お客からの拒絶
「はあ……」
お昼のピークを過ぎてひと段落をつく。
売り上げは上々だ。
けれどため息をつく理由は一つ。
『皆残してるね……』
マヨネーズのかかったサラダに誰も手をつけなかったのだ。
というよりも、全体的に料理を残している人も多い。
「なんでかなあ……」
全く手をつけられていない。
『あのね……多分なんだけど、このまよねーずの見た目が問題なのかも』
「見た目?」
『うん、私は自分で作ったからそんなに抵抗はなかったんだけど、これゴゴリードにそっくりなんだ』
「ごごりーど?ってなに?」
『ゴゴリードって言うのは、海の底にいて、この少し黄色がかった白色をした虫なの。
それにそっくりで……それはいつも何かの死骸を食べてるの。
このまよねーずみたいな見た目で海の底を這って移動してるんだけどね……。
害虫みたいなものかな。たいていの人は大嫌いな虫だよ』
ええ……そんなものと似てるなんて……そりゃ食べないよなあ。
私もゴキブリ見ながらご飯食べるなんて無理だもん。
ああ、どうしよう……。
「でも、チリル見た目そっくりだったのに、作っているだけで食べれたの?」
『う~ん、だって卵から出来てるのも分かってたし、妖精は嫌いな物がないんだよ。
特に海の生き物には皆平等にって感じだから……まさかここまで拒絶されるとは思わなかったの』
なるほどね……。
「じゃあ、マヨネーズは駄目……かあ……」
『食べてもらえればわかるんだけどね……』
マヨ卵とかなら問題はなさそうだな。
見た目に問題があるみたいだから。
それはモーニングで出してもいいかな。
でもなあ……う~ん。
「何か良い方法ない?」
『形を変えてみれば?普通のドレッシングでマヨネーズの味とか!』
「そんな技術、私にないよ……」
出来るのかもしれないけど、あの柔らかさがマヨネーズの良さなのだ。
他のものにつけても垂れてこない、しっかりと形をもったものがいいのだ。
『じゃあ、色を変えてみるとか……』
「色って言ってもねえ……あの黄色いのは黄身の色だし……」
『え?だって他の色の卵もあるじゃない。鳥の卵は黄色だけど、スピリクの卵は緑だし、ルットラの卵はピンクでしょ?ストニアルトの卵は青色だし、トステリットの卵は紫じゃない』
前に異世界の食材を勉強していた時に出てきた生き物たちの名前だ。
スピリクは蛇に小さな足が6本生えている。普通に焼いて食べるのがポピュラー。
ルットラは鶏の大きさだけど羽を広げると5メートルにも大きくなる。これは揚げて食べたりステーキにするのが人気。
ストニアルトは半透明のゼリーのようで決まった形はないけれどだからこそ好きな形になれる生き物。生で食べるのが人気。
トステリットは砂浜の中に住んでいる巻貝のような生き物。刺身がお薦め。
どれも卵で生まれてくるような生き物じゃないと思ってたからそんなところ読んでなかったんだけど……。
「卵で生まれてくるの……?」
『何言ってるの?卵で生まれてこないのは人間くらいじゃない』
この世界は地球と根本的に違うということを10年以上ここで生きてきて初めて知った。
「え?牛も、豚も?」
『?うん、そうだけど……?』
なんだかなあ……まあ、私が卵から生まれてきたくらいだもんね。
そういうのもありだよね。
とにかく、まずは作ってみるしかないよね。
四季の街から少しだけ移動した場所にある市場に行ってみよう。
卵によって味が代わるかもしれないし……。
ちなみに食紅などでの着色は行いません。




