ありがとう side:ジュラミリア(お母様)
今回は初のお母様サイドです。
文調をどうしたものかと悩んでいたら迷子になりました。
読み返しながら思ったのですが…、お父様(というか男性)が殆ど登場していないという……。
べ、べつにお父様のこと忘れてなんか無いんです。
矛盾が辛くて設定考えるの面倒臭いなんて、おもって、無いんですよ…。
「産まれてきてくれて、ありがとう」
今、私の腕の中で愛しい我が子たちが泣いています。
私をこんなにも幸せにしてくれる娘たちです。
私、ジュラミリア・デドウィには娘が2人います。
長女の名はアイヴォリーラ、次女の名はアルフィリッタと言います。
愛する夫、ディー、いえ、デルロイドとの愛し子です。
アイヴォリーラ…何時もアイリと呼んでいますね、アイリはとっても元気で明るく、勉強熱心な娘です。
幼い頃はやんちゃで泣き虫で手のかかる子でしたが、妹が産まれた途端、すっかり落ち着いてしまいました。
逞しく成長していて嬉しいようで、私たち親の手から離れていくようで寂しくもあります。
アイリにはアルフィリッタ…アルフィが産まれてから、村の子供たちに対して嘘をつかせたり、アルフィの世話であまり手をかけてやれなかったりと随分辛い思いをさせてしまいました。
アルフィの御披露目の日、子供たちが気付いていたと知ったときのアイリのほっとしたような表情を見たときは心が痛みました。
村の子供たちに感謝の気持ちでいっぱいです。
寝込んでいるアルフィに優しく声をかけている姿や、アルフィを護るために強くなりたいと必死に学問に励み、からだ作りまでしている姿を見ると、少し心配になります。
無理をして、苦しみや寂しさを溜め込んではいないかしら。
と。
アイリが我慢を覚えてしまう前に気付いてあげられるように、見守ってやらなければなりませんね。
愛する娘の心が泣いてしまうのを黙って見ていることなど出来ましょうか。
先ほど貰った手紙のなかに、少しでも書かれていて欲しいものです。
けれど叶うなら、アルフィが支えになってくれる日が来ますように。
あの娘はきっと私よりアイリのことをよく知っているでしょうから。
アルフィはアイリとは違い、とても弱い体と色というハンデを抱えて産まれてきました。
アイリのときと比べお腹の膨らみもあまり大きくないまま御産を迎え、倍以上の時間をかけて、けれどスルリと産まれてきたアルフィ。
取り上げられた直後の静寂は何時まで経っても忘れられません。
産声もあげず、くたりとした白い我が子を見たときは全身から血の気が引きました。
幾度か軽く頬を打ち、やっとのことで溢れ出た小さな産声に、皆涙が止まりませんでした。
アルフィは、その体の白さと魔力の量から“魔力のリプルデ”だと分かりました。
“リプルデ”は差別を受け、最悪産まれた直後に殺されてしまう国があるほどですが、幸いなことにアルフィを見たのは私の家族と、信頼できる二人のメイド、フラウリルとモニアーナだけでした。
私たちはアルフィを外の世界から護るために、死産だということにしました。
アイリにとって初めての妹が、村の皆にいないと思われていることかどんなに辛かったか分かりません。
それでも家のなかでは確かにアルフィがいて、皆幸せでした。
外の世界から護るため以外にも死産扱いにした理由があります。
それはアルフィが“魔力のリプルデ”だからです。
その身に合わない量の魔力を宿して産まれてくる“魔力のリプルデ”は、それ故に寿命がとても短いのです。
2年を生きた記録すらない“魔力のリプルデ”。
明日、明後日、いや、今日の次の瞬間にでも命を落としてしまう危険があるのです。
実際、アルフィは産まれてから何度も何度も生死の境をさ迷いました。
そんなアルフィですが、驚かされてばかりです。
幼い子供が何となく言葉の雰囲気を感じ取っていることはアイリの子育てで実感していましたが、一歳で言葉の意味をはっきりと理解していたのですから。
魔力を暴走させかけてしまったのもそのせいだったように思われます。
更に、私たちを巻き込むはずだった魔力を無理矢理制御し、自分の内で暴発させようとしたことには本当に驚きました。
小さな唇から溢れ落ちた真っ赤な血。
まだ理解ができないアイリの不安げな声。
それまでも幾度となく味わってきた死の感覚が何時よりも近くにありました。
最後には言葉を理解していたお陰で暴走を鎮められたようでした。
暴走を鎮めることができたという話など聞いたことがありませんでしたので、きっとアルフィだから出来たことなのでしょう。
抱き締めたときの確かな温もりと鼓動に、私の心がどれ程救われたか、アルフィは知らないでしょうね。
アルフィが早くから言葉を理解していて、幼子特有の我が儘もないのは、体が弱く成長が遅いために脳の発達が早くなっているからだと思っているのですが、どこか殻に閉じ籠っているような、本心を隠しているように感じることがあります。
自分の体に対する不安なのか、色に対する不安なのか、全く別のなにかに対する不安なのか私にはまだ分かりません。
いつか、全てとは言いませんが、この娘の口からこの娘の抱えていることを聞くことが出来る日が来ることを願うばかりです。
それにしても、アルフィはこの箱をどこで見つけたのかしら。
…自分で作ったようにも思うわね。
本当に不思議な娘ですこと。
読んでくださりありがとうございます!!
誤字脱字など気になるところが有りましたら、教えていただけると幸いです。
読み返すと結構見つかるので…お恥ずかしい…。