私とお金
料理を作るなら何にしよう。
冬の街なら身体が温まるような料理、夏の街なら涼しくなるような料理、秋の街ならぽかぽかしてくるような料理、春の街ならうきうきしてくるような料理。
定番料理?変わった料理?オリジナル料理?定食屋?屋台?居酒屋?
お店を開くと言ってもいろいろな形もあるしお金もかかる。
たまに手に入った珍しい物が欲しいって言ってくる人はいるけれど、基本物々交換だし……。
どうしてもって言う時だけお金でもらってるから、そんなにお金がないんだよね。
質屋さんってないのかな……。
「すみません、質屋さんってないんですか?」
通りすがりの魚に聞く。
「ああ、すぐそこにあるよ。各街にもあるけど、街の特色で買値が代わるからね。中央の質屋は平均金額で買い取ってくれるよ。
少しでも高く売りたいなら面倒くさくっても1件1件回ることだね。」
「ありがとう、助かりました。」
なんの、なんの、と言いながら尾をゆらゆらさせて通り過ぎていった。
冬なら温まるものを、夏なら涼しいものを……って感じか。
でも、よくわからないものが多いしなあ。
近くの宿屋に入り持っているものを整理する。
小さなポシェットから出す。
荷物が増えてきたあたりから、大量に物を収納できるカバンが欲しいとお願いしたのだ。
手のひらサイズのポシェットには把握しきれていないものまでたくさん出てきた。
なんか丸くて時折ピカピカと光る5センチの珠。
写すとその人の本性が見える鏡。
身体に塗ると三日三晩悶え苦しむほどに痒くなる薬。
金ぴかのSの形をした変なオブジェ、先の方を擦るとぷくぷくと泡を出す。
飲むと激痛で鱗が剥がれてから違う色の鱗が出てくる薬。色はランダム。
魔法を使えるようになる薬。
人魚になる薬。
魚になる薬。
身体が透明になって内臓だけ丸見えになる薬。
などなど……。
「もっと選別して交換するべきだったかなあ……」
溜息しか出ない。
とりあえず、悩んでいても仕方がないから全て質屋に持っていこう。
……の前にお店を出す資金がどれほどか確認してからだな。
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「えええええええええええ!!!そんなにするの!!?」
メタリックカラーのマンボウの前で思わず叫んでしまった。
「はい、まずは『物件取得費』ルーサ様はこちらにこられたばかりなので土地をお持ちじゃないですよね?
ならば購入と言う形になります。
それから、『保証金・敷金』こちらは使ってから何か破損があったりなど、の修復に使用します。
『仲介手数料』不動産、またはこちらで紹介を受けた方は役所に支払って頂きます。
『前家賃』こちらは交渉次第ですが、前払いなので契約した日からの分を日割りで計算します。
あとは『造作譲渡料』こちらは、前のお店が有名店だとそこに建てる際にお金が高くかかります。
そのままお客様が付いてくる、などの良い状態で渡されればスムーズにお客様がつくこともありますからね。
これは場所によって違いますね。ただ、四季の街は人気のある街ですからね、それだけでも価値がつきます。
あとは内装関係や設計、デザイン料など、でしょうか。
大体合わせて、1000万~1500万でしょうか?余裕を持って2000万程あれば大丈夫かと思います、お持ちですか?」
にやにやしながらこちらを見る。
若いと思って馬鹿にしたような顔でイライラする。
「ま、また来ます……」
言いたいことをぐっとこらえる。お金がないのは事実だもん……。
とにかく質屋へと向かおう。
ふらふらになりながらも役所を後にした。




