伯父さん
夏の日差しが容赦なく、俺の体力と気力を焼き消して行く。
辺り一面に広がるのは、俺が知っている都会とはかなりかけ離れていて、遠くに連なる山々が途切れることなく、この田舎町を囲んでいる。
(どーして俺が、姉さんの子どもの世話をしなくちゃならねーんだよっ…!)
3日前、電話の向こうの姉さんにそう言った。
俺はその時仕事が切羽詰まっていたから、ついかっとなって、八つ当たりするような形になってしまった。
だから今日は、姉さんに謝るつもりで…。
いや、あの、別に、姉さんが好きなわけじゃないので、そこはあらかじめ訂正しておく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
田の中の農道を、デカいスポーツバッグを背負いながら歩いていると、同じ道の反対側から、人が2人、歩いて来るのが見えた。
よく見ると、1人がこちらに手を振っているように見える。
確認のために、後ろに人がいないか振り返ってみたが、誰もいなかった。
「おーーい!お兄さーん!」
いきなり呼びかけてきたので、俺はびっくりして立ち止まった。
2人組は俺が立ち止まると、競争するように走ってこちらへやって来た。
少し呼吸を整えてから、その2人は顔を上げる。
「「やあ、お兄さん…じゃなくて、“伯父さん”」」
「?!」
綺麗な肌に薄い唇、しっかりとした美しいラインを描く眉毛。
それらはまったく同じなのに、片方の青年の目は切れ長で、もう片方はクッキリ二重。
そのせいで、最初のうちは双子だと気がつかなかった。
「冬弥、春弥……」
「待ってたよ、伯父さん」
そう、こいつらは、俺こと高城 晃
の、甥っ子なのだ。
「姉さ……じゃなくて、お前たちの母さんは、もう……?」
「ああ、」
「父さんと行ったよ」
「「イタリア旅行にね」」
「はぁ~……」
俺は大きなため息をつくと、その場に座り込んだ。
「ったく……。俺は双子の世話するなんて、
一言も言ってねぇっつの…。しかもお前たち、高校生じゃねーか。お守りなんか、必要無いだろ」
そう言って目の前の双子を睨みつけると、双子は顔を合わせて笑う。
「だってさあ、」
「料理出来ないし、」
「掃除はするけど、洗濯がね~」
「だから、頼んだの」
「理由になってねぇよ!」
すかさず突っ込む。が、双子はもろにスルーして、勝手に話を進める。
「だからさ、」
「母さんと父さんがいない一週間、」
「俺たちの世話、してくれない?」
最後の言葉を締めくくった冬弥(クッキリ二重のほう)が俺からスポーツバッグを取り上げ、春弥(切れ長のほう)は俺の腕を引っ張ってムリヤリ立たせた。
「「報酬は沢山あるらしいよ」」
「だから、行こう?」と冬弥。
「俺たち、イイ子にするからさ」と春弥。
「………っあークソッ!わかったよ!」
双子に説得され、俺は一週間世話をすると言ったが、この後、それを酷く後悔することになる。
初めて書いたので、短くなってしまいました(;´Д`)
続きも頑張って書くので、暖かく見守ってくれたら嬉しいです(*´∀`)
感想などありましたら、よろしくお願いします。