赤眼のレリク 第66話
~アンガス視点~
敵わなかったか…。
「どういう術かは知らないが、私をここまでさせるとはなかなかやる。」
彼女の周りには黒いものが渦巻いている。どうやら、あれは彼女の特殊能力とは思えない。だとしたら、俺はとんでもない奴を敵にしてしまったということだ。あのレリクでも、対抗できるかどうか…。
「瞬身」
俺は腕にあるマラリスを握りながら、そう唱えた。これが最後の戦いだ。俺の…。この技は音速に近いスピードを出す。このマラリスの特殊能力だ。しかし、それには代償が伴う。
ヒュン
一瞬で彼女の距離を縮める。俺は彼女の胴を切った。
「早いわね。この私がスピードで負けるなんて…。」
彼女は血を吹きながら、倒れていった。これですべて終わった。
ビキベキベキベキ
「ぐあああ。」
体のあらゆる骨がさっきのスピードに耐えることができなく、無残にも折れていく。
「ごほっ、ごほっ。」
俺も口から鉄の味がした、液体を吐き出した。思った以上に体への負荷が大きかったらしい。これは先祖代々伝わるマラリスだ。ある程度、覚悟していたが、ここまでとは…。
しかし、俺が彼女のほうを向いたとき、彼女の姿はなかった。
「危なかったわよ。さすがにあの技を食らっていたら、私といえども死んでいたでしょう。」
俺は体を動かそうとしたが、うまく動かない。
「死ね。」
彼女の手から黒いものが見えた。
あの術は…。まさか、ここまで…。強くなったのか?
これを息子に伝えなくては…。
「何しようともう遅い。」
体よ。持ってくれ。
「瞬身」
俺は彼女の放たれた術をよけようと後ろに向かって、マラリスの特殊能力を使った。
ズゴゴゴゴ
衝撃が後ろまで迫ってくる。
間に合え。
そして、俺は吹き飛ばされた。
……。
「よく避けきれたわね。でも、もうここまでね。」
もう、意識を保っているだけで精一杯だ。それを支えているのは意外にも体から発する痛みのおかげだった。
「雷鳴」
そのとき、遠くからテディーの声がした。