赤眼のレリク 第71話
「親父、このままじゃ、話すこともできない。あの術を使うぞ。」
親父は首を縦に振った。
「息子よ。うまくいったようだな。」
「あああ、そうだな。」
「そもそも、これは親父の能力だろ?」
「ハハッ、違いないな。」
俺たちは真っ白な空間で話をしていた。
「この術は俺たちの一族特有の能力だ。一生に一回しか使うことはできない。」
「そうだったのか…。じゃあ、俺はもう使うことはできないな。」
「そうだな。一回は一回だ。そんなにうまくはいかないだろう。しかし、貴重な時間を持つことができた。」
「まあ、それはいいよ。俺には息子もできてないし、おそらく作る前に死ぬだろうからな。」
「お前にはすまないと思っている。」
そういって、親父は頭を下げた。
「戦場でのことか?あれならお互い様だ。」
「いや、違う。」
彼はなにやら言いにくそうな顔をしている。
「どうした?あんたらしくもない。話があるなら話してくれ。俺にも整理する時間がいる。それにアクアもあの状態ではもう、どうにもならないだろう…。」
「そうだな。さて、どこから話したものか…。これは後世に残すべきではない部分の歴史だ。」
そういって話し始めた親父の話は途方もないものだった。
「そんな、ことがありうるのか?」
「ああ、これは事実だ。」
その瞬間、白い空間に黒いものが見え始めた。
白い空間が徐々に崩れていく。
「時間が来たようだな。お前には受け入れがたい話かもしれない。伝えようと伝えまいとそれはお前の自由だ。しかし、これだけは言わなくてはならん。」
「何だ?」
「これから、時代は変わる。それぐらい、お前の肌身が感じているはずだ。」
……
「お前が残せるものは何かを考えろ。それがすべてを変える。」
俺は親父の顔を見た。
「お前にこんな運命を与えてしまって、申し訳ないと思っている。」
「それは親父が謝ることではないだろう?」
「だな、しかし、俺はその運命を知りながら止めることができなかった。俺の親父もな…。」
……
「お前は俺とは違う。力もあり、痛み、そして、守るべきものが何かを見つけて、それを大事に思ってきた。」
ズズズズ
いよいよ本格的に空間が壊れ始めた…。
「ロスを頼んだ。あいつは何かを持っている。」
「そうだな。あいつには何かを感じるよ。」
本当にそれだけは否定できない。あいつは本当に変わった奴だ。
「息子よ。絶対に世界は変わるぞ。俺はお前を信じている。」
そういって、俺たちは現実の世界へと戻っていった。
「親父…。」
俺はそういって、彼の眼を閉じてあげた…。