赤眼のレリク 第26話
俺は外を歩いていた。ここは2年前とあまり変わっていない。人の出入りが少ないここの村は多くの者が狩猟や耕作で暮らしている。自給自足だ。お金を手に入れる手段の多くは木彫りだ。ここの暮らしをしていると遊びがほとんどない。だから皆、木に囲まれているため木を彫るのが趣味になっている。読み書きなんてほとんどの者はできない。よく生活していると思うが、ここにいると時間が止まったような感覚に陥る。俺が住んでいた村に似ているからかもしれないが…。ここにいる暮らしももうすぐ終わるだろう。
「レリク兄ちゃん。帰ってきたんだ?」
「ああ、ただいま。」
ここに住んでいるときに俺になついたソフィーだ。
まだ、5歳だったが、ほかの子供たちとは違って、怖がらずに接してくれた。
「どうしたんだい?そんな荷物もって?」
「絵を描こうと思って。」
「絵?」
「うん。最近、書くようになったんだよ。それをお父さんが木堀にしてくれるの。」
「そうか。君のお父さんは優しいね。」
「うんうん、兄ちゃんに比べたら、全然だよ。」
「はは、そうか。」
「少し遊ぼう?」
「いや…。」
そういうとソフィーは涙を浮かべた。
「私のこと嫌い?」
「ううん。じゃあ、少し遊ぼうか?」
「じゃあ、飯事しよう。」
その大きな荷物はそのための道具か。
どおりで重たそうなはずだ。
俺は少しソフィーと遊ぶことにした。
ここにいると自分が傭兵ということを忘れてしまう。
少しして、何か気配がした。気のせいではないだろう。
そう思って後ろを振り返った。ここら辺では気配を消して近づく者など誰もいない。
「兄ちゃん、誰この人?」
ソフィーが俺の後ろに隠れている。
「ソフィー、先に家に帰っていなさい。」
「うん。」
ソフィーは荷物をまとめて帰っていった。彼女のことだ。何か不穏な空気を感じたのだろう。
「あなたに妹がいましたかね?そこまでは聞いていませんね。」
俺はこいつの言うことを無視していった。
「ロスとか言ったな。お前…。ここまでつけてくるとは思わなかったよ。やるって言うなら相手になるぜ。これでもずいぶんと休んだからな。お前の相手ぐらいはできるつもりだ。ちなみにあの子はただの友達だ。俺の家族ではない。」
「いえ、そういうわけではないのです。テディーさんにここの場所を教えてもらってきたのです。あなたに頼みというか教えてほしいことがありまして…。」
「なんだ?」
「アクアのことで…。そう殺気立たないでください。」
俺は知らず知らずのうちに槍を強く握ってしまっていた。普通はこういったときに武器は持ち歩かないものだが、俺はそれがもう習慣化している。
「いや、すまない。頼みは聞けそうにない。彼女は俺がやるって決めている。それに俺は人とつるむのはあまり好きではないな。正直。」
「そんなことは少し見ていれば分かりますよ。そんなことより、彼女が現れたそうです。」
「……。」
「あなた方の過去に何があったのかは分かりません。しかし、彼女は僕の親友の仇でもあります。自分ひとりで敵うとは思っていません。だからこそ、あなたと共に彼女を止めたいのです。」
「止めたい?「殺したい」の間違いだろう?」
「初めはそう思いました。しかし、しかるべき所で彼女の所業を暴露し、公的に罰することがいいかと思っています。彼女にやられたのは僕の親友だけではありません。他の方も多く亡くなっています。僕だけの問題ではないのです。あと…。」
「あと?」
「あなたは彼女を救うと人伝に聞きました。こういってはなんですが、彼女に寛大な措置をしようとしているのですか?」
「そんなつもりはないが…。」
「それを見張りたいと思います。彼女は捕まえられるような人間ではないのかもしれません。だからこそ、皆のために殺すことも念頭に置いておかなくてはいけません。そのために僕はあなたと一緒に同行させてもらいます。いやというのなら…。」
「そうかい。勝ってにしなと言いたいところだが…。あいにく俺は1人で行動するのが好きなんだ。お前が言ったとおり、それはよくわかっているだろう?」
「では、どうすればいいですが?」
「分かっているだろう?かかってこい。」
ガキイイイン
「簡単に勝てると思わないでくださいよ」
「望むところだ。」