表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚の生き方  作者: 義昭
45/81

私と街

それから幾日か経ち、オホリクス海へと到着する。

近づくにつれて微かに甘い、あたたかな優しい波が身体を包む。


「ここが……オホリクス海」


全てが水晶で作られているのかと思うほど透明で綺麗な建物たち。

水面から入る光でキラキラと輝いている。

街の上には水の中なのに大きな虹のアーチが掛かっている。


私の住んでいた街は、村の集合体。

ここはまさに街と……いや都と呼んでいいくらいだ。


中に入るため門へと近づく。

塀なんて無いから、本当に門だけ、なんだけど。

東西南北それぞれに一つずつ門があって、それ以外から入ろうとしても中には入れない。

だから、必ず門を通らなければいけないようだ。


大きくアーチ形に作られた門。綺麗に切り取られた薄いピンクの水晶を綺麗に積み重ねて作られている。

余計な装飾はない、シンプルで綺麗な門。

水面が揺れるたびに、光のまだら模様が映ってとても神秘的。集光模様(コースティクス)って言うんだっけ。

それほどに綺麗な海。


「こんにちは」


「ようこそ、オホリクス海、四季の街へ」


「どちらから?」


「トルジア村からです。」


「ちょっと待ってくれよ、確か、あっちの方の村だったよな……」

門番が地図のようなものを取りだしてチェックする。


「隣にラトト村があるかい?」


「ええ、あります」


「そうかそうか、よく来てくれたね。ここに記入をしておくれ。」


名前にルーサと記入する。

特記事項には身付き、特技は無限の願い、この街で行うこと、商い。


紙にペンで記入を終える。


「ああ、ありがとう。改めて、オホリクス海、四季の街へようこそ!こちらは西の門です。」


「ありがとう。」

敬礼をする門番にお礼を良い、街へと入る。


四季の街。

南は夏、北は冬、西は春で東は秋。一つに4つの季節が入っている不思議な街。


私が入ったのは西の門、つまり春の街。

心地よい暖かな水にパステルカラー作られた水晶の街。気持ちがぽかぽかとしてきて、まるで日向ぼっこをしている感覚になる。

それにしても、建物の中は見えないんだなあ。こんなに透明なのにね。


まずは街を一巡り。


次は北、冬の街。

モノクロで統一された街。あ、アクセントで青色も使われているみたい。

とても寒いけれど、どこからか降ってくる雪の結晶が真っ黒な水晶に映えてとても綺麗。

雪じゃなくて、本当に結晶。六角形や八角形の様々な形をした雪の結晶。

聞くと、上にある虹から出ているらしい。5ミリ程の白や青の雪が一年の3/4は振り続けている街。

積もった雪を踏むとサクサクと心地よい音がする。


次は東、秋の街。

黄色や黄緑、朱色で作られた街。少し肌寒いけれどどことなく甘酸っぱい果実の匂いが漂う街。

さすがに木から落ち葉が……なんてものはないけれど、雰囲気が、ああ秋だねって思える街並み。


次は南、夏の街。

くっきりとしたオレンジ、赤などカラフルな街。

夏の街と言うだけあって暑い。常夏だ。

どの街よりも活気があって元気がもらえる気がする。

漂うのは夏の香り。


最後は街の中心部。

色の付いていない透明の塔が建てられている。

ここでどの街に住むかを決めたり、自分の仕事を報告したり……役所みたいなもの。


一通りの街は巡ってみたけれど、どうしようかな?

食べ物や服なんかはやっぱり空気があるお店だから露天はなかったし、露天ならアクセサリーなんかが主流だった。

少し覗いて食べ物を食べたけど、どの街も正直ぱっとしないみたい。

素材そのものを味わう感じ。

街の建築でプロレベルの人たちは集まるけれど、その代わりに食が発展していないって感じかな?


私たちの街は、食べ物とかはとても美味しかったけれど、街は村の集合体だから家と家をくっつけたような歪な作りだったし。

あっちが発展すればこっちが駄目、こっちが発展すればあっちが駄目、人が偏りすぎてるんだろうな。

やっぱり食を極めたい人は美味しい料理が出るところへ、建築を極めたい人はそれが栄えているところへ行きたくなるものだもんね。


なら、私がここで美味しい料理を作ってあげよう。

神様に全部出してもらうのは簡単だけど……それじゃ駄目だよね。

物を作る、完成した達成感と褒められた時の快感はやっぱり自分で作るから得られるものだから。


そうと決まればまずはどの街に作るか考えなくちゃね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ