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デビル・ジュエリー  作者: かかと
赤眼のレリク篇
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赤眼のレリク 第36話

~ウルゲイ近郊ダンジョンにて~


「行くぞ。」

「はい。」


それにしてもあの任務以降、俺にとってはダンジョンが楽になった。それはダンジョン内が明るくなったことだ。いったい何の影響かわからないが、こちらにとってはよい要因として働いているのは確かだ。それにモンスターも目視できる点ではかなりよくなった。無駄な心配をしなくてよいのは本当に楽だ。


「しかし、何でしょう。今までとは何か違う感じがしませんか?」

「ああ。もしかしたら、もしかするかもしれない。」

「ギルドは気づいているでしょうか?」

「もう気づいているだろう。難易度はかなり上がったな。」


あの時からだろう。何らかの影響で入るたびにダンジョンが変わっている。しかも、そのグループ以外の者は違うルートをたどるようになっている。くまなく探せば、鉢合わせということもあるかもしないが同じ時期にそして同じ時間に入ることは少ない。だから、ダンジョンの難易度が変化しているのだ。同じダンジョン内に入ることができない状況では救出することができなくなった今、致死率が格段に上がってしまった。これから入念な装備と仲間の存在は必要不可欠だろう。そもそも、それが普通なのだが、ベテランは違っていたが、それも例外ではなくなる。


「ギルドもここからは慎重にならざるを得ませんね。」

「ああ。それよりもすぐに動けるかどうかわからないな。もう少ししたら一時的に任務を止めるだろう。その時、裏ギルドがどうなるかを見てないといけないだろうな。」

「ええ。正規の依頼ができないときには裏が横行しますからね。十分に注意が必要ですね。」

「反対に考えれば、その分裏ギルドの値も上がる。そうすれば、アクアも食いついてくるだろう。いつまで自分の能力を鍛えるだけじゃ食っていけないからな。」

「…。」

「どうした?」

「いえ、何か大きく世界が動いているなと思いまして…。」

「そうか…。お前もそう感じたか。」

「まるで、2年前の時みたいに。」

「ああ。そうだな。戦争が始まって、国が大きく動いてしまったからな。」

「今回は…。」

「そうだ。俺たちの番だ。それに伴って国も大きく動く。稼ぎ時だな。」

「僕らにとっては…。」

「いい狩り時であり、稼ぎ時だ。」



俺たちは脚を進めた。





探索し始めて1時間が経った。今回は遺跡なので足場が悪いことはない。しっかりしている分、罠があることも多い。特に多いのはアンデット系のモンスターだ。特に突然変異型の幽霊は非常に厄介だ。あくまで、術が苦手な奴らだということになるが…。


「レリクさん、手伝ってはくれないのですか?」

「ああ。頑張れ。それに俺が手伝ってしまっては修行の意味がないだろう?」

「これは修行というのですか?」

「そうなるな。俺にとってはだが…。」

「それは無茶ですよ。普通の人には…。しかもここは遺跡ですよ。アンデット系が目視できることぐらいあなたが知らないわけがないでしょう。」

「もちろん知っているさ。だから、ここのダンジョンに入った。」

「少しは話ぐらいしてくださいよ。それなりの準備ぐらいしてきたのに…。」

「それじゃ、ますます修行の意味がないな。」


術は応用の仕方で威力が変わってくる。またその分攻撃種類も豊富で多彩な技が期待できる。しかし、剣のみのパターンや剣に術を付与して戦うのが得意な奴らはひたすらに修業をするしかない。それはロスにも当てはまる。こいつは顔に似合わず、剣を主体とした攻撃パターンを考えている。この状況では確実にロスは足手まといになる。第一、アクアの術を防げないだろうことが分かっている。実践では俺がそれを援護し、ロスが剣で術を集中させないようにして、体力勝負をかける。これがおそらく一番いい形だろう。だが、あいつは俺にも勝てないほどに弱い。このままじゃ、アクアに殺されてしまうことは明確だ。ということであいつのレベルを上げようと実践で鍛えている。ロスは数多くいるモンスターの中でもアンデット系のモンスターは苦手としている。特に人型ではなく、霊魂のパターンだが…。人型の場合、たとえ倒せなくても、足や手などを攻撃し、破壊することによって、機動力や攻撃力を下げることができる。しかし、霊魂のモンスターとなると剣に術を付与しただけでは倒すことはできず、時間がかかってしまう。しかも、やつらは術を中心にして攻めてくることが多いので、ロスにはかなり負担になっているはずだ。


とはいえ、俺が教えることはもうないだろう。彼のレベルまで行くとあとは自分で技を磨く以外に方法はない。切り方や防ぎ方、力の入れ方、フェイント。これらの使い方がもっとうまく使えればあいつは今よりももっと強くなるだろう。俺はそう確信していた。あとは俺の術をあいつにかけることでの身体能力を上げることであいつには対抗できるはずだ。だからこそ、こういう経験が生きてくるはずだ。しかし、今回のモンスターは手強そうだ。



「レリクさん術エネルギーが切れそうです。手伝ってください。」

「分かったよ。」


アンデットは光に弱い。こんなのは常識中の常識。

だが、光系統を持つものは本当にわずかしかいない。闇はおそらく人類ではいないだろう。


「ライト」


広範囲にわたって、ダンジョン内とは違った力を持った光が当てられる。


「ありがとうございます。」


厳密にいえば、普通の光では全く意味がないのだ。モンスターは普通の光では倒すことはもちろんできない。だからこそ、術の光のじゃないと効果がない。その証拠にアンデットは光がないと動かないのだから。しかも、アンデットは食事をしない。どうやって動いているのかはわからないが…。光がなくては動かなかったのだが、こういった状況になったのでアンデットが平気で動くようになってしまった。罠が分かりやすくなったのはいいことかもしれないが、こうもアンデットが動きまわると結構メンドクサイ。


「終わったな。」

「ええ。どうでしたか?」

「まだまだだ。できればあれぐらいは楽に倒せるようになりたい。アクアにはとても対抗できそうにない。」

「そうですね。頑張ります。」





結局、そのダンジョンには何もなかった。そんな気はしていたけど少し落ち込む。1つのダンジョンに少なくとも丸一日はかかってしまう。それが無駄だったと思うと何だかやるせない。今の状況では当たる確立も確かに少ないのは事実かもしれないが…。


「レリクさん、埒が明きませんよ。これじゃあ…。」

「分かってるよ。これからどうしようかと考えているところだ。」


ダンジョン自体が変わってしまう今はアクアに会うことは不可能だと考えていい。しかし、ロスの経験は確実にあがっていくはずだ。それにしても…


「どうかしたんですか?鞄の中を探して…。」

「いや、なんでもない。どうだ?少しは慣れてきたか?」


少しありきたりなかわし方だったかもしれないが、ロスは俺の性格を把握してくれているようだ。


「ええ、少しは。しかし、ここまでアンデットに苦手な相性とは思っていませんでした。さすがによく知っていますね。」

「そんなことはないさ。無駄に多く、任務をこなしてきただけだ。」


実際、ロスはかなりやるほうだと思う。普通の傭兵ではまずここまで一人で来ることはできないだろう。しかし、このダンジョンは少し広いようだ。前に進んでも抜けることがない。


こういう形態になってからは、ダンジョンを抜けるといったほうがいいような形態になっている。もちろん、分かれ道があるし、迷宮のように迷うこともあるだろうが、正しい道を通っていけば確実に抜けることができる。


「どうやら来たようだな。」

「えっ?」


後ろに3メートルはあろうモンスターが出てきた。あの出現の仕方からするにおそらくアンデットだ。


「最後の試練だぞ。ロス。」

「マジですか。レリクさん。あんな気持ち悪いの、相手になんかできませんよ…。」

「泣き事いうな。さっさといって来い。こいつを倒したら休憩だ。」

「いや、おそらく、ダンジョン自体を抜けることになりますよ。絶対に…。」


さて、こいつがどう挑むのか見てみよう。


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