名前の価値
『若い男の子と女の子が来ている、なんかお願いがあるみたいだし聞いてみる。
危ない感じじゃないみたい。』
水中に一度潜り、声を届ける為に喉を震わせる。
口から白い気泡が出ていき、波に乗ってゆらゆらと数秒間周りに浮かび、シャボン玉のように弾けて消えた。
その後すぐに、また白い気泡が私の周りにあらわれて弾けて消える。
『そう?大丈夫?一緒にいこうか?』
消えると同時にローサさんの声が聞こえた。
いつ見ても不思議だ。
『大丈夫、海からは出ないし何かあったらまた言うよ。』
『気をつけてね』
そこで会話は終了。
気泡で特定の人に声を届けられるのは便利だけど、どうなっているんだろう。
本当に不思議。
「こんにちは、クックさんとマーミリアさん、私はルーサ。」
正面から再び上半身を出して挨拶をする。
「あ、あ……えっと、クックです、旅をしています。」
「マーミリアです、クックと一緒に旅をしているわ。」
ちょっぴりオドオドしながら自己紹介を始めてくれた。
年は2人とも17歳、16歳で成人扱いだから半年ほど前に2人で旅に出たらしい。
2人とも良い所のお家らしい。
私が生まれて1ヶ月ほどだと言うととても驚かれた。
見た目は5歳程だもんね。でも、見た目に年齢が追いつくまでは成長しないからちょっと寂しいよ。
それぞれの簡単な自己紹介が終わる。
「貴方たちが私を騙して売りつけるとかする可能性はある?」
本当の悪人にこんなこと聞いても仕方ない気がするけど……
「そんなことしないわ!マーミリア・フェルジの名に賭けて!」
マーミリアが失礼な!と言わんばかりの顔をする。
「ぼ、僕も!クック・ガジルダの名に賭けて!」
続けてクックも叫ぶ。
「別に貴方たちの名を賭けられても困るんだけど、私にとってその名前は価値のないものだから」
唖然とするクックに、憤然とした顔のマーミリア。
分かりやすいね。旅をしてて騙されないんだろうか、ちょっと心配になるくらいだなあ。




