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似非女子高生

作者:

自殺で死ぬ人が増えて社会問題になってから日本には「似非うんたら」が増えた。私もその1人。自分で「似非」とか言ってるあたり矛盾してる気がするが……

興味本位で始めたリストカットは痛いことは物凄く痛かった。だけど、ストレスも発散できた。よって癖になり続けている。


 成績は普通、部活は無難なとこでバスケ部。クラスではそこそこ良い位置にいる。部活で試合とかに出ると友達が応援に来てくれたりする。まぁ、学校生活を営む上では何一つ支障はない。むしろ青春ポイントは高い方だろう。あ、青春ポイントってのは青春っぽいことをしたら点が貰える私流のゲームね。気にしなくて構わない。


そんな私も「似非精神病者」ってやつで家に帰ると毎日手首切っちゃう。カッターでキリキリっと。数日経って瘡蓋になった傷跡は瘡蓋を剥がしてアルバムに張ってる。リスカする時に出る血を拭ったティッシュも保存してる。私って痛い子(てへぺろっ

親はどちらも仕事で深夜にならないと帰ってこない。一家団欒なんて何年もしてない。だから、家族の溝は深まりMAX!そんなんだから、リスカしていても変な趣味をもっていても誰にも文句は言われない。


 翌日の放課後も家には誰もいない。趣味に没頭する私。でも、なんだか今日のリスカは痛くない。試しにもう1度切ってみる。痛くない。痛みに慣れてきたのかもしれない。

翌日も切ってみた。昨日と同じく痛くない。痛くないとストレス発散にならない。もう1度切った。痛くない。切る。痛くない。切る。痛くない。切る。痛くない。

切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る。

痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない。


脳が麻痺してきたか?



 翌日も朝から学校だった。学生だから当然だ。でも、何だか周りの様子がおかしい。友達と目が合うのに相手はそれに反応を示さない。隣の嫌いなあの子も話しかけてこない。苛めかと思いきや、クラスの雰囲気はどこか沈んでいた。私の方を遠巻きに見て暗い顔をしている。正直、居心地が悪い。


放課後、いつもみたく友達と寄り道することもなく帰宅。

すぐに自室へ行き、昨日と同じ行為に取り掛かる。何度も繰り返していると痛みはないのに血がどんどん流れてくる。体中、もう切り傷だらけだ。このまま切り続けても痛みが訪れることはないだろう。


仕方ないので台所へ行き、食器等が仕舞われている引き出しを開ける。お目当ての品を見付け、手に力いっぱい握る。


手にした果物ナイフでカッターで作った傷口を上から深くなぞる。それでも尚も痛くない。訳が分からなくなり無我夢中で傷跡をなぞった。血液と涙が流れ出るばかりで苦痛がない。足元はもう赤い海だ。



混乱する意識の中、誰かが家に上ってくる音が聞こえた。

「あぁ…お母さんの足音だ。今日は帰ってくるの早いな…」


痛みがない不安の中、安心できる存在が現れた。近付いて来る足音に向かって視線を投げかけると足音は少女の横を通り過ぎて行った。足音が向かった先は台所よりも奥の部屋に位置する和室。そこにはバスケの試合で勝利した喜びをカメラに向かって表現している少女の写真。少女の写真が飾られた仏壇に合わせられる両手。


呆然とする少女の足元には影が存在しなかった。

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