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人魚の生き方  作者: 義昭
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無関心と私

1ヶ月がたった。歌の方は好評だ。ローサさんが卵を預けて少しするとそわそわしだした。

楽しみでしかたないのだろう。

2か月がたった。毎日卵に会いに行く。

ルンダさんも結構な頻度で会いに行く。食事の準備をしてバイトに出かける毎日。

3ヶ月がたった。新しい子供の名前を考えている。

バイトから帰ると待っていた2人は先に寝ていることが増えた。

朝食の準備をして早々に寝る習慣が付く。

そんな生活が続いた。


8ヶ月がたった。

私が生まれてから1年と5ヶ月。

友達の顔を思い出せなくなった。


9ヶ月たった。

彼氏の顔を思い出せなくなった。


1年たった。

両親の声を忘れた。


日に日に掠れていく思い出に縋って泣いた。

忘れたくないと何度も思い返して、本当にそんな顔であっただろうか?

そんな声であっただろうか?

それすらも確かめる術がなく、ただただ泣いた。


神様はどうやら前世に私と関わりがあった思い出は出してくれないようだ。

写真でもいい、録音の声でもいい、卒業アルバムでも、なんでもいいのに。


1年と3ヶ月たった。

ローサさんとの会話はほぼなくなった。

あと少しで生まれるだろうから、と言って部屋を増築していた。

私はバイトと家の往復。


1年半がたった。

生まれてきた。愛しい愛しい妹。

待ち焦がれてようやく生まれた、ローサさんとルンダさんの本当の娘。

耳が人魚の耳でホッとした。


名前はサルンサ。


サルンサはローサさんの髪を受け継ぎ、尾はルンダさんの色を受け継ぎ。

とても可愛らしい容姿だった。


テトテトと、私の後ろをついてくるサルンサ。

バイトに行くため準備をしていると後ろから覗きこんでくる。

ふと、後ろを見るとローサさんが手を引いて自分の部屋へと連れて行っている光景を何度見たことか。

ああ、私に求められなかったものをサルンサに求めているんだな……なんだか、少し寂しかった。

けれども、ローサさんとルンダさんが本当の家族を持ち幸せになっていることが嬉しかったっけ。


スナーシャさんは相変わらず私に接してくれた。

それすらも少し煩わしくて……サルンサが生まれて数ヶ月してから辞めてしまったんだ。

というよりも、長期のお休みをくれた。

いつ戻ってきてもいいのよ、そう言って抱きしめてくれた時……少し救われた気がした。


それからは、ルンダさんとローサさん、サルンサに私。

4人で生活すること10年。

もうその頃、私は空気と同じだった。


前世への思いは断ち切れず。

それでも生きるしかない私は、いまだに海を漂う幽霊だった。

たまに沖へ出て船乗りに無理難題を押し付けて笑う悪趣味な私のことをいつしか人間は『七色の魔女』と呼ぶようになった。

私の髪と尾が銀色で光が当たると七色に煌めくからなんだって。


ローサさんの前で良い子でいたかった。

ルンダさんを失望させたくなかった。


その一心で一生懸命動いていたけれど、サルンサが生まれてからはがらりと変わった。

初めてと言っていい子育てに2人は奮闘しながらもいつも楽しそうだった。

私の時は不安そうな顔ばかりだったから……。


そして、16歳になった。

成人だ。


さあ、旅立とう。


今までだらだらだったのに急展開で申し訳ないです。


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