私と真実
「みつきだ。」
みつき?
誰の声?
「ほんとだ、珍しいみつきだ。」
「間違いないない、みつきだ。」
すごく近くから聞こえる。
「聞こえてる?」
私の前を魚たちがひらひら泳ぎながら言っている?
コポコポポポ……。
声を出そうとして喋れないことを思い出す。
「いいよ、話せないもんね。」
「うん、いいよいいよ。」
「大体の雰囲気でわかるわかる。」
数匹がいっぺんに話しだした。
というか、みつきって……?
「身付きがわからないみたい。」
「ほんとだ、でも仕方ないないね。」
三月?発音が違うなあ……。
「身に付いていると書いて身付きだよ。」
身付き……か……身って私?体?
何がついているのだろうか……。
「身付きはね、前世の記憶を持って生まれてきた子のことなんだよねー。」
「ねー。」
ねー、といいながらクルクルと私の前を泳ぐ。
「身付きの特徴は耳なの、前世と同じ耳を持ってくるの。」
そう言われて耳に触れると、確かに私の耳だ。
固い物に触れて驚いた。
それは、彼氏から一年記念で貰った鳥籠のピアスがついていたから。
小さな鳥籠の中には、私の誕生石のアクアマリンが入っていて、
とてもお気に入りだったのだ。
そしてそれがあるということは、ここにいる私は、紛れもない私なのだ。
二度と家族も彼氏も友人にも会えないのだろう。
だって私は死んだのだ。
そして、目の前の魚たちは私が生まれてきたとハッキリ言ったのだから。
ぽろぽろと涙が出た。
もう二度と会うことのできない人たちを想って。
嗚咽をこらえて泣いた。
魚たちは私を、ただ静かに見ていた。
会いたい。
みんなに……思い出すほど涙が出る。
涙は固まって真珠になっていく。
気づけば殻の中で黄色の魚たちと、
不揃いの真珠がしばらく私の周りを、ゆるりゆるりと回っていた。
コツコツと殻に真珠がぶつかる。