赤眼のレリク 第39話
~宿にて~
「あの…。」
「俺に聞くな。」
ただいま、拘束されている。さすがに風呂に眠り薬を直接まくという荒行をしてくるとはこっちも思わなかった。しかも、いつもなら別々に入っていたのだが、今日に限って帰宅時間が同じなってしまったため、一緒に入ることにしていたのだった。しかも露天風呂に…。
ギルドに聞かれたらそう報告するだろう。なぜかわからないが、どうやら、少し複雑な術になっている縄を使っているらしい。少しの術ではまったく解けそうにない。
しかし、なぜ、ここまでして俺たちを拘束する必要があるのだろうか?普通の人だったら、永遠の眠りについてもおかしくない量を撒かれていた。
ギルドからの情報でもこんなことは一切なかったように思う。初めて会うにしてはあまりに失礼だ。いかに俺たちが傭兵だと言っても武器を携帯していないのであれば、ボディーガードをつけるぐらいにするのが妥当の線だろう。しかも、俺たちの噂はここにもちゃんと流れていた。有名なのだから足がつきやすい。そう考えてもこれはやりすぎだ。
反対に、もしかしたらと思うことはある。警戒心が強いということはここにアクアみたいな荒くれ者が来たということも考えられる。悪いほうに考えるとこれから襲撃されるということにもなるが…。
~旧首都ウルゲイ某所~
ここの家はそんなに広くない。どちらかというと庶民的では裕福だが、首都の貴族みたいに豪華だとは思わない。飾りものは少ない。壁や床も決して高いものではない。むしろ安いぐらいだ。それでもここが高い理由は立地がいいということだけだ。役所や商店、鍛冶屋などいろんなものが集まっている。本当にここにトップが住んでいるという家なのか心配になってきた。何のためにここにつれてこられたのかよくわからないのが、気になる。大体ここではそんなに長く滞在していないし、恨みを買うことも少なかったはずだ。
「おい、立て。」
俺たちをここまで連れてきたリーダーがそういう。
しかし、何かどこかで見たことあるような体格だ。
「いつになったら解放してくれるのかな?そろそろ手首が痛い。」
どうやら、かなり縛りを強くしていたらしく、手が鬱血している。
「そういうわけにはいかん。話が終わるまでこのままでいてもらう。」
話?そんな友好的な感じではないと思うが…。
「メンドクサイ。普通ならこんなことせずに話し合いが行われるはずだが?」
「レリクさん…。言いすぎです。」
「お前。うるさいぞ。だまってついて来い。状況が逼迫しているから普通にあうわけにはいかないのだ。」
「ここまでするぐらいなら、断われよ。こっちたいしても失礼だぞ。しかも、何の説明もなく…。どういうことか、説明してもらおうか?それとも、俺がここで暴れてみてやろうか?もう薬はとっくに切れている。」
こっちだって、やられっぱなしはつまらない。しかも、こういう薬には俺はあまり強くはないため、自分自身に術をかけて薬を徐々になくすようにしている。水系統が使えない俺はこうするしか方法がないのだ。ロスは俺よりも先に解けている。
「しょ、しょうがないだろ。状況が少し悪いのだから。」
「その状況というものを教えてほしいのですが?僕たちは正直に言って、それほど状況が逼迫しているとは思わないのですが?」
「それはウルゲイ様が話してくださるはずだ。お前たちは聞いていればよい。」
ウルゲイ?誰だ、それは?
それを聞いてロスは黙ってしまった。苦虫を潰してしまったような顔をしている。
「ロス。お前は何か知っているのか?ウルゲイとはいったい誰だ?」
「レリクさんは会ったことがあるはずですよ。僕は敵といったほうがいいかもしれませんが…しかし、今回はそうもいかないだろうと思います。」
「どうして、そういいきれる?」
ロスの仇…。大体想像はつくが、いったい何のために国が関与してくるのかが、わからない、しかも、俺が知っている人物だということがますますわからない。
どっちにしろ。何か釈然としない。どういう状況にしろ、俺が好きな状況ではないことは確かだ。
~旧首都ウルゲイ某所 廊下~
俺たちは立たされて、長い廊下を歩いていた。初めは小さな家かと思ったがそうでもないらしい。これは長屋のようだ。二階がまったくない。こういう施設は軍の施設によく見られる。それは術が普及してから、高い建物ではお偉いさんが術師に狙われることが多くなったからだ。それに、台風など気候が厳しいところには多く見られる。
「ここがウルゲイ様の部屋だ。くれぐれも失礼のないように。」
そのウルゲイというのが誰か俺は気になってしょうがないのだよ…。
そう思っていたら、腕を縛っていた縄が解かれた。
俺たちを解放しても大丈夫だということか?
どちらにしても俺たちの強さを知っているやつにしては緊張感が足りないやつらしい。
これはおしおきが必要だな。
「俺たちは散々失礼なことやられたような気がするが?」
「そんなことを言ってたら首が飛ぶぞ。気をつけろよ。」
その言葉に若干、焦りが見えるはなぜなのか?
「はい。すみません。早くいきましょう。レリクさん。」
「ああ。あとで覚えておけよ、ロス。」
「それは今から会う人に言ってほしいものです。」
少し重たそうな扉が開かれた。