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デビル・ジュエリー  作者: かかと
赤眼のレリク篇
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赤眼のレリク 第80話

~旧首都ウルゲイ 救出完了後~


「どうやら、ここまできたら安心みたいね。」

「そうですね。テディーさんもいました。おそらく大丈夫でしょう。それより、これからどう行くかですね。」

「そうね…。」


トンネルは人で溢れかえっていた。それはアクアを探すために他ならない。もし、ここにアクアがいたとすれば、すべてが水の泡だ。レリクさんはバハムートのほうに貼り付けになっている。ここを急襲されたらひとたまりもない。


「少し時間はかかってしまうけど、裏山の横道を通るしかないみたいね。」


僕もそう思っていた。しかし、あの山の近くにはモンスターが多数生息している。二人では危険ではないレベルだが、時間がかかってしまうことだけは否定できないだろう。


「しかし、それでは時間がかかりすぎてしまいます。」

「もしかしたらだけど、今はモンスターはあまりいないのではないかと思うの。」

「それはどうしてですか?」

「単純に考えてよ。ある程度のレベルの人はあそこは通れるのよ。そんなところに生息しているモンスターたちがバハムートを見ておびえないと思う?」


それもそうだ。彼らは本能的に動くことがしばしばだ。もちろん、それは下級であればあるほど、あの場所からすぐに逃げ出したいに決まっている。


「なるほど。一理ありますね。」

「それにあの道しか行く場所はないのだから、行くしかないでしょ。すごく強いモンスターがいない限り。」


それもそうだ。レリクさんを一人にすることはできない。


「尤もです。では、行きましょうか。」

「うん。」


僕たちは走り始めた。


~ウルゲイ山街道~

道中、モンスターが出ることはなかった。

どうやら、ラリアが言っていたことが正しかったらしい。

「当たったみたいね。」

「そうですね。これなら、間に合いそうですね。」


このまま、順調に行けばだが…。



少し走ってラリアが急に止まった。


「どうしました?早く行かないと…。


ゾクッ


後ろから何かを感じた。


「伏せなさい。」


僕はラリアに言われたとおり、身を地面に伏せた。


「砂塵」


僕の頭の上を砂の塊が通っていくのがわかった。


ズッシャアアア


何かと当たったらしい。


僕はすばやく、身を起こし、ラリアの横へ移動した。


「どうやら、彼女はここを通ることを予想してみたいね。」


僕は砂塵の中に見える人たちを見ていた。

あれは、おそらく、ウルゲイにいた傭兵のはず。アクアに操られているのか?


「これは面倒なことになりそうよ。20人はいる。」

「そんなにいるのですか?僕にはよく見えませんが?」

「それはしょうがない。それよりも、おそらくあの人も操られているでしょう?」


僕は黙ってしまった。彼女も操られていた。一人だったのだ。彼女がうれしいはずはない。


「否定しないところを見ると、私の予想は当たっているようね。でも、私もあんな感じだったのか。少し腹が立つわね。」


どうだっただろう?彼女のときとは操られ方が少し違っているように見える。気のせいだろうか?


「どうも、僕は違うように見えます。レリクさんのように優秀ではありませんが、どうもそんな気がします。少なくとも、操られているとは見えなかったですよ。ぱっと見はですが…。」

「そうなの?では、いったいどういうことかしら?」


しかし、考えているような暇はないようだ。全員がこっちに向かって走ってくる。


「できるだけ、殺さないようにしましょう。」

「そうね。」


そういいあって、僕たちは剣を抜いた。


キィィィン

キィン

キィン


「くっ…。こんなに強いのか。」


この僕でも三人を相手するのが精一杯だ。


「我慢してね。」


僕は体勢を崩した傭兵に後ろ蹴りを見舞った。

「ぐわっ」


そういって、後ろへ倒れた。しかし、その人を踏んで次の傭兵が進んでくる。


「感情がないのか!」


僕はもう一人を剣腹でたたいて気絶させた。

しかし、僕の前には剣が見えていた。


「なっ!」


僕は咄嗟に後ろに下がった。

正面を見てみると、傭兵が味方の腹を刺しているのが、見えた。どうやら、僕たちを殺すためには手段を選ばないみたいだな。

そう考えていると後ろから声が聞こえた。


「炎」


3人の傭兵が合同して術を見舞ったらしい。

僕は反応が遅れてしまった。


「しまった。」


「砂風」


僕の後ろからラリアが術を放ってくれた。


ブワッ


炎が上空へ逸れていく。


「油断しないで…。こいつら、普通じゃない。」


そういう彼女の後ろには傭兵が迫っていた。

僕はそれを防いだ。


キィィィン


反応が遅れている傭兵の腹に蹴りを見舞った。

その瞬間に周りを囲まれてしまった。


僕はラリアに背中を預ける。


「これは、ピンチみたいね。」

「そうですね。少しやばいかもしれないです…。」


気がつけば、僕たちの周りを約10人ぐらいが囲んでいる。

中でも強い傭兵ばかりだ。

しかし、遠くから大きな声が聞こえた。


「シールドをはれ。」


僕とラリアが咄嗟にシールドを作る。


上から大量の弓矢が降ってきた。


周りにいた傭兵はいっせいに逃げた。そして、後ろへと下がっていった。


「何とか、間に合った。」

「あなたは…。」


確かウルゲイの隣にいた男か?


「誰かもわからないけど、助かったわよ。」

「いいえ、別に気にしなくてもいいですよ。それにしても、あの動きは普通ではいないみたいですね。」

「そうね。ここにはあんなレベルの傭兵はいなかったと思う…。」

「では、これも彼女の能力でしょうか?」

「もし、そうだとしたら、ここはともかく、普通の町でも大混乱になりますよ。」


僕たちの後ろには多くの兵士がいた。どうやら、アクアはあの中にはいなかったのだろう。

しかし、どうしてテディーさんがここにいない?レリクさんが言うには彼はあちらにいたはずだが…。


「話したいこともあるだろう。しかし、今は目の前の敵を倒そう。」


ウルゲイの側近が言った。この人もかなり若い。僕と同い年ぐらいか…。

見ると先ほど倒したはずの傭兵の数人は起き上がってきた。

水系統を扱える傭兵もいたか。


「これじゃあ、手加減するなんて言っていられないわね。」


ラリアが言った。


「僕も賛成です。」


「じゃあ、一斉に術を放つぞ。全員準備をしろ。弓矢を切らすな。」


さすがに手際がいい。これではなかなか近づくことはできないだろう。


「やれ。」


大きな声とともに、僕らの前は真っ白になった。


「やったみたいね。」

「それにしても、強かった。」


僕は傭兵の一人を見下ろした。

この人はここまでの術は使えなかったはずだ。


「先を急ぎましょう。もうすぐ、町に着きます。」


そういって僕たちが駆け出した。


ズズズズゥウッゥゥッゥウゥン



そのとき、爆風が僕らを襲った。


「くっ。」


その場で立っているのが、やっとだった。



「何、今のは?」


僕たちは砂煙に覆われて、周りが見えなくなっていた。しかし、アクアはそれに何かを感じたらしい。


「この先に赤眼がいる。」

「バハムートが消えているということは彼は倒したのか?」

「わからない。でも、この爆発では彼はかなり疲弊しているはず。早く行かないと。」


そういって、アクアは走り出す。

僕はその後をあわてて、追った。



彼女は家を軽々と超えていく。僕はついていくのがやっとだ。彼女とは同等だと思っていたが、どうやら僕は彼女の本当の力を見ていなかったらしい。


「赤眼!」


彼女はレリクさんを発見した。

彼女はすばやく彼に近寄り、治療を始めようとしたがそれをやめてしまった。


僕はそばへ行った。そこにはテディーさんがいた。

しかし、僕は傷を見て絶句してしまった。

左腕はまったくおかしな方向へ曲がっている。しかも、体は血だらけだ。

この傷では…。


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