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最後の願い
そのまま私が目覚めることはなかった。
チリルもヴィーダも気付いていたのかもしれない。
いつものように準備をお願いしても、その場から動こうとしなかった。
ずっと傍を離れなかった。
やっぱり泣いていたんじゃないかと今は思う。
第二の人生が幸せだったかと聞かれれば幸せだと答える。
不幸せだったかと聞かれればそうだったかもしれないと答える。
けれど、それが私の生きた道なのだ。
*
そして、最後の願いが叶えられる。
『私が死んだときに身付きが生まれないようにしてください』
私のエゴかもしれない。
してはいけない願いだったのかもしれない。
本当なら生まれてくる魂を狩り取るような願いなのかもしれない。
けれど、私はこれを選んだ。
どうか、どうか……悲しい思いをする人魚が生まれてきませんように。
FIN




