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人魚の生き方  作者: 義昭
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人魚の価値

「じゃあ、どうすれば信じてもらえるの?」

クックが恐る恐る聞いてくる。


「信じるも信じないも、貴方たち次第。

家の名前を賭けられた信用なんて、意味がないじゃない」


「クック……もういいじゃない、まともに話を聞いてくれそうにないわよ」

「でも……」


ひそひそと2人で話をしているけれど、耳が良いせいか丸聞こえ。


「そもそもお願いって、彼女じゃなくてもいいんじゃないの?他の人魚に頼むとか……」

「でも、彼女が僕たちを信用してくれなくちゃ他の人魚も警戒して会ってくれないよ」

「はああ……一番初めに会ったのがあんなのだなんて、運が悪いわね」

「マーミリアッ!そんなこと言ってはダメだよ!」


内緒話はまだ続く。

マーミリアはあまり好きなタイプじゃないなあ。


「大体、人魚ってここにしかいないの?他の大陸を探してみるとか、もう少し先の海辺に行くとか出来ないの?」

「他にもいるけれど、呼び出しの鐘が出る場所は限られているよ。ここ以外に出てくる場所だと遠いし、それ以外は不定期でいつ出てくるかなんて分からないし……」


まだまだ内緒話は続くみたい。でも、そんなに待ってあげない。2人で話すなら私は必要ないしね。


「ねえ、お願いって何?」


声をかけると内緒話が途切れる。2人で私を見て、クックが声を出す。

「鱗と真珠が欲しいんだ!」


「いいよ」


「え?」

あまりにもあっさり許可をしたからか、間抜けな声が返ってきた。


「いいよ、あげる」


「本当!!?」

感情を隠さず素直に喜ぶクックに比べて、マーミリアはなんだか不満そう。私から貰うのがいやみたい。


「うん、でも、貴方は何を対価としてくれるの?」


人魚の鱗は万病の薬。一枚飲めば奇病が治せる

二枚飲めば大病も治癒する。

人魚の真珠は国の宝。一粒渡せば遊んで暮らせる。

二粒渡せば国が買える。


そんな迷信があるくらい大事なもの。実際はそこまでの効能なんてないんだけれどね。

確かに貴重な薬にはなるけれど、瀕死の人間を助けるには一人分の鱗が必要だし

真珠もそれぞれに色が違うから高値だけれど、涙のあとだから不揃いだし。

第一、流した涙には人それぞれの思いが詰まっているから悪いことに使われるなんて嫌。


それでもクックが要求した二つは普通に買えばとても高いものらしいから、直接交渉しに来たんだろうけどね。


商人は高いものと交換でその二つを少量だけ買っていく。個人売買は自由だと言っても、さすがにタダであげる気にはならない。

お願いすればなんでもなる、なんて思っちゃダメだよ。


さあて、2人はどうするのかな?

私だんだん腹黒くなってる気がする……。でも疑わなければ信じられないこともあるよね。


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