人間の願い
キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ――
耳を貫くような甲高い鐘の音が響き渡る。
もっと優しく鳴らせば綺麗な音色が流れるのに。
この鐘を鳴らすことで人が来たことを知らせる。
まあ、玄関のチャイムみたいなもの。
人が来ると浜辺出てくる不思議な鐘。
「い、痛い……やめて……。」
ようやく鳴り終わると2人が声を出す。
「どう?人魚きそう?」
「う~ん……駄目ね、もう一度鳴らしてみようか。」
駄目だ、あんなのがまたなんて……きっと村のみんなも起きただろう。
仕方ない、海にいるなら私の方が有利だしちょっと遠くから話かけるしかないか。
2人の正面まで行き、腰までを水面から一気に出す。
「駄目、鳴らさないでちょうだい。」
いきなり飛び出たからだろうか、ビクリと肩を震わせ私を見る。
「え……あ……マーミリア……?」
「え、ええ、あれって……。」
2人が会話を始める前にもう一度注意をする。
「その鐘を鳴らさないでちょうだい。」
二度目の注意で鐘に触れていた手を素早く避ける。
「その鐘は、そんなに強く鳴らさなくてもいいわ。
もっと優しく鳴らしても私たちには聞こえるし。
大体、こんな朝早くに鳴らして、皆が起きてしまうじゃない。」
「す、すみません、僕たち人魚に憧れてて、是非一度見たいって
邪魔するつもりはなかったんです、その、あの、ごめんなさい。」
慌てた様子でクックが頭を下げる。
それに続いてマーミリアも頭を下げる。
「いいよ、そんなことより、何しにきたの。」
正面から見たら2人とも若い。
17.8歳くらいだろうか?それでも警戒をしといて損はない。
「私たち、人魚に会いにきたんです。」
マーミリアが答える。
「じゃあ、もう会ったからいいよね、さようなら。」
村の人に伝えに行かなければ……そう思いながら海へと沈む。
「え、あ、ちょっ、まって!!」
慌てた声でクックが引き止める
「何?」
「僕は人魚にお願いがあるんだ!!」
必死になって叫ぶクックを見て、少しお姉さんが話を聞いてやろうじゃないか、と思ってしまった。
警戒なんて言葉はどこにいったのだろう……なんて苦笑しながら近づき――
「いいよ。」
そう一言伝えた。




