赤眼のレリク 第75話
「久しぶりですね。」
俺が見ているところには二人がいた。
「どう?体は訛っていない?赤眼。」
そういって、ラリアは俺を見てきた。
「誰、この人たち?」
そういって、ソフィーは俺の後ろに隠れた。
「殺気を出すな。ラリア。ソフィーが怖がるだろう?」
「そうですよ。子供には優しくしてあげないと。」
ロスは腰をかがめて座った。
「こんにちは、僕はロス。よろしくね。こっちの人はラリア。レリク兄ちゃんのお友達だよ。」
ソフィーはおずおず前に出て行った。
「よろ…しく。」
こいつは案外童顔だからな。もしかしたら、子供に好かれるような顔立ちかもしれない。違う嗜好の人にも好かれそうだがな…。そして、ロスの手をとって握手した。
「わ…私はラリア。」
ん?何か様子がおかしいな?
「よろしくね。ラリア姉ちゃん!」
すっかり打ち解けてしまったらしく、先ほどの感じはソフィーには見られない。
むしろ、ラリアのほうが緊張しているくらいだ。
「おい。」
「何、赤眼?」
…普通だな。
「赤眼?」
ソフィーが首をかしげて、俺のほうを見てくる。そうか、俺のことを知らないのか…。それも無理はないか。俺はここでは居候だからな。職業自体もよくわかっていないのかもしれない。
「俺はそうとも呼ばれているんだ。」
「ふ~ん。なんか変なの。そうだ!ラリア姉ちゃん。あっちにお花畑があるんだよ。見に行こう?」
「いや、私は…。」
「いや?」
うっすら涙を浮かべてラリアを見つめるソフィー。さあ、どうするか?
「わかった。行こうか?」
そういって、あいつはソフィーと一緒に歩いていった。
俺が二人を見ているとロスが隣へ来た。
「ラリアにも苦手な分野がありましたね。」
「ああ。そうだな。」
こんな毎日が続けばいいと、正直思う。しかし、アクアを止めなくては、それもまた夢の話だ。
「ここにいると時間が経つのを忘れてしまいそうですね。長閑な場所です。
「…ああ、本当だな。」
そういって俺たちは無邪気に遊ぶソフィーとドキマギしているラリアを見ていた。
「でも、このまま、アクアは終わりそうもありませんね。」
「…俺の予想ではここからは、戦争に発展するかもしれん。」
「そんなのいつもことでしょう?どこの国でも火種は燻っている。」
「だな。もう国ができて、200近く年経つか…。そろそろ、財政的にも逼迫しているしな。」
国も永遠に続くわけではない。いつかは終焉へと向かっていく…。それは歴史が唯一証明している真実かもしれない。
「今回の襲撃をどう思う?」
「どうといわれましても…。見たとおりだと思います。」
「どうもそうではない。お前は地下トンネルの先を見たのか?」
「先?何があったのです?」
「いや、知らなければ知らなくていい。」
ラリアは見ているだろうな。
「これから時代が動いていく。お前はそれをよく見ておけ。必ず何かが起きるぞ。」
「どうしました?レリクさんらしくないですよ。」
彼は立ち上がって、剣を向いて、俺と向き合った。
「師匠と何を話しされていたのか、僕にはわかりませんが、でも、僕はそれでもアクアを討ちたい。だから、強く今よりもずっと…。」
「………。」
「私も忘れては困る。」
そういってラリアが剣を抜いている。
「お前たちごときで俺に勝てると思っているのか?」
ソフィーがあまりの展開で戸惑っている。
「みんな、喧嘩はやめようよ。ねえ、レリク兄ちゃん…。」
「家に帰っていろ!」
俺のあまりの変容にソフィーは泣き出して帰ってしまった。
「よかったのですか?あれで?」
「ああでもしないと聞かないだろう。下手な演技をさせて、お前たちすまないな。一週間後にはここをたつ。」
「わかった。それまではここで私もゆっくりすることにする。」
ラリアは歩いて、宿に帰っていった。
「わかりました。僕も従います。」
彼も歩いて立ち去った。
ここの景色ももう最後か…。