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デビル・ジュエリー  作者: かかと
赤眼のレリク篇
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赤眼のレリク 第10話

~テントの中~


「お前たちはもう下がれ。二人で話がしたい。椅子がそこあるだろう。そこに座れ。レリク。」

「指揮官、しかし…。」

「お前は俺に勝てるのか?」

「……わかりました。外で待機していますので、用事があれば呼んでください。」

「わかった。」


衛兵は残念そうにテントを出て行った。


「久しぶりだな、レリク。あのときの戦争以来だな。」

「あんたも変わりないようだ。もうとっくに死んでいると思っていたがな。」

「俺もそれなりの修羅場をくくってきた。そこらへんのやつにはまだまだ負けん。」



俺の前にいる指揮官は親父の友達らしい。それぐらいしか知らないが一緒に修羅場をいくつもくぐってきたのだろう。俺なんか足元にも及ばないような舌戦を使ってくるだろうが、俺に対して使っても意味がないのかもしれない。ほとんど隠し事はしない主義だから。しかし、彼女との戦いは秘密にしてきたし能力についても秘密にしている。それは彼女から仕掛けるようなことがあまりないからだ。探っていくと意外とその人たちが悪かったりする。どこの国も上の連中はこういうことをしているのはいつものことだ。


「お前に聞きたいことがある。」

「なんだ?」

「ダーク・デビルがここにあるとみている。一般的にはそうは呼ばれていないそうだし伝説になりつつあるが、今出てしまうと少し不味い状況になる。この一つの“人工”マラリスのために戦争を起こすわけにはいかない。それに今となってはその技術も分からない。それを知った上で彼女を追っているのだろう。お前は知りすぎているが、国もなかなか手が出せないでいる。あの戦争の一軒もあるしな。下手にお前をつつきまわして、こちらに被害が及ぶことは避けたいと上は言っている。しかし、上がお前には期待をしているのも確かだ。今この国には彼女に対抗できるような奴はいない。適任はお前しかいないだろう。こちらも君の過去もずいぶんと調べた。あんたの親父さんからも聞いた。其れを考慮した上での判断だ。俺が判断した。上はいまだに彼女を簡単に始末できると思っているらしいが、俺は不可能だと思っている。しかし、俺個人としてはあれは始末すべきものじゃないと思っている。まずは、彼女を確実に死刑へと追い込む材料がほしい。それにあのダーク・デビルさえ手に入れてしまえば、おそらく、いろいろなことがわかってくるだろう。お前は望んでいないかもしれないが、あのマラリスは覚せい剤と同じだ。たとえ手放したとしてもその存在を感じることができるようになり、それを使おうとする。人を殺してでもな。彼女はもう後戻りはできないはずだ。其れはお前がよく知っているはずだと思っていたが?」

「………そんなことをなぜ俺に話す?俺は一度負けた人間だぞ。彼女に確実に勝てる方法なんて存在しない。もし存在しているなら、俺が教えてほしいぐらいだ。」

「お前ぐらいしかあの子に勝てる人なんて存在しない。要するにだ。上の失態を隠すためにもダーク・デビルを手に入れて、彼女を生け捕りにしてほしい。もちろん無理な場合は殺してくれ。これ以上彼女が野放しにされるのは好ましい状況ではない。責任は俺がとろう。君に不幸の根本的なものであるのは我々が行った研究や実験によるものであるのは確かだ。」

「生け捕りにしたら何かが終わるのか?」

「何?」

「生け捕りにしたらダーク・デビルが他の人を魅了しないという保証があるのかと聞いている。あれは人間のわずかな隙間に入ってくるぞ。憎しみや快楽、そういったものはどんな人間にも一つや二つはあるもんだ。それをなくせる人はもう人間とは言えないだろう。俺は早くこの苦しみや憎しみの連鎖を終わらせたいだけだ。」

「それは…神のみぞ知ることだ。確証はどこにもない。俺は最善の策を模索し、君に提示しているだけだ。それができないということになれば、俺もお前をかばうことなんてできしない。もちろん、君のお父さんもな。お前は我々の言うことを聞いてくれさえすればいい。」

「神のみぞ知るだと?作りだしたのはお前たちだろうが。しかも、彼女に持たせたのもお前たちだ。お前たちが壊せなくてあれをどうやって壊すんだ。」

「違う。上の人たちはそんなことは望んでいない。あくまであれを正常な状態に戻すことができる。そう言っているんだ。あれが完成したとしたらどれだけ有効なことになるか分からないのか。そして、いまやこの技術はもうみんな使っている。あらゆるところで…。しかし、ダーク・デビルさせ見つけてしまえば、今、後遺症などで苦しんでいる人たちがもしかしたら治るかもしれない。あの技術が成功すれば、今よりもより人々を襲う山賊からも守ることができる。モンスターにも対抗することができる。もしかしたら、災害なども未然に防ぐことができるかもしれない。私たち人間にとって、有益なことが多いのだ。ここまでの研究の内容では有益な部分が非常に大きいために私たちは止めるわけない。だが、君にこの考えを賛同してもらおうとしているわけではない。ただ協力してもらいたい。それだけだ。テディーも強いが彼では到底及ばないほど彼女は力をつけてきた。そして、君をも凌駕するほどの力を得てしまった。本来、希少であるはずの召喚師としても覚醒してしまい、もはやその力も一流だ。残る選択肢は君だ。君しかいないのだ。協力してくれるね。しなければこちらもしかるべき対応をせざるを得ない。君の親父さんとは友達だし、できれば荒事は避けたい。戦力的にもかなり疲弊するだろうし、こちらとしても君の能力値はかなり曖昧だ。」

「俺は誰とも協力はしない。俺のやりたいようにやらせてもらう。彼女にかなうものがいないのなら、俺にもかなうものがいないということだ。俺のことはだれも止められないよな。そういう意味で捉えさせてもらう。俺は彼女を救いたいだけだ。お前らに実験台として渡す気はさらさらない。そのときは覚悟してもらう。」

「落ち着いてくれ。レリク。ダーク・デビルだけを回収してくれればいい。彼女は一切関係ない。君ならば彼女の衝動を抑えることぐらい力があるはずだ。もちろん、こちらの便宜で計らうこともできる。」

「でも、前みたいに襲撃をするのだろう。弱った人間を殺す手際はかなり上手だよな。まあ、国家の秘密を知ったやつなんて大体ろくな死に方をしないからな。そこらへんはわかっているつもりだ。」

「ご、誤解だ。レリク。あれは手違いだった。そう言っている。上の人だって、別に君を殺そうとして刺客を送ったのではない。」

「だから、下の者は死んでもいいんだな。それがあんたたちの考え方だろ。俺もそう遠くない未来に狙われることになりそうだな。とりあえず、ダーク・デビルの件はこちらで自由にさせてもらう。あんたたちの協力なんて必要はない。」

「レリク。落ち着いてくれ。あれは君一人でどうかできる問題ではない。彼女が問題であって…。」

「その彼女を始末することすら、難しいのだろ。国が関わってしまったら。」

「………。」

「これで話は終わりだな。失礼させてもらう。」


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