックリいっていたはずだ。


「アルフィ!どうしたの?何があったの!?」


目に見えて取り乱して駆け寄ってきたお母様は顔色が良くなく、目の下に隈もあった。



また、心配させてしまった


この顔を見るたびに、何度も思う。



血の気の引いた顔で、しかしすっかり手慣れた様子で私の脈や呼吸やら何やらを手早く確認している。


「…おみ、…じゅ…っけほ、ぉみ、ゅ」


ただ、目が覚めたのだと自分の状況を伝えたいが、声を出せるようにするために水が欲しいことすら上手く言えない。


「おみ……み、みず、水ね!分かったわ」


それでも私の掠れた声を聞き取ってくれて、素早く飲み水の用意を始めてくれた。

水差しの水を器に注ぎ、新しい布に染み込ませる。


「大丈夫よ、すぐ用意するわね」


喉の痛みに苦しむ私に大丈夫と言うその声、大好きなお母様の声は私を落ち着かせてくれてそれだけでも呼吸が少し楽になる。

お母様は、魔法使いだ。


「ほら、お水よ」


あっという間に準備してくれて、水を含んだ布を口に持ってきてくれた。


「ぅん、んん……」


冷たい水か少しずつ喉を伝っていく。

それを感じながら確かめるように嚥下する。

凍みるような痛みを伴って喉がこくんとなった。

一度飲み込むと、二度目からは大分楽に嚥下できるようになった。


喉そのものだけでなく身体も水を欲していたらしく、行儀は悪いが吸いつくように水を飲む。

コップや吸い飲み(それらしいものはこの世界にもあった)を使えばいいのにと思うかもしれないが、嚥下が追い付かずそのせいで水が気管に入って死にそうに(冗談でなく)なったことがあったため、この方法で飲むのだ。


水が足りないことに気づくと再び布に水を含ませて飲ませてくれる。


ごくごく、んん、


器に注いだ水の半分くらいを飲むことができた。




「ふぅ、けほっ…ぁ、ありがとございましゅ、おかあさま」


 一段落着いたところで先程のベルの音の説明をした。

お母様は私の話を聞いて初めてベルが床に落ちていることに気づいたようだった。

目尻を下げて困ったように笑ってベルを拾い上げた。


「何もなくて良かったわ。もう、一体何をしたらあのような音が鳴るのか検討もつかなかったのよ。慌ててしまって…と、扉が…歪んでしまったじゃない…」


つい先程まで血の気が引いて真っ青だった顔を今度は真っ赤にしながら、ばつが悪そうに語尾を濁す。

何のことだと思ってお母様の揺れる視線の先を見ると、この寝室から部屋に繋がる扉が取れかけていた。


一体どんな力であけたんだ…


だって心配だったんだもの、とかなんとかぶつぶつ言っているお母様が珍しくて、とっても可愛くて。

何となく頭を撫でたいな、なんて思ったがまだ手は上手く動かない。


私は嬉しかったり寂しかったりして、小さく笑った。


それをどう思ったのだろうか。


「ご、ごめんなさいね、でもちゃんと直すから心配しないで?」


心配だなんてそんな

だってお母様だよ?


遮音だってできてしまうのだから、きっとこの後私が眠っている間にこっそり直したりするのだろう。


「おか、ぁさま、しんぱい、かぇて、ごぇんなしゃい…」


心配かけてごめんなさい

いつもいつも

体調を崩してばかりで、その度に

心配かけてごめんなさい


謝ったって、変わらないけど



小さな声で言うと、お母様の手が私の頭を優しく撫でた。


「どこか苦しかったり、痛かったりしない?何かおかしいと思うところが少しでもあったら言いなさい」


「からだがおもたく、て、うごけないでしゅ。でも、いたい、ところは、ないです」


答えると、じっと見つめられる。


「本当に、それだけかしら?些細なことも、いつもの症状も全部よ」

「う……のどが、い、たいでしゅ。あと、ベルのおと、びっくりして、すこしくるしい、です」


いつものことだし…などと思って言わないと、お母様は鋭く気づく。

付け足された症状を聞くと、いつも私の症状を書き留めているノートに書き加えた。


「いつも言っているでしょう?体調の隠し事だけはダメだと。そのような強がりはちっとも嬉しくないわ。アルフィのためなのよ、分かっているのでしょう?」


怒っている…訳ではないから怖くはないが、真剣な瞳にドキリとする。


「うゆ……ご、ごめんなさい」


堪らず目を泳がすと柔らかな微笑みを浮かべて見つめてきた。


「もう。私たちのためでもあるのよ」

「ぬ?」

「大切な大切なアルフィを守りたい、私たちのためなの。アルフィが教えてくれないとお医者様も治療が出来ないのよ」



――たいせつ…まもりたい…



「ん」


「あら、少し難しかったかしら?でも良かったわ、目が覚めて症状も落ち着いているようだもの。大きな脈の乱れもみられないから、お医者様が来てくださるまでゆっくり待っていられるわね」


 お母様はノートを閉じながらそう言うと、目まで閉じてしまった。




中途半端ですが、長くなるので切ります

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