赤眼のレリク 第34話
~旧首都ウルゲイ~
俺が思っていたような感じの町ではなかった。実際に衛兵も立っていてマークカードを確認された。表面上は活気にあふれているように見える。しかし、なんというか困難を乗り越えたからか彼らには普通の違った雰囲気を感じてしまう。俺はこの感じが大好きだ。目にあふれるほど元気なさま。目に籠った不屈の心。俺はそれを手にするために多くのものを失った。それにそのことに気が付くために多くの時間を費やした。たぶん、この人たちも昔の経験を生かしているだけだが、それがどんなに重要か分かっている。家の造りも地震、マグマや火山灰にも備えられるように何らかの術か何かで補強をしている。生きるための知恵が満載だ。ぜひ他の国民も真似してもらいたいものだ。
「活気がある街ですね。」
ロスも同じ意見のようだ。
「ああ。いい街だ。」
「さて、ここからは個人行動にしますか?顔も割れているでしょうし、おそらく僕たちのうわさは広がっていますよ。レリクさんは一人で行動する人だから。」
「いや、ここには知り合いがいないだろう。そう考えれば2人が一緒にいたほうがいい。それにうわさが広がっているなら対応もとりやすい。大体、一人で行動していても討ち取れないようなやつが、二人で行動していると知ったら、まず襲っては来ない。俺の性格はある程度知られているから、仲間もやるときにはやることを知っているだろう。それにあの情報が本当だったら、まずい。アクアに闇討ちされたなんてことになっら、俺はともかく、お前一人では1人では対応しづらい。とりあえず、1週間は様子を見よう。行動はそれからのほうが絶対にいい。」
「そうですね。焦る必要はないのかもしれません。ここら辺は治安が悪いことで有名ですし…。」
「おい、お前気がつかないのか?」
「えっ?何にです?」
「お前、よくそんなことで傭兵をやってこれたな…。」
ここには全くと言っていいほど殺気が感じられない。しかし、治安が悪い所にはたいてい殺気があったりするものだ。たとえば、余所者が来たときはどんな奴か尾行するとか等、やることはうまくやらないと足がついてしまう。それに情報屋が要る限り、よそ者関しては何かしら監視が付くことが多い。特にこういった町では…。
このような場所に住居を構えているなら、だいたいは傭兵や冒険者から盗む。取られても文句が言えないような悪いことをした奴もいるのだ。仮に俺たちがここで有名であったとしても、ある程度のことをするはずだ。つける奴がいてもおかしくない。もしかしたらここにアクアはいたのかもしれない。
彼女ならば、監視などつけなくても俺ぐらい見分けるのは十分にたやすいことだ。
「アクアがいそうですか?」
「いたかもしれないな。あいつは目立ちたくないときは犯罪者を狙って金を巻き上げたりしていた。それに裏のリストに載っているような悪い奴を殺したりして金を稼いでいる。ここはきれいに浄化されているように見える。ということはあらかたの横暴者は殺されたと考えてもおかしくはない。この街にいた可能性は高い。これはもう出してもいいだろう。」
そういっておれは槍にまいている布を取った。
この槍は確かに性能がいいが、その分目立ってしまう。俺だってすぐわかってしまっては意味がない。
「出したら余計に目立ってしまいますよ。」
「今回に限っては目立ったほうがいいのかもしれない。もう、ばれているならそれなりに俺たちも動くようになる。」
「しかし、ですね…。私にも心構えというものが必要ですが…。」
「あの事件を起こしたやつがか?それは虫が良すぎるぞ。お前。」
「それもご存知でしたか…。なかなかに精通していますね。軍に…。」
「俺の親父は軍のナンバー3まで入ったんだぞ。俺が軍のことを理解していないわけないだろう。」
「まあ、そうなんでしょうがね…。普通の人はそこまで知っていないと思いますがね。」
「話を戻そう。罠にはまっている可能性もないわけではない。気を引き締めろ。」
「そうですね。確かに、ここに誘い込まれたのかもしれないですね。」
彼女は確かにS級の犯罪者として名が通っている。もちろん、ギルドにもその情報は載っている。しかし、彼女はその分、多くの犯罪者や政治家などを秘密裏に消している。それは世の中に出回らないような犯罪をしているものの始末だ。それには確実に裏ギルドがかかわっている。もし、そうであるならば、彼女の姿を消すごとぐらいはできるだろう。
「しかし、いくら犯罪者を捕まえたからと言ってお金を払いますか?犯罪者に払う金なんてないとでも言われそうですが…。」
「裏ギルドの奴らが倒せないような奴を倒すんだ。もし、拒否したらどうなるかなんてお前も想像つくだろう?」
「まあ、そうですね。」
「可能性としてはここにいる可能性は大きい。しかし、ここは思ったよりも町が発展していて、俺の生態探査では処理しきれない。彼女とは違って、俺は数の把握しかできないからな。彼女はそれを上回って、一人ひとりの性質を見分けることができるようだ。だがら、気は抜くな。いつでも剣を抜けるようにしておけ。」
「はい。」
こういった時の顔は凄く強そうな傭兵に見えるのだけどな。ロスには悪いが、俺はそう思ってしまった。
あれから10日経った。俺たちは今、ダンジョンに潜っている。ダンジョンの任務を受けることしたためだ。それは3日前に遡る。