赤眼のレリク 第74話
~1ヵ月後~
「これで最後の包帯ね…。」
「ああ。そうだな…。」
ここでの生活は本当にいいものだと感じた。左手がうまく使えなかったため、彼女がいろいろなお世話をしてくれた。仕事もきついはずなのに…。
「やっぱり行くのね…。」
俺は首を縦に振った。
「すまない。」
「いいの。でも、あと1週間だけ待ってくれない?」
「別にかまわないが…。どうかしたのか?」
「いや、違うの。少しプレゼントしたいものがあって…。」
ナルミは顔を真っ赤にしていた。
「いや、別にいい。そんなに気を使わなくても…。こっちがプレゼントしないといけないぐらいだ。」
「もらってくれればそれでいいの。じゃあ、仕事に行ってくるね」
そういって、彼女は出て行った。
プレゼント…。そういえば、いつからもらってなかったか…?
そういって、俺は天井を見上げた。
とは言うものの、1ヶ月間のブランクは非常に大きい。左腕は常に固定さてしまったため、思うように使うまでには時間がかかるだろう。俺は鍛錬をするために、外に出かけた。
体が軋む。どうやらかなり鈍ってしまったようだ。このままではアクアなどには負けてしまうだろう。ロスにさえも術を使わなかったら負けてしまうかもしれないな…。
「しかし、フェニックスはまだ復活できていないか…。」
まともにあの光線をくらっていたのだ。かなり時間がかかるとは思っていたが、ここまでかかるとは思っていなかった。
そのとき、後ろに気配を感じた。
「邪魔しちゃった?」
そういって、ソフィーが首を傾げた。
しかし、俺はその子が持っているものに気がついた。
「ソフィー。それは俺がもらっておくよ。」
そういって、俺は彼女から剣を取り上げようとした。
彼女はそれを頑なに拒んだ。
「やだ。」
「どうして?」
「レリクの兄ちゃん、ここには帰ってこないつもりでしょ?」
俺は不意を疲れて、反応が遅れてしまった。
「…いや、また、」
「じゃあ、何で、いつもナルミ姉ちゃんは泣きながら、仕事に行っているの?」
そうか…。あいつ、俺の前では元気に振舞っていたのか…。
「だから、レリクの兄ちゃんに剣を習うことにしたの。そうしたら…。」
「こら!やめなさい!ソフィー!」
そういって彼女の母親がたしなめた。
「すみません。いつも…。」
「いえ、俺は別に…。」
「ねえ、お母さん、聞いて。兄ちゃんに剣を習うことにしたの。」
そういって、ソフィーははしゃいだ。俺は返事をしていないはずだが…。
彼女の母親は俺のほうをにらんだ。
この子に何を吹き込んだのか、知りたいらしい。
俺は何もやっていないのだが…。
こうなったら、仕方ないか。もう少し、ここでゆっくりしていくことにしよう。それに…。ちょうどいい。練習相手も来た様だ。
「そうよかったわね。レリクさん、怪我をしない程度にお願いします。」
「分かっています。」
そういうと彼女の母は少し不安げな顔をしながらも、ここを立ち去った。
「やったー。教えてくれるんだ。うれしい。」
そういって、ソフィーは俺の脚に抱きついた。そうか、この子もこんなに大きくなったのか…。俺はあの時何も知らなかったらな。そういって昔を思い出していた。
「どうしたの?」
彼女が心配して俺の目を見てくる。
「いや、なんでもないさ。それより、君に紹介しなくてはならない人がいるようだ。」
「えっ?お友達?」
「う~ん、仲間かな…。」
「仲間?何それ?」
この子はどういう理解をしているのか?