赤眼のレリク 第41話
~旧首都ウルゲイ某所 その近辺~
ここら辺につれてこられていたのか。あの時は少し三半規管がやられていたから、わからなかったが、どうもかなりいいところだ。手を出すには躊躇するだろう。アクアもこの町全体を巻き込む必要はないと思っているに違いない。
「レリクさん。どうしてですか?」
「何がだ?」
俺には質問の意図がまったくわからなかった。
「とぼけないで下さい。最後の情報です。あれはいったい何だったのですか?レリクさんはわかったみたいですが、僕にはさっぱりわかりません。」
「ここでは少しまずい。宿に行って話そう。」
俺たちは足早に宿に向かって歩いていった。
~宿にて~
「分かってやれ。国を股にかけているということだ。」
「他の国に行ったかもしれないと?」
「そうだ。それだけならいいがな。そうではないから最後まで話せないということだ。」
「しかし…。」
「準備をして向かうぞ。」
「断末の谷にですか?」
「ああ。行くぞ。しらみつぶしに行かないともう方法はない。少しの情報を信じるほかない。それにウルゲイがここを守っているのは別の理由がある。それはお前にもわかるはずだぞ。襲撃されてまで奴がここにとどまっている理由は何だ?」
「ここをアクアが襲撃するかもしれない。ということですか?」
「そういうことだ。しかし、彼女が襲撃したとなれば、甚大な被害が及ぶ。それを上はかなり軽視していると見て間違いないだろう。俺の能力も把握していないに違いない。」
「そうだとしたら、急がなくては…。」
「しかし、ここから断末の谷まではかなり時間を食う。その間にここが襲われる可能性も否定できないだろう。しかし、ウルゲイにとってはひとつでも選択肢を削除したいらしい。」
「削除?」
「そうだ。相手の目的をはっきりさせる必要があるということだ。しかし、どこまで信用できる情報かは分からない。」
実際そうなのだ。この近くにいるものでさえ彼女のことを知らない。この国で起きていることを知っているし、鉱山が爆破されているのも知っているのに彼女を見てないし、空には何も映らなかったみたいなのだ。あそこまででかい鳥が通ったら普通は気づくはず。アクアは少し違うような気がする。もしかしたらここに来ていなかったのかもしれないと俺は思っている。だからこそ、ウルゲイは後者の情報を俺たちに与えなかった。しかし、あの断末の谷に誰かがいるのは確かなのだ。そこにいる人が奴を狙い、何かを企んでいる、それを阻止してくれということだ。その人がもしかしたら彼女との何らかのつながりを持っているのかもしれない。あくまで推測にすぎないが、それが一番論理的で、状況を見た形であると俺は思った。
「従いますよ。しかし、彼女がいる可能性は低いってことには変わりないと思いますよ。それでも行くのですか?」
「相手に貸しを作るのも悪くないだろ?今後の展開を考えたら。」
「………。」
こいつはあいつのことをよく知っている。それが彼を行くように誘ってくれるはずだ。
「そうですね。しかし、他の国に何かしたときはどうします?」
「断末の谷に行くまでかなりかかる。俺たちが帰ってくる頃には終わっているだろ。」
ここから歩いても2週間はかかる。そういう道のりだ。そこまで行くのにかなりの数が命を落としている。テディーも途中までしか行くことができなかったらしい。かなりの道程だ。それにしても、ここに住むというのはどうなのだろうか?バハムートとか出たりしてな。まさか、そんなことはないか。
「何か、嫌な予感がしますね。」
「そうか?俺は楽しみだな。」
「そうですか…。あなたは変わっていますね。怖くないのですか?」
「怖いか…。あいつに刃を向けられた時には本当に怖かった。死ぬかもしれないではなく、裏切られたことが怖かった。だが、今はもう何ともなくなった。」
「なぜ?」
「人を信用しなければいい話だからな。お前も経験があるだろう?」
「ええ、肝に銘じときます。」
「いい心がけだ。今日は準備を各自で行うことにしよう。じゃあ、また明日な。」
そういって俺は部屋を出て行った。俺には今日中にやっておくことがある。