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人魚の生き方  作者: 義昭
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卵探し

「やってきました、四季市場」


『手前が海の幸、奥が陸の幸だよ。それぞれの食べ物の専門店があったり、いろんな種類を置いてる店もあるけど、どうする?』


「とりあえず、卵専門店ってあるの?」


『もちろん』

にこりと笑って手を引いてくれる。頼もしいな。

行き交う人たちは活気に溢れていて常に笑顔だ。

食の村と商いの村を思い出すなあ。


歩いているといろいろな所から声がかかる。


「安くしとくよ!」

「いっぱいおまけするぞ!」

「市場一美味しいわよ!」


所狭しに並べられる食材に思わず歩みを緩めてしまう。


『ルーサ!まだまだあるんだからここで止まってたら卵の店に着けないよ!』

頬をぷくっと膨らませて注意される。


「ごめんごめん」

歩を戻しながら目線はいろいろな店を見つめていく。


「ここの市場はクリスタルじゃないんだね」

屋台のようなお店ばかりで、四季の街のように水晶で作られているお店はない。


『街の上にある虹があるでしょ?あれのお陰であんなに綺麗になるのよ。

他の場所でクリスタルを使ってもあんなに綺麗に透明にならないから、他の街ではあまり使ってないかも。』

それに建築費や技術料も高いしね、といってさらりと笑う。


「虹はあの場所に街が出来る前からあったの?」


『ううん、街を作ってから虹を架けたって聞いたわ。でも、何百年も昔のことだから、分からない』

そんなに歴史のある街なのか……。

どこもぴかぴかで綺麗だから歴史なんて感じさせなかったなあ。


『着いたよ』

声をかけられて前を見ると大小、色とりどりの卵が並んでいる。


「いらっしゃい、どんな卵でも置いてる自信があるよ!見ていってちょうだい!」


「この卵ってそれぞれ味が違うんですか?」


「もちろんだよ、ストニアルトの卵は甘いだろ?トステリッテはちょっと塩辛い」

ゼリーのようなストニアルトが甘いのはなんだか納得。

巻貝の卵は塩辛いのか……。


「ストニアルトの卵はお菓子作りに人気だよ!」


マヨネーズだけじゃなくて、卵料理の幅が広がりそうだな。


次々と説明してくれる赤の斑模様が特徴的なたこのおじさん。

吸盤に卵を張り付けては持ち上げてそれが何かを教えてくれる。


マヨネーズには何があるのかなあ……。


「あの、これ味見してもらえませんか?」

何も考えずポシェットから瓶に入れたマヨネーズを取り出す。

おじさんはビクリと方を跳ね上げて上ずった声で言う。

「お、おおおぉぉおお前、ゴゴゴゴゴリード持ち歩いてんのか」


あ、しまった、と思った時には時すでに遅し。

一瞬で私を中心に円が出来る。

あちらこちらで叫び声があがる。


「いやああああああ!」

「何考えてんだ、市場にゴゴリードを持ってくるなんて!」

「え?え?え?ゴゴリード!?どこどこどこどこどこおおおおお」


やばいやばい。


「違います!これゴゴリードじゃないんです!食べ物なんです!卵から作ってるんです!!」

必死に弁解するも混乱で聞き入れてもらえない。

しまったな、容易に出すべきではなかった。

大嫌いな虫だということを忘れてた……何のために市場に来たんだよ、私。


混乱は収まらない。

「ど、ど、どどうしよう」


『静まりなさい』


シンッ――


一瞬にして静かになる。


『私は海の妖精チリル、ここにあるのはゴゴリードじゃないわ。』

いつものふわふわとしたチリルではない。

きりりとした顔ではっきりと言う。


「でも、それは明らかに……色とか……」

ゴゴリードとすら言いたくないのか、もごもごと人面魚が言う。


『これはマヨネーズという食べ物です』

そう言って瓶の蓋を開けて中身を一掬いすると口に入れる。


ヒィイィィィイと声にならない叫び声が至るところから聞こえる。

中には吐いている人もいる。

ああ、これは商品に出来ないかもしれない……。


『私たちは、これをお店で出そうとしました。ですが、今の皆さんのようにゴゴリードと勘違いされて食べてもらえない。

これは卵から出来ているれっきとした食べ物なのです。

だから、皆様に受け入れてもらえるように工夫したくてここにきたのです』


とにかく今の内にポシェットにマヨネーズを戻す。

それからはチリルと一緒に弁明する。


なんとか食べ物だと言うのは信じてもらえたようだ。

「妖精がそういうのなら……」と言って理解してくれた人が多い。

一人だったらどうなっていたのか恐ろしい……。


ようやく人だかりが消えて卵のおじさんに向き合う。


「ということで、卵を探しているんですけど」


「お、おう……」


「味的にはちょっと酸味があって……う~ん、食べてもらえると早いんですけど」

さっきあんなに言ったから大丈夫かな、とちらりとおじさんを見ると手と顔をぶんぶんと横に振って拒否をする。


「いや、な、食べ物っていうのは分かったんだけどよ。どうしても、な?わかるだろ?その色とかがゴゴリードを連想するんだよ、ちょっと食うのは勘弁してくれ、な?な?サービスするしよ!」

仕方ないよね……。

真っ赤な顔が真っ青になるくらい拒否してるんだから、強要は出来ない……。

「とりあえず、鳥の卵よりも濃厚で色が黄色じゃないものってある?」


「あ、あるぜ」


幾つかを取って前に出してくれる。

どれも手のひらで収まるサイズだ。とりあえずそれを購入する。


それから鳥の卵に限りなく近いもの、ほのかに甘いもの、しょっぱいもの、すっぱいもの、苦いもの、味のしないもの、多くの卵を購入する。


「毎度ありー!」

慎重に卵を包んで渡してくれる。


「おっと、そうだ!サービスしなくちゃな」


「あ、いいですよ。私がアレに似たものを出したのが悪いので……」


「いやいや、こんなにたくさん買ってくれたんだ。少しくらいサービスさせてくれや!」

そう言って卵を出してきた。


殻が透明で中身が透けて見える。

中には小さな黄身が3つ、一つは金色、一つは白色、一つは朱色。

卵の中でくるくると回っている。


「綺麗……」


「だろ?ウィーウェの卵だ」


「ウィーウェ……?」

初めて聞く名前だ。


「最近発見された生き物だよ。生体はなんにもわかっちゃいない謎の生き物。見た目が見る人によって変わるんだ、あるやつは馬のようだと言い、ある奴は熊のようだという。不思議な生き物だ。」

おじさんがにやりと笑った気がした。

「けれどもうめえぞ、こいつは。本体もさることながら卵もうめえんだ。これから扱っていくからよ。贔屓してくれよな」


そういって見送ってくれた。

帰ってちょっといろいろ試してみよう。

マヨネーズ以外にも卵料理のレパートリーを模索しよう。


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