赤眼のレリク 第81話
~宿にて レリク視点~
「そうだったのか。道理でお前たちが遅れたはずだ。」
「それにしても、強かったですよ。」
「そうなのか?」
「ええ。操られているとは思えなかった。統率、能力、術も最大限まで出されていたと思います。それにしてもその場で全員が気絶というのはかなり妙です。」
ロスとラリアはアクアが操っていると思われる奴らと戦闘していたらしい。その時の報告を聞いているだが、どうやらウルゲイの報告とは少し異なっている部分がある。ウルゲイは攻撃して気絶させたと言った。しかし、どうやら気絶させたということではなく気絶したということなのだろう。どうやらエネルギーが切れると気絶するということだろう。不可解な能力だが、複数の人数を操ることができるのだろう。ロスの話を聞く限りはたくさんの人を操ることはできない。
ロス・ラリアが1人ずつで相手にするのには限界がある。
多くても10数人ぐらいだろう。しかし、問題なのはかなりの指示を出せるほどの操れる人間だ。ルイもそうだったし、ラリアもそうだった。2人ほどの人間が操られるとなると、対応策を練ろうにもどうしようない。
「厄介ですね。ルイほどの奴ともなると、そう簡単には行かないですよ。」
「そうね。彼は危険だわ。できれば、仲間にしたかったところだけど…。」
「そうはいっても、どうしようもない。彼女の居場所も分からないから動きようもない。」
これからの対策としてはルイをどうするかということになりそうだ。今回は惜しかった。本当に惜しかった。もう少しだった。あと一押しなんて言う感じではなかった。勝っていたように思う。俺としてはこれで終わりしようとしていたので正直ショックだ。マジックアイテムでどこに消えたなんてわからない。1からの振り出しに戻ってしまった。ここまで来るのに2年かかった。また2年かかるとなるとかなりしんどい。
彼女は2年間の間にもっと強くなっているかもしれない。俺はそれが怖かった。2年前のあの日、俺はマラリスを持っていなかった。それが原因ということではなかったが、マラリスのおかげで強くなったのも事実なのだ。今回のような幸運がそう何回も起こるとは思えない。むしろ、二度目はもうきっとないだろう。俺はそれをずっと考えていた。
どうすればいいかなんてわかるわけではない。戦うこと、そして彼女を止めること。それを俺は目標にここまで来た。しかし、もう彼女は止まらないだろうし、止めるためには最悪の方法も考えなくてはならない。2人だって、許しはしないだろう…。俺がやるしかない。俺がやるしかないのだ。
「どちらにしても、今は復興を手伝うしかありませんね。その中で証拠か何かあればいいのですが…。」
「まあ、ないだろうな。だいたいあるわけがない。操られているのだから…。」
「その証拠はないわ。でも、彼女がどうやって操ったかという証拠はあるかもしれません。」
「それはどういうことだ。」
「私は操られていました。しかし、その前に何かしらアクションがあるはず。」
「術に詠唱があるようにか?」
「そう。その通り。」
「ふむ。それが分かれば逆に裏をかけるかもしれないな。」
「そうですね。」
「やることはそれでいいか。」
「そうしましょう。」
俺たちは解散した。
俺は月夜が照らしている道を歩いていた。
1人で歩いていた。やっぱり1人で歩くのはいいな。そう思った。ここ最近、ロスと一緒だったし、ラリアもついてきた。アクアがどういった状況か分かった。自分はどうやら甘かったらしい。あのダーク・デビルさえなくなってしまえば、彼女は治ると思っていた。むしろ、治ると信じたかったのかもしれない。心はどうやらあっちに片向いているのかもしれない。あのまま、彼らと一緒にいてしまっては不味いことになるかもしれない。
やっぱり1人でいるのがいいのだ。あいつらを巻き込むわけにはいかないだろう。これは俺の、いや、俺の一族の問題なのだ。だが、あいつらは俺が思ってるよりもずっとずっと強くなった。見ているか。親父、ロスはこんなにも強くなったぞ。俺がもう見てやる必要もない。彼は一人でやっていける。俺がアクアさえ倒せば…。
「さてと、どういうことか説明してもらえますか?」
「そうね。私にも教えてもらえますか?」
「2人ともどうした?ラリアはありえない敬語を使って…。」
「それはこちらのセリフですよ。今さらどこへ行くつもりですか?」
「う~ん…。急に用を思い出してな。」
「そう…。レリク。あなた死にたいのね。」
「なんでそうなる?」
これはどういうことだろうか。あいつらには眠り薬を持ったはずだったが…。どうやら俺が思ったようにはいかなかったらしい。それにしても、あいつらは本当に強くなった。ラリアはもともと強かった。というよりも2人は単純に判断力がついただけのように思う。慎重にやることはいいことだが、それがかせになってしまうことはよくあることだ。
ウルゲイに言われたように俺はある国へ行こうとしていた。もちろん、あまりいい国ではないのは確かだろう。今あそこの国は不味い状況にあることは十分知っている。しかし、俺はそこに行くのはある理由があるからだ。
彼らを連れていくわけにはいかないのはそのためだ。彼らがいるとややこしい話になる。ただでさえ彼らは優秀な傭兵なのだ。
「さて、そこを通してもらおうか?」
「「断る」」
「どうしてだ?お前たちにはもう十分働いてもらった。結局は失敗したが、仕方のないことだ。ウルゲイからもちゃんと報酬をもらっただろう?」
「そういうことではないということが分かっているはずよね。私たちは彼女を殺すためにあなたについてきたのよ。捕縛できるなんて考えてはいなかった。」
「その通り。難しい問題かもしれないですね。レリクさんにとっては…。彼女が何よりも大切そうですからね。あなたのことを監視してましたよ。すみませんが、そうするしか方法がなかった。あなたの強さについても秘密な部分が多かったのは事実だから。」
「すまないが、そこをどいてほしいのだが…。」
「どくことはできませんね。むしろあなたが引いてほしいところです。」
「じゃあ、やることにしよう。」
「正気ですか?先ほどまで仲間だったのに。」
「人の気持ちは変わるものだ。ロス…。」
「炎帝」