赤眼のレリク 第55話
~旧首都ウルゲイ 噴水広場~
私が広場についたころには町はところどころ破壊され、民が逃げ惑っていた。反撃するものもいるが、バハムートの鱗は硬く、半端な術でははじき返される。唯一、剣などの打撃には弱い傾向にあるが、それでも空を飛んでいるものに当てるのは難しい。それに近づいてくることすらないかもしれない。
「集まったのはこれだけか。」
見事に整列している。ほとんどが年配の人たちだ。物心ついたころから、ここを守っているものもいるだろうし、初めてここに配属されて住み慣れて離れないものもいる。それに傭兵もいるようだ。どうやら、ここ以外に帰る場所のないものたちだろう。人数は1000人。勝てる可能性はそれでも少ない。しかし、やらないよりはましだ。
「みんな、見てのとおり、町は混乱を極めている。ここの広場には結界が張られているが、長くは持たない。それに、今の私たちではおそらく足止めすらまともにできないかもしれない。しかし、私はそれ以上に命を守りたい。傷つけた者を許すことはできない。私たちでここを守ろう。その勇気がきっと、今、逃げている人たちを変えてくれる。」
「はっ。」
いい返事だ。そして、いい表情。これなら、もう少し粘れそうだな。
ギオオオオオオ
どうやら、時間がないようだな。
「打撃が得意なものと術が得意なものと分かれてくれ。それから作戦を伝える。木の術ができるものは私の援護を頼む。」
数十人の人たちが出てきた。
「行くぞ。封印術を私が行う。範囲はバハムートの翼だ。私がやったら、その膜に術エネルギーを付与してくれ。」
「部分木化」
バハムートには直接は効かないが、しかし、左翼がうまく動かなくては落ちるしかない。
一瞬、バハムートがふらついた。
「よし。全員集まったか?」
「はっ。」
「今から作戦を伝える。」