2人と私
日が昇って窓から光が入る。
「朝だ……」
また今日も一日始まった。
心配させてはいけない。
ピシャリと頬を叩きリビングに向かう。
「おはようございます」
「おはよう、ルーサ」
椅子に座ると同時に2人が向き合ってきた。
「ねえ、ルーサ。話があるんだけどね」
あ、改まって言われると……怖い。
「な、なんでショうか!?」
声が裏返っちゃった。
「あのね……妹か弟ができたのよ」
ええ……?
「この間の新月の日、あったでしょう?
ルーサなら察してくれると思うけれど……」
ああ、そういうこと……。
「それで、この間分かったの。もう少しすれば卵が出てくるはず」
「卵って?」
「えーっと……人魚が子供を作れるチャンスっていうのは月に2回。
新月と満月のときのみなんだけど、その時に子供が出来れば1週間ほどで体調に変化がでるの。えーっと、まあ、悪阻ね。
それから少しすると、卵が出てくる。
生まれた時に黄色の魚たちがいたでしょう?その子たちに預けるの、1年半。
そして、見守られながらゆっくりとゆっくりと大きくなっていくの」
へぇぇ~やっぱり私は卵から生まれたんだ。
「生まれたら可愛がってあげてね。」
「もちろん!」
楽しみ……だね。うん。
それにしても、1年半って随分長いね。私もその間ずっと眠っていたのか。
とりあえず、バイトに行く準備をしよう。
歌ってから1日しかたっていないのに長い間行ってないように感じる。
まだお昼前だから、どこか他の村を見てこようかな。
商いの村、食の村、装飾の村、お菓子の村、鍛冶の村、医療の村、本の村、遊びの村、玩具の村……。
全て名前通り。遊びの村はテーマパークみたいな所だったっけ。
隣は玩具の村だから、お土産に買って行ったりプレゼントを買いに行ったりできる。
お菓子の村は村全体がお菓子で出来ているメルヘンチックな村。
入場料を払えばどれでも食べられるけど、甘いものしかないからちょっと辛い。
狩りをする大人などは、鍛冶の村で武器を作り装飾の村で細工をしてもらったりする。
食の村の人は商いの村から材料を買って調理する。
医療の村には病院が立ち並ぶ。外科、内科、くらいにしかわかれてはないけれども大きな帆立のような中に入って安静にしていれば怪我は治るし、大体のことは真珠と鱗で治ってしまう。
だから医者には人魚が多い。ちなみに助手で多いのはタコとイカ。
それぞれが専属の村に分かれているから面倒くさい気もするけど、しっかり選びたいときとかは動きやすい。
新しく生まれてから、本当に楽しい。
ルンダさんもローサさんも優しくしてくれる。不満なんかない。
けれど、そこに家族という繋がりはまだ持てない。
新しく生まれる子はきっとローサさんの欲しがっていた物をあげるだろう。
そうなると……。
いかんいかん……。
頭を左右に思いっきり振り邪推な考えを吹き飛ばす。
とにかく、バイトに行かなくちゃ!
「行ってきます!」
そう言って部屋を出ると、愛おしそうにお腹を撫でながら「いってらっしゃい」と返してくれた。
そして、半年間欠かされたことのない玄関までのお見送りが――その日から無くなった。
いつも言ってるけど、展開遅くてすみません。
でも普通の小説ってこんなものですよね……?(汗)




