赤眼のレリク 第38話
~レリク視点~
「こいつは強いみたいだな。」
ザザアッ。
俺の横にロスが来た。
「もう少し手加減してくださいよ。僕でなければ避けきれなかったかもしれませんよ。」
「お前だったら大丈夫だと思った。それよりも見てみろ。」
あいつはどうもダメージを与えると分裂してしまうようだ。現に今は同じ姿をしたモンスターが3体となっている。
「何らかの特性でしょうか?」
「さあ、しかし、氷を使うやつはたいていは炎、もしくは雷が弱い傾向にある。今回は二人でやろう。問題はどうやってダメージを与え続けるかだな。」
「ダメージ量にも限界があるのですか?」
「この世に完全な術などない。どっかに穴がある。今の間に少し見ていたが、こいつは分かれるときに時間がかかっている。どうやら、その間は霊体化が強くなっている。」
「なるほど。その間に攻撃するということですね。しかし、何で、あの時攻撃しなかったのですか?」
「「「ぐばああああ。」」」
また、あの術を使うようだ。しかし、今回は3体ということもあって、射程が広いようだ。
しかし、この俺の何回も同じ術が通用すると思うなよ。
「炎渦」
俺たちの周りを炎の渦が守ってくれる。壁は徐々に溶けていく。高濃度の炎だ。そこらへんの炎とは違う。青い炎だ。
「いきます。」
「雷風船」
これはいったい、どういう技だ。
小さい雷が3体のモンスターの前にふわふわと浮かんでいく。
と思ったら、それがいきなり膨らみ3体を飲み込んでいった。
「まあ、よくやった。」
「緑化」
木系統特有の封印術だ。とはいっても相手の行動を防ぐだけだ。氷もとまったようだ。
「ロス。」
「はい。」
あいつが走っていって木となっているやつらを破壊した。
バサッ、ドサドサドサ
やつらが崩れていく。
「どうやら倒したようですね…。」
それを言ったとたん、ロスの上体がぶれた。
あの術はかなりエネルギーを必要としたらしい。
「大丈夫か?」
「ええ。少し使いすぎたようです。」
「よくやった。あいつは少し強かったようだ。」
俺はロスの体を支えながら、ダンジョンを進んでいった。
~二日後、宿にて~
「こんなにたくさんあるとは思いませんでした。」
「俺もだ。」
ロスの体を休めるために丸1日かかったが、俺はあいつが寝ている間にここら辺のダンジョンについて少し調べていた。しかし、それを調べていくにつれて、俺の顔は徐々に険しくなっていった。
数がなんと100を越えていたのだ。どういうわけか、ここウルゲイではモンスターも出現することがあるらしく、それを自警団や臨時に傭兵を雇って防いでいるとのことだった。
「こんな町もあるのですね。」
「ああ。俺も話には聞いていたが、こういう町は初めてだ。」
町によっては、モンスターが現れたり、住み着いたりすると言うことを人づてには聞いていたが、ここもそういうことになっていようとは思わなかった。
しかし、ここ最近は急にそれが出現しなくなったらしい。
町の人は喜んでいるかもしれないが…。俺たちにとってはあまりいい事態とは言うことができない。
「弱ったな。こんなにダンジョンがあるとは思わなかった。しかも、ギルドの奴だから、まだ隠されているようなダンジョンもあるだろうな。」
ギルドは確かに仕事を斡旋するのが主な仕事だが、危険すぎるダンジョンを探索させないのも仕事の一つだ。危険な所にはよい宝が眠っていることが多いが、その分危険を伴う。よっぽどの緊急事態でない限り、危険度が高い所にはあまり行かせないようにしている。ただでさえ、傭兵や冒険者は好き勝手に国を超えたり、または戻ってきたりするので、数が安定しないのだ。特に冒険者はその傾向が強い。反対に傭兵は一時的に仕事で滞在するようなことが多々ある。違う国で戦争がはじまったりするとそちらに流れてしまう。傭兵は冒険者と違って死ぬことが多いのも数が安定しない理由の1つだ。
「ギルドは教えてくれないでしょうね。」
「そうだな。俺があんなことやってしまったからな。あまり詳しいことも聞けないだろうし、教えてもくれないだろう。裏ギルドに頼むか、地道に見つけるか…。それよりもモンスターが出現しないという現象が少し気になる。ここ最近ではあまりないことみたいだからな。」
「そうですね。しかし、少し小耳に挟んだことがあるのですが?」
「何だ?」
「ここの自治を任されているものから聞けばいいというのを聞きました。どうやらここは国から統治を委任されているところらしく…。」
「確かにそれは正論だが、教えてはくれないだろうし、そもそも会うこともできないだろう?」
「しかし、試してみる価値はありませんか?裏ギルドみたいに殺しみたいなことを頼まれたりすることは少ないでしょうし、両方とも通じているのはウルゲイのトップですから。」
「まあ、そうしてみるか。やるだけやってみよう。それから考えても悪くはない。でも、同時にモンスターのことについても調べてみることにしよう。どうしてもやはり気になる。」
「そうですね。僕もそれがいいと思います。どうも嫌な感じがします。」
ということで俺たちは予約をしてみることにしたのだった。それと同時にモンスターの調査も進めることにした。