赤眼のレリク 第32話
~首都メラル~
~一週間後~
あれから1週間が経った。いい情報も入らなかった。こういうのは時間が解決することが多い。情報がなくても情報を集めることが重要なのだ。いずれ情報屋のような人たちが売ってくるだろう情報。それが頼みの綱になってくる。いい情報は高いのだ。それに今回はこの世界にいる人が巻き込まれるかもしれない大戦争だ。いつかは情報が来る。
ということで俺は今日も雑務の仕事を受けていた。もちろん昼つきの比較的体力仕事だ。ちなみに仕事の内容はどこかの富豪の模様替えの手伝いだ。広いために使用人だけではできないらしい。できないなら、こんな家作らなければいいのにと思ってしまう。ロスは解体工事のほうを手伝っている。解体仕事は術に頼ることが多く、比較的受けやすい任務だ。まあ、あいつはハンマーで解体をするタイプだろうが…。顔に似合わず…。それは俺が言えないか…。
「頑張ってるね。こっちのほうもやってくれるかい?」
「何ですか?」
「少し離れた小屋が必要なくなったんだ。そこで解体作業をお願いしたいのだが…。こういった“解体”作業はやる人が少ないからね。皆嫌がるんだ。もちろん、今の料金には上乗せさせてもらう。」
「まあ、誰かがやらないといけませんから…。こっちが終わったらやりますよ。」
「すまないね。あと、明日のことなんだが…。」
「明日?今日で引越しの作業は終わるはずですが…?そんなに大きな小屋なのですか?」
「いや、違う。実は個人的なことで申し訳ないのだが…。」
こういうところが雑務のめんどくさいところだ。
人から人へよい情報は伝わっていく。
~二人の宿の近くの作業場~
今日から俺も解体作業を行っている。しかし、牛の肉の解体作業だが…。これも結構ハードだ。次から次へと牛が回ってくる。それだけ多くの人たちがここに住んでいるということだ。単純作業だし体力は使うが、賄いはおいしく、そして給料もいい。肉も切ったあまりから出たものが出てくる。そんなに新鮮な肉はめったに食べられない。今回は昼飯と夕食がついて一日1000カルト。破格に高い。しかし、ほとんど休憩はない。
「よお、休憩だ。ほらよ。牛乳だ。」
主人から牛乳を手渡された。どうも、前の任務の富豪の執事の友達らしく、俺のことを聞き、ぜひ手伝ってもらいたいということだったようだ。それにしても、あの執事が肉屋と友達とはまったく人間関係はわからないものだ。
それにしても牛乳まで出るとは思わなかった。まあ、ここはそれが売りだからな。俺は牛乳を一気に飲み干した。
「相変わらず豪快だね。ここにきて2日目か。よく頑張っているよ。ここで働いてみないか?君なら、かなり稼げると思うぞ。」
「ありがとうございます。しかし、俺は傭兵ですので、お断りいたします。」
「そうか、残念だ。こっちも爺さんがやめて、若い人がほしいのだがな…。それでお目当ての情報は集まったのか?」
「全く。皆無です。」
「そうか。こればかりは手伝えないからな…。まあ、こっちとしては君がここで働いてくれて助かるのだが…。」
夕食がてら、いろんな客と話をしている。ここは夜、居酒屋としている。もちろん解体場は別の場所にある。しかし、一人で食べるのも寂しいだろうという主人の配慮で居酒屋で賄いをいただいている。それに居酒屋というのはいろんな情報が集まりやすい。誰かとの待ち合わせに使ったりする。ここは居酒屋の中でも一番高い店だ。しかし、ギルドの情報はなかなか変わらない。あまりいい情報が入ってきていないようだ。その分信用できる情報が多いが、もうそれでは足りなくなっている。何でもかんでもいいから情報を渡せといってもなかなか縦に首を振らない。それにしても、まったく情報がないというのは考えにくい。あの大きさの召喚獣に乗って逃げたはずだ。それだったら、一人や二人は姿を見てもおかしくない。なぜ、何も情報が流れてこない?誰かが意図的に止めているのか?
「まあ、気長に待つしかないな。」
「ええ。そうですね」
「さて、そろそろ行くか。お前はもう少し休んでいていいぞ。」
そう言って彼は居酒屋になるだろう部屋へ向かっていった。今日の仕込がまだ終わっていないのだろう。