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デビル・ジュエリー  作者: かかと
クレオール第2章
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最終話

ナールは久しぶりに気分が高揚している。以前は大きな戦いがあったため鬱憤をそこで発散していた。それからはモンスターと戦いながら発散をしている。この生活は良くないとわかっていながらその生活が続いている。戦いが10年以上前だったため自分も年をとっていると思いつつも自分が違う楽しみに目覚めたと思っている。目の前にいる子供たちに光があたっているのが見える。


「私も年をとったのかもしれないな。長生きをするのは恥だと思っていたが、面白いこともあるものだ。」


 目の前にいる3人を見ていると3人ともに息が上がっている。彼らは自分達の限界値と能力をしっかりと見極めた上にナールの能力もしっかりと見ている。術の能力値では彼ら3人の方が強いことはわかっているが、ナールほどの経験がない上に術の発動が遅くなってしまう。それに術の数が少なく応用ができないのだろう。

 そんなことを考えていると自然と笑みがこぼれてしまう。そして、3人が向かってくる。


「さあ、どうやって潰すかな。」


 ナールは3人には聞こえないように独り言をぼやいていた。



 クレオールは必死に槍をナールに伸ばす。槍はどこまでいっても彼に当たることはないが、限界をとうに越えているはずの自分が槍を離さないでいることにも驚いていた。両腕はすでに重く、思考もまとまらないほどの疲れも感じている。しかし、槍の鋭さは徐々に増してきているように感じる。ラスとソフィーの姿を追えるほどの余裕もなく、2人は俺に合わせてくれているのだろう。突如、槍が下に向かって弾かれる。


「…強かったぞ。」


 クレオールは腹部に激痛を感じて意識を失った。



ラスはクレオールが倒された瞬間にナールへ向かって体を入れ換えようと身を乗り出したが、逆にソフィーを抱きしめるようになってしまった。ラスが抱き締めた瞬間にナールがソフィーを投げ飛ばしたものだと分かった。ラスはすぐに距離をとるが、ナールが追い討ちをかけることはないようだ。ソフィーを立たせるとナールの姿が見えた。彼はクレオールの体をおこし近くの木に横たえる。おそらく戦いに巻き込まないようにするためだろう。


「ナールは意外と優しいのかもね。」

「そうみたいですね。しかし、クレオールがいなくてはナールには勝てないでしょうね。」

「そうね。」


 ラスはナールに向かって走り出す。あの時に戦った相手が思い出される。彼はラスが手を出せないほどの人間だった。人間とは思えないほどの強さ。戦いの記憶は全くなかったが勇気だけが取り柄だったのかもしれない。あのときよりも強くなり実戦も積んだ。目の前の人間は確かに強いが彼よりも強いわけではない。ラスは剣に力を込める。


「…。」


 ナールは急に力が強くなったラスの剣を受けながら少し困惑をした。彼には目立った活躍はないように思わなかったが彼の兄を実際に見ているため単純な数値や報告だけでは納得してはいなかったが、ナールの想像以上に強いことが分かった。ラスはコミュニケーションに難があると聞いていたがそうでもないようだ。


「兄貴にはまだ追い付いていないな。」


 ソフィーの顔は変化がなかったがラスの顔に変化があった。兄貴の最後を考えると仕方ないことかもしれない。ナールはラスの剣を正面から受け止める。やはり兄貴ほどの重さはないようだ。剣が鈍い音を発する。ナールはそこまで力を込めずにラスの剣を押している。


「僕は兄貴を越える人間になろうとしているんだ。」

「…」

「ナール、あなたが何を考えているのかわからないが、クレオールに僕は何か光が見えている。」

「…、今の君じゃもの足らない。」


 ラスの剣がものすごい力で弾き返される。剣が左肩から右腹部にかけて浅く切られる。その瞬間にソフィーが剣を出すが腹部を蹴られてその場にうずくまる。ラスは一瞬、意識が飛びそうになるが、すんでで繋ぎ止める。


「くっ…。」


 ラスはすぐに術を唱える。電気で作った獣が姿を表す。


「…」


 ナールは獣を見た瞬間に剣を振るう。獣はすぐに雨散してしまう。


「くそ、ここまで差があるとは…。」

「君が思っているほどこの世界は甘くない。」


 ナールが手を出したのを見えた時に意識を失った。




「…、一番弱いところはソフィーだろうか。」


 ナールが客観的に分析した感想だった。おそらくソフィーは能力的には低くはない。ただ、反応速度が普通であるため、ラスとクレオールに比べて劣っている。その分、今回の戦いでは術の戦いではなかったため足を引っ張ることになってしまっていた。ただ、最後には近接戦が主となることもありうる。特に戦争時にはその可能性が強くなる。リオ王が即位することも考えられるため、すぐにでも鍛える必要がある。この程度の戦いで疲れていては話にならないが鍛える時間もない。彼らは粗削りだが、今から鍛えれば近接戦はある程度使えるものになる。あとはすぐに経験があれば大丈夫だろう。一騎討ちをしない場合を除けば、一番重要なのは気配を感じることと体力そして経験なのだ。すぐ死んでしまっては意味がないのである程度の技量は必要だ。

 ナールはすぐに気配を感じる。


「どうだ?」

「さあ?ただ、俺よりも才能はあるようです。」

「さて、ここからどうするつもりだ?」

「とりあえず、南にいく。アジトがあると言われている場所ですし。」

「分かった。報告は月に1回は寄越すように。」

「過保護ですね。」

「うるさいな。久々の弟子だからな。」

「話はわかりました。とりあえず、報告はしますが数年は帰ってこれませんよ。」

「心配していない。俺たちも大分苦しめられているからな。お前らが討ち取ったら大金星だ。俺たちも情報が入ったらすぐに伝える。出発はすぐにとも思ったが、この状態ではな。」

「では、明日と言うことで。」

「これから、会議を開く。今回の件に関しては他のマスターがうるさく抗議しているからな。」

「そうですか…。」


 テディーとナールは3人を見ていた。これから起こるであろうめんどくさい会議を聞かなくてよい彼らに少し羨ましく思っていた。


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