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infiorarsi 2  作者: 影都 千虎
復活
40/54

01

 ビアンコが消えた数日後。ロレーナがなんとか落ち着きを取り戻したところで、ロレーナ、スメールチ、ナディアの三人はロドルフォの店に集まった。目的は勿論、ビアンコの主たる人物をどう探し出すか話し合うため。

「うーん……リコリスを探せって言われてもねー」

 オレンジジュースを飲みながらナディアは言った。やはり花屋だからか、真っ先に花に反応してしまうらしい。

「そもそもの話で悪いんだけどさ」そんなナディアにスメールチが訊ねた。「リコリスってどんな花なんだい?」

「そうだなー、彼岸花って言ったら分かる?」

「彼岸花? あの秋に咲いてる赤いやつかい?」

「そうそう。あれもリコリスなんだよ。他にも曼珠沙華、死人花、地獄花、幽霊花、狐花、捨子花、剃刀花って名前がついてるかなー。千種類あるとかそんな話だよ。あたしが知ってるのはここまでかな。……不吉な名前ばっかってところが、ちょっと悲しいけど、本当は天上の花って意味でめでたい兆しなんだって。毒性があるからそんなイメージなのかな?」

 まあ、あたしも少し苦手なんだけどね。とナディアは苦笑してみせた。彼岸花が苦手な人間は少なくない。あの花らしくない姿が不気味だとか、咲いている場所が不吉だとかその理由は様々だ。

 ナディアの説明を聴いて、ふと思うことがあったのかロレーナが唐突に口を開いた。

「あの、リコリスの花言葉ってぇ、『悲しい思い出』じゃありませんかー?」

 その問いにナディアは笑顔で肯定する。「よく知ってるね」とも言った。

 そんなナディアとは対照的に、ロレーナの表情は明るいものではなかった。うつむいて、どこか悲しげな顔で「やっぱり」と呟く。勿論、スメールチはそれを聞き逃さなかった。

「やっぱりって、どうかしたのかい?」

「……二年前、クリムちゃんにお願いされてぇ、国中に飛ばした魔術がぁ、『リコリス』だったんですー……」

 ぴくりとスメールチの眉が動いた。ナディアは相変わらずなんの話か分からなさそうな顔をしている。そんな二人に切り出すようにロレーナは困ったような曖昧な笑みを浮かべつつ言うのだった。

「……あのぅ、私ビアンコちゃんの話を聞いてからぁ、ずっとおバカなことを考えているんですー」

「奇遇だね、僕もだよ」

 意外なことにスメールチが即答で賛同した。そこに話を聞いていたらしいロドルフォも「俺もだ」なんて言い出す。

「確認のために訊くけど、その答えは『クリム・ブルジェオン』であってるかな?」

 スメールチの問いに二人は無言で頷いた。

「やっぱりね」どこか楽しむようにスメールチは言う。「『リコリス』とか『魔物』とか、あとは『スフォリアテッレ』とか、どうもお姉さんを意識してるような話なんだよね」

「私はぁ、クリムちゃんが主なのかなって少しだけぇ思ってしまいましたー……でも、クリムちゃんは」

「そこなんだよね」

 ロレーナの言葉をスメールチは遮った。そしてそのまま遠慮もなしに続ける。

「そもそも、僕たちって本当にお姉さんが死んだのかどうか知らないんだよね。本当に、お姉さんは死んだのかな? あの人は、不死の魔女だったんだよ?」

「バカ言え」スメールチの言葉をロドルフォは鼻で笑った。「だったら、ネロが引きこもる理由がわかんねえな。それに、お嬢ちゃんが二年も出てこねえ理由もな」

「少なくとも僕は、お兄さんの口からお姉さんが死んだって話、聞いてないんだよね。いつの間にかお墓が建ってて知った感じだったんだけど」

「……その墓を建てたのがネロなんだよ」

 どこか遠い目をしてロドルフォは言った。あのときのことを思い出しているのだろう。あのとき、ネロはどんな気持ちだったのだろうか。どんな気持ちで、愛する人が自分の身代わりに死んだという現実を受け入れ、墓を建てたのだろうか。その思いは計り知れない。愛する人を自分の知らない間に、自分とは関係のないところで亡くしてしまったロドルフォには余計に。

「もしかしたらお兄さんの勘違いなのかもしれないよ? 自分の代わりにお姉さんが死んだって思ったけど、実はお姉さんはお兄さんの知らないところでひっそりと、まだ生きていたとかさ。死んだお姉さんを見ていないんだからあり得ない話でもないよね?」

「……どうして」ロレーナは悲しそうに訊ねた。「どうして、そんなにクリムちゃんが生きてるってことを? そうだったらよかったのにって、みんな思ってて……分かっていて、こうなっているんじゃないんですか?」

「認めたくないだけだよ」

 スメールチは自嘲するような笑みを浮かべて言うのだった。

「不老不死の魔女が死ぬなんて、信じられる話じゃないからね」

 どうしてこう、スメールチの笑みというものは見たものを固まらせるのだろうか。あまりにも珍しすぎるからだろうか。それとも、その笑みが似合わないからだろうか。そんなことなど露知らず、本人であるスメールチは「話を進めるよ」とマイペースに話を続けるのだった。

「お姉さんがどうとかいう話は置いておくとして、ビアンコさんの主が吸血コウモリの黒幕って仮説はどうかな?」

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