赤眼のレリク 第85話
レリクは街の夜を歩いていた。
夜を歩くというのは適切な表現ではないのかもしれないが…、昼を歩くことができないのだからしょうがない。
金は十分にある。しかし、このままでいては彼女の情報すら手に入らない。
俺は実行に移すことにした。
「あんたか…。いつか来ると思っていたよ。赤眼のレリク。金がないとやっていけないだろう。」
表向きは怪しげなバーだが、本当の仕事は裏ギルドだ。怪しげというので分かるかもしれないが、実際は別の仕事をしている。武器の密売とか、麻薬の売買、賞金首を持ってきたり、死体を処理したり…。犯罪という犯罪はすべてやっている。
見た目はバーであるのは確かだ。ちゃんと酒を置いてある。普通のバーよりもたくさんの酒がある。棚にはぎっしりと瓶が詰まっており、そこに名前の札が貼ってあるものもある。誰かが置いていったものか、もしくはキープしているのだろう。それなりに人が来ているのがわかる。しかし、すべて犯罪者には違いないが。ここに収容できる人数は20人弱か…。それほどに広くはない。だが、そこに置いてある家具は新しいものである。おそらく結構な稼ぎがあるのだろう。副業が本業なのだろう。まあ、どこも同じか…。
主人は目が濁っている。もちろん本当に濁っているというわけではなくて、心が濁っているからそれが目にも表れているそういったところか…。
「少し血の匂いがする。」
「ええ、まあ…。何というか…。分かっていただけるとありがたいのですが…。」
「分からないということはない。ただ…。」
「ただ?」
商売ではお客は神様という言葉がある。人が来てくれないとものを買ってくれない。そういった言葉だが、ここでの意味は少し違ってくる。信用を失えば、任務を提供されないということではない。反対に殺されることを意味する。異常かもしれないが、もし、追手をかけられることを思えば、主人を殺しにくるし、こちらが戸惑っていれば犯罪者として殺される。
双方の利益が一致しているときだけは一時的に同盟を結んでいる状態にあるだけだ。どちらかの都合が悪くなれば、すぐにどちらかが消されることになる。しかし、立場上裏ギルドのほうが仲間が多い。そういった意味でも犯罪者は必死だ。犯罪者は堂々と表の道を歩くことすらできない。だから犯罪者はさらなる犯罪を生み出してしまう。
「今回、殺されたのはどういう奴なのか、それを教えてほしい。」
「それはどういう風にとらえればいいのですか?犯罪者の名前ですか?それならお断りするしかありませんが?」
「いや、どういう犯罪をした者か…。それを聞きたい。」
「それだけでしたら、話せないこともないですが…。」
「これじゃあ、足りないかな?」
「弱りましたね。」
「何かあったのか?」
「いえ、このことを口にしないように口止め料をもらっているのですよ。」
「じゃあ、その名前を教えてもらおうか。」
「わかりました。こっちの口止め料はもらっていませんからね。名前はアクア。あなたならご存知かと思いますが…。それにしてもこの金額を払える人なんてそうはいないですよ。」
「それなりに金は持っている。いろいろやってきたからな。」
「まあ、気にはしませんが…。しかし、レリクさん気を付けたほうがいいですよ。あなたは名が売れすぎていますから、いろんな方に狙われることになります。」
「お前にもか?」
「いいえ。あなたにはかなわないことを私はよく知っていますから。犯罪者になって、もう4ヶ月ですからね。今までどうやって生きてきたのかというほうが気になります。追手も殺してはいないようですし…。」
「お前が期待しているような旅はしていないと思うぞ。」
「そうだとしても聞きたいというのは本音ですが…。情報は伝えましたよ。それとアクアさんから伝言を預かっています。」
まあ、俺がここに来ることは予測できるだろう。俺がアクアを調べるように、アクアも俺を調べていたようだ。あれから4ヶ月。俺はもちろん隠れながら行動していた。隠れていたのは捕まらないようにという単純な考えもあるが、姿をくらますことによって彼女をおびき出そうとしていた。彼女には国以外には敵がいない。敵は多数いるが彼女の強さに匹敵する者がいない。ただそれだけだ。俺自身も一人ではかなわないのはよくわかっている。だからこそ、4ヶ月という歳月には十分に意味のあるものだった。
「生きる媒体がある限り私が死ぬことはない。って何のことですか、これは?」
「さあな。伝言は受け取ったと伝えてくれ。他人には漏らさないように頼むぞ。漏らしたらアクアが殺しに来るだろうからな。」
「分かってます。あと、これが頼まれていた物です。気を付けてくださいね。これはこの国では扱ってはいけない代物ですから。」
「分かっている。また、金をもらいに来るかもしれないな。」
アクアの殺しの傾向がどういったものかを調べた。表向きは普通の犯罪者として扱われているのものがほとんどだが、そのほとんどが国との取引があったものばかりらしい。もちろん金みたいなものもいれば、家族を人質に取られているような科学者や技術者も多くいる。彼女との関係はどういったものかは分からないが、間接的に彼女を殺すもしくはダーク・デビルを奪うためにやろうとしていたのだろう。彼女を殺すのは難しいと分かっていたはず。どうして多大なる犠牲と汚名、そして隠匿してまでもダーク・デビルを手に入れる必要があるのか。俺にもそれは分からなかった。俺などが持っているマラリスとダーク・デビルの違いが何かあるのかもしれない。
夜中に行動するのは気持ちいいと思える。マラリスのおかげで、冬でも少し涼しい程度に体温が保てるからだ。野宿はどこでもすることができるし、何より風邪などにもひかなくなったし、感染病なども移ることはない。夜風はすごく気持ちがいいものだ。だが、それは別に殺気立ったやつらが多いのは否定できない。女性は夜、歩くのは危険な行為だ。強盗なども男よりも女のほうが被害が多発している。腕力が少なく、脅しやすいというのはあるが、彼らにとってはその後のほうが大事なのだ。