私とクリオネ
とりあえず、中心部にある質屋さんへと足を運ぶ。
透明の水晶で作られた洋風の小さなお店。
戸を引いて中へと入る。
「うわあ……」
思わず感嘆の声が上がってしまう。
見た目は小さなお店だったのに、中は広々とした作りになっていた。
左右の棚にはいろいろなものが置かれている。
水中に建つ水晶は光の模様で綺麗だったけど、中に入れば空気があるから
煌びやかでとても綺麗だ。
奥のカウンターには「公式質屋優良店」とマークが付いている。
「やあ、買い取りだね」
奥から出てきたのはクリオネ。よく流氷の天使とか氷の妖精と呼ばれているんだけど……。
なんか大きい、30センチ程ある身体。
クリオネは……小さいから可愛いんだろうな……。
左右に張った翼状の足を羽ばたくようにして水中をぷかぷかと浮いている。
この翼足が天使の羽に見えるんだろうな。
「もしもし?買い取りだろう?」
不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「あ、そうです」
そういえば、ポシェットしか持ってないのにどうして買い取りなんて分かったの?
「じゃあ、買い取り品をこちらのテーブルに出してくれるかな?」
「はい」
端から順番に置いて行く。
出している間にクリオネが自己紹介をしてくれた。
「僕は中央の質屋、マルネルトよろしくね。
お店に入ってすぐに君が買い取りって分かったんだよ、なんでかわかる?」
くすくすと笑いながら話しかけてくる。
さっきの役所の対応でちょっとイライラしてるから静かにしててほしいのになあ……。
「ルーサと言います。なんで分かったかって……さあ……?」
「んふんふ、最初はみんなビックリするんだよ。でも買い取りより何かを買おうと思ってくる人の方がビックリするんだ」
楽しそうな声を出す。
「なんでかって言うとね、店に入った時点でその人の買うものって決まってるんだ。
それで、お客さんと一番相性がいいものが棚から出て前に来るんだよ」
押し売りみたい。
「んふふ。もちろん、買う、買わないは自由だけどね。でもこの店にある物の中、さらにお客が求めている物の中で一番ぴったりなものがくるから。ほとんど全員買っちゃうよ!」
「冷やかしできたり、欲しいものがなかったらどうするの?」
「うんうん、ふふふ、適当に一番相性がいいものが飛んでくるよ。
だからそんな気無くても買っちゃう。たくさんあるんだもの、この中から一つくらい欲しいものなんて見つかるさ」
くるくるとてテーブルの前を踊る。
「……っと、全部出し終えた?わあ、いっぱいだね」
5メートルはある大きなテーブルに山盛りになった。
本当はまだあるんだけど、とりあえずはこれでいいかな。
10年も交換なんか続けてたらこれくらい造作ないよね。
「う~ん、ちょっと時間がかかるかな~?」
物々言いながら品物をものすごいスピードで見ていく。
わあお!とかこれは!とかすごいすごい!なんて声も聞こえれば
なんだこれ?う~ん……、どうかな?なんて声も聞こえる。
「はい、いいよ。」
「え?もう?」
「大丈夫、しっかり視たよ。」
「はあ……」
不安だ。
「まあ、ほとんどはがらくただよね。このピカピカ光る珠とか、ただの玩具だよ
まあ、薬はどんな薬でも需要があるからね。人間とかに売る人もいるし」
そう言ってマルネルトはにやりと笑う。
苦笑するしかない。
「ただ、価値があるものもあるよ」
え……。
「説明する?」
「ええ、お願いします。」
これがお宝だよ、と言って出してきたのは3つの品物。
一つは、王冠。
一つは、杖。
一つは、ボールペン。
これがお宝?
王冠と杖は分かるけどボールペンってあたしがメモするときに出してもらった私物だし。
間違って出しちゃったのかな?




