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人魚の生き方  作者: 義昭
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懐かしい味

のんびり泳ぎながらメロディーへと向かう。

朝の運動をしている人や、商いの村へ行くために売り物を篭いっぱいに入れた人などが行きかっている。

朝一の競が終わったようで、食の村に近づくたびに賑やかさが増していく。


きっかり15分前にメロディーにつく。


カランコロン。


昨日とは違って店の中に空気がある。


「おはようございます。ルーサです。」

流石に一か月もたてば織田翔子です、なんて言わなくなる。

それはそれで寂しいけれども……。


「あら、早かったのね?ゆっくりでよかったのに」


コーヒーをサイフォンのようなもので淹れながらオーブンからマフィンやクッキーを取りだしているスナーシャさん。



「こんなに早くきてくれたんだもの、頑張ってもらわなきゃね」


そう言いながら、ウキウキとした声を出す。


「えっと……何をすればいいんですか?」


「オーダーを取ったり、商品を持っていったりよ。

支払いは私がするわ、お金だったり物だったりそれぞれ違うもので支払う人がいるからね。

さあ、あと5分で10時よ。頑張ってちょうだい」


ポーン、ポーン……柱にかかっている時計が10時を知らせる。


さあ、初仕事、始めますか!


カランコロン、カランコロン……

またたく間に席が埋まっていく。

カウンター8席、窓際にボックス席が4人掛けで6つ。


これを1人で切り盛りしていたんですか、スナーシャさん……。

幾ら貴方の口腕が長くて多くてもちょっと厳しかったんじゃ……。


そこからは目が回る程の忙しさだった。


タコのお客さんは珈琲と一緒に必ずクッキーを注文する。

竜の落とし子のお客さんはカフェオレと一緒に角砂糖を6個付ける。

海老のお客さんはオレンジジュースとカルボナーラ。

半魚人のお客さんはシュリンプのサラダとポタージュスープ……海老がいるのにいいのかな……。


いろいろな食事を提供するスナーシャさん。

オーダーをとって持って行く間に3人に配っている。

私、必要あるのかな……。


バタバタと慌ただしく過ぎていく時間。

ようやく一息ついたころには13時を過ぎていた。

これから商いの村が昼の市場を開くのだそうだ・


「さて、お店は1時間休憩よ。

その間にご飯でも食べましょう」


そう言ってナポリタンを目の前に出してくれる。

炒めたピーマン、ハム、ケチャップの香りが鼻を擽る。


「いい香り、頂きます」


美味しい。懐かしいナポリタン。


「美味しいです、本当に。」


「ふふっ、でしょう?隠し味に牛乳をいれているのよ。まろやかになるのよ」


なるほど……食事が娯楽なだけあって、いろいろ研究されているんだね。


さて、もうすぐ14時。


午後も慌ただしく働いた。

18時を過ぎたあたりでルンダさんから連絡が来た。


体のすぐそばで気泡がパチンと弾け、声が聞こえる。


『ルーサ?大丈夫かい?今日は何時に終わるんだい?』

それに気付いたスナーシャさんが「今日はもういいわよ」と言って上がらせてくれた。


『もう終わりです、今から帰りますよ。』

そう伝えて帰り自宅を始めた。


『待っているよ、今日はローサ特製のローストビーフだ。』

それは楽しみです、と伝えてメロディーを後にする。


疲れたけれど、充実した一日だった。

明日もまた楽しみだな、と思いながら家に帰ると2人で出迎えてくれた。


「おかえり」


これほどに心地よい言葉がほかにあるだろうか。


「ただいま」

そう言うと私は今日一日の話を2人に話し始めた。


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