★私と心
ぷかぷか浮く。ゆらゆら流される。ふらふら回ってくすくす笑われる。
スナーシャさんのお店についても、気分はまだ落ちたままだった。
駄々っ子のように、小さく丸まってぼうっとする。
全ての身付きはいつもこんな思いをしているのだろうか。
悲しい。辛い。寂しい。怖い。
「まだ、顔色が良くないわね」
ただぼうっとしているだけの私をみてくすくす笑うのをやめて顔を覗きこんでくる。
スナーシャさんの声、気持ちいいなあ。
「いえ……大丈夫です。ごめんなさい。」
迷惑をかけてしまった、心配させてしまった。申し訳ない。
「水、飲みましょう?真水と海水どちらがいい?」
「えっと……海水でお願いします。」
ペットボトルのような容器にいれられた水を投げられる。
弧を描いて……って言うのは無理だけど、ゆらゆらと私の手元まで流れてくる。
蓋をあけて一気に半分まで飲み干してからまた蓋を閉じる。
なんで、中に水が入らないんだろう……もう不思議なことばかり。
不思議ってばっかり思ってる気がする。
「美味しいでしょ?それ、オホリクス海の深海水よ。
ここらの海も綺麗で美味しいけど、たまには違う海水も飲みたくなるわよね~」
微かに甘くておいしい。
海によって味って違うんだ。
「あなた、身付きでしょう?何歳なの?」
「20歳、でした。」
「成人は何歳?」
「20歳……です。」
「平均寿命は?」
「80歳前後だったと……」
「そう……これからだったのね」
ズキン
そう、これからだった。
何もかも全て。これからだった。
いろいろと質問をしてくるけれど好奇心とかそんな無粋なものじゃない。
ただ子供を心配するような声で、話しかけてくれる。
「そう……ですね。これからでした」
そう言うと、また私は蹲りぷかぷか浮いてゆらゆら流されて、スナーシャさんにくすくす笑われる。
無言のまま。時は流れていく。




