★真の対価は
次の日はのんびりしていられなかった。
Aカップのお姉さんが血眼になって私を探していると聞いたからだ。
昨日のお爺さんがどうなったかこっそりと様子を見に行こうとしたら
今日の昼過ぎに出かけてしまったそうだ。
孫もお爺さんも元気になったからよかったけど、どこへ行ったのかな?
何か手助け出来ることがあればしてあげたかったのに。
一日しか動けないからあまり遠くにはいけないし、かといって動き回るとお姉さんに見つかってしまう。
今日は一日大人しくしているしかないな。
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月が頂点に登ってくる。
両足は徐々にくっついて行き、尾が出来上がっていく。
次の満月まで二本の脚とはお別れだ。
ワンピースを袋に入れて出発準備。
「おぉぉ~い!嬢ちゃ~ん!!」
遠くの方から私を呼ぶ声がする。
この声は……細工師だ。
周りにAカップ姉さんがいないか、耳を澄ませて確認する。
今頃仕事中かな?自慢の胸が無くなってどうなったのか気になる。
「こんばんは、職人さん。」
「お、おお!まだ出ていってなかったか!よかったよかった!」
「何か御用ですか?」
「おう!嬢ちゃんのお陰で無事に仕事を続けられることができそうなんだ!」
嬉しそうな笑顔で話してくれる。
「それは良かったです」
「それでだな……」
ゴソゴソと腰に付けたカバンのようなものからキラキラ光るものを取りだして差し出してくれる。
「これだ、受け取ってくれ」
これは……キラキラ光る蝶のネックレス。
私が無くした蝶のネックレス。
銀で綺麗に描かれた線は翅の模様がハートになっている。
そのハートの部分に細いチェーンが通されていた。
「これは……」
「お嬢ちゃん、昨日桟橋で思い出爺さんにあっただろ?」
「思い出爺さん……?あ、記憶を形に出来るって人?」
「そうだ。爺さんはの名前はフィリッフ、みんな思い出爺さんって呼んでるけどな。
俺、今日……もう昨日か、朝方に爺さんの家に行ったんだ。どうしても嬢ちゃんに礼がしたくて。」
このネックレス……。
「桟橋で爺さんと嬢ちゃんが話してるのを見たって人が大勢いたからな、何かいいアイディアがあるかと思ってさ」
私が……。
「そしたら、嬢ちゃんの思い出を知ってるっていうじゃねえか!人の思い出を覗くなんて悪いとは思ったんだが、何かヒントがないかと思ってよ……すまねえ」
前世の時……。
「それで、いつでも首についてたそれを再現したんだよ」
プレゼントされたネックレス。
「細かい部分はなかなか大変だったけどな!」
ガハハと笑う細工師。
この街でたくさんの思い出を手に入れた。
写真とネックレス。
「指輪とかもおんなじの作れるぜ?」
「いいえ、大丈夫。この2つ……ピアスもいれて3つ、この3つの思い出があれば生きていけます。」
「そうか、もっと前を見なきゃいけねえ!
世界は広いぜ!視野を広げると楽しくなる。笑え笑え!嬢ちゃんは人形じゃねえ!」
「はい!」
「良い笑顔だ!また来てくれよ!」
「ええ、必ず」
出発だ。
桟橋では細工師が見てくれていた。
深く潜って一気に上昇しドルフィンジャンプ。
「おおおおおおおおおお」
細工師が唸る声が聞こえる。
ありがとう。
届かない謝辞、それでも呟く。何度も何度も。
私は幽霊。海を漂う幽霊。
生きる希望を見つけた幽霊。
更新した時間に閲覧して頂いている人の人数が、
お気に入り登録をしている人以上多いのはどうしてでしょうか……?(笑)
どうやって更新したかを知っているのか謎です。
分かる人教えてください。




