赤眼のレリク 第15話
~レリク視点~
このガキはロスだったか?
よく二人が無事だったな。
「レリク、久しぶり。カッコ良くなったじゃない。それにずいぶん強くなったみたい。」
俺は後ろをチラッと見た。もう生きている奴はいない。見るのも無残な姿になっている。
相変わらずやるのがえげつないな。あれからまったく変わっていないようだ。
「久しぶりだな。もう俺のことなんか、とっくに忘れていると思っていたが…。」
「ふふっ。あなたのことを私が忘れるわけないでしょう?それに前にあったのも2年前よ。そう簡単に忘れないわ。」
「そうか…。お前は強くなったようだ。しかし、今は俺のほうが上だ。その腕輪になっている宝石を渡せ。」
「中身はあのころのままね。そういって、前は負けたよね。しかも、ぼろぼろに。なかなか強かったとは思うけど…。あなたのお父さんもね。」
キィィィン
「話はそこまでだ。お前が投降しないなら最後までやりあうまでだ。今回は必ず捕まえる。」
「う~ん…。頑張ってるね。フィールドを変えて、私とやりあうつもりなんだ。そのマラリスが君に力を与えているみたい。まるで私が持っているダーク・デビルと同じ。マラリスって…。危ないなあ。話を聞いてよ。」
俺は彼女を後ろに下がらせた。
「テディー、立てるか?」
「ああ。」
「ロスはいけるな。」
「はい!」
「今すぐここから離れろ。1週間前の騎士は全員死んでいた。俺がこの先の広場で発見した。二人でダンジョンを出ろ。」
「しかし、レリクさん」
「分かった。風よ。」
「テディーさん!このままじゃ、レリクさんだけで…」
「わからないのか。俺たちがここにしても邪魔なだけだ。俺たちが逃げるのが一番得策だ。それにこの事態を誰かに伝えなくてはならない。二人で逃げたほうが確立が高いだろ。」
「そうですが…。」
「テディーに従え、ロス」
「わかりました。」
テディーの風の術は空気の流れを掴むためのものばかりだ。彼はダンジョン内での索敵の担当だ。彼が一番得意にするのはモンスターの把握と数の調査、そして的確な道をみつけだすことだ。俺の生態探知みたいに正確に図ることはできないし、ある程度内部の構造を知っていないと岩などでも反応してしまう。しかし、今回は通ってきた道だ。彼ならば3分もあればここから出るだろう。
「何か…むかつくなぁ。彼を逃がそうとしているのはよくわかるけど。今回はそれをしたくないのよね。さすがに国までも私が相手にするのはめんどくさいし。それに私がそれをさせると思うわけ?」
俺の予想はそう遠くないようだ。
「めんどくさいのは俺もよく知っているがな。しかし、お前も召喚の使い過ぎで術はあまり使えないだろう?今日ばかりは俺のほうが有利だ。」
「炎雷」
炎を雷のように上から無数に落とす技だ。
アクアの意識が炎に向いた。今だ。
「今のうちに行け」
「分かった。」
「逃がすと思ってんの?」
炎の中からアクアがやけどもなく出てきた。
水を体中に張ってガードしているようだ。
「雷網」
テディーからそう聞こえた。
幅広く網目上に雷を放つ技だ。
「きゃあ。」
「いくぞ。ロス。」
「はい。」
どんなに強い系統でも優劣は確実にある。テディーはその判断能力にすごく優れている。
水系統には雷が強いのは明白だ。
ロスとテディーが走り始めた。
「調子に乗らないでよね。」
さすがに復活が早いようだ。そう簡単にはいかしてはくれないよな。
「水流」
「葉吹雪」
炎では水を防ぐことはできないが、木系統では防ぐことぐらいできる。
水流は水を一直線上に発射する単純な技だ。よく視界を奪ったり、陽動に使ったりする。
しかし、アクアの使う水流はその域をはるかに超える。
俺の使っている葉吹雪は防御中心に使う術だ。ある一定程度の葉を集中的に増やして水系統からの攻撃をはじくことができる。
術もそれに対するエネルギー量によって変化する。これまでの戦いのように術を名前を使って使うのには意味がある。術の区別をはっきりつけるためだ。名前を使わなくては、記憶の中の感覚で行うことになる。それにはかなりの集中力が必要だ。しかし、名前をつけて自分なりに仕分けをしておけば、それを容易にできるようになる。感覚ではなく、体がその名前で術の感覚を覚えているのだ。それに秘密にしていても術エネルギーは感覚が鋭い人ならある程度系統を見抜くことができるので、術を使う限り無意味だ。
「やるわね。レリク。前は火系統だけしか使えなかったのに。」
「俺もそれぐらいの対策は持って戦うさ。無闇に戦うのは俺は好きではないからな。」
「そうね。でも、ここは私の…。フィールドに何かしたわね。」
「もう分かったのか。さすがだな。じゃあ、続きをやろうか…。」
俺は術を完成させるために作戦を実行することにした。