13
◇
月日は流れ、一年後。
真夜中の教会が華やかに彩られ、多くの人で賑わっていた。
教会の扉が開かれ、そこに一組の男女が現れる。
青年は緊張した面持ちで、隣にいる少女と歩いていた。
少女は純白のウエディングドレスに身を包み、青年と同じく緊張した面持ちだった。しかし、とても幸せそうだった。
青年のブートニア、そして少女の持つブーケにはシロツメグサが使われている。シロツメグサの花言葉は『幸運』そして『約束』。
青年の告白から三年という時間がかかったが、二人はきちんと結ばれることになったのだ。
元人間でヴァンパイアの花婿と、元不老不死の魔女で人間の花嫁。あべこべになってしまったが、二人はこれから普通の人間よりは少しだけ長い時を共に過ごすのだろう――
◇
「夏は……つらい……」
午後六時。ネロはカウンターにぐったりとした様子で突っ伏していた。夏は日が長い。外はまだまだ明るかった。しかし店の開店時間を変えるわけにもいかず、ネロは訴え続ける身体の不調を無視するしかなかった。
「でも……多分、八月になったらもう少し日が延びると思うの。やっぱりお店の時間、変える?」
「いや……大丈夫、頑張る」
「頑張りすぎて私の血を吸われても困るの」
「善処する……」
ネロの返答にクリムはため息をついた。きっと我慢しすぎてまたロドルフォにこっぴどく叱られることになるのだろう。まだまだロドルフォはネロに手を焼くことになりそうだ。
「こんにちは主。生きてましたか」
ノックも何もなしに店内へ入ると、ビアンコは一直線にネロの方へ向かってその頭に手刀を落とした。所謂チョップだ。しかも割と強めだった。
「随分な挨拶だな……それが主に対する態度かよ」
「こんなことをされる主が悪いということで。あ、主、その服脱いでください」
「追い剥ぎ!?」
ピッと指をさすビアンコにネロは思わず身構えた。しかし太陽によって弱らされたネロなど障害でもなんでもないらしく、ビアンコはそのシャツに手をかけた。
「ちょ、ちょ、バカ待てって!」
「脱がされたくなかったら自分で脱いでください」
「いや用件を言えよ! なんでここで半裸にならなきゃいけないんだ!」
「パンツだけ残すのでいいでしょう?」
「鬼か!」
ほぼ同じ顔をした二人のやり取りにクリムは思わず笑った。同時に、ここでネロに半裸になられるのは困るな、と、そうなったときにどう対処するかを冷静に考えてもいた。
「ビアンコちゃんの優しさってやつかねぇ」
空中であぐらをかきながら、クリムの後ろでブランテがニヤニヤと笑う。ブランテはビアンコが何をしようとしているのか分かったようだ。
「でも服ならクローゼット漁ればいいと思うんだけどな」
「それだと主への嫌がらせになりません」
「嫌な奴!」
ネロが叫んだ。やはりビアンコに負けたらしく、上半身は裸だった。主としての面目も何もない。
ネロのシャツを剥ぎ取ったビアンコが、次にズボンに手をかける。ビアンコがベルトをはずそうとし、ネロが抵抗し、そして二人はビアンコがネロを押し倒す形で床に倒れた。その瞬間に店の扉が開く。
「ギャーッ!!」
勢いよく扉を開いたナディアは、勢いよく顔を真っ赤にして女の子らしからぬ声で叫んだ。




