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デビル・ジュエリー  作者: かかと
クレオール第2章
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第7話

クレオールは竜を見ていた。その竜は白い竜であり、明らかに成熟している竜である。先程の幼竜とは全く体格も能力さえも違う。竜はクレオールにゆっくりと近づいてくる。俺は竜と面識があるわけでもなく、ましてや変わった能力を持っているわけでもない。


「お前はここに来ている理由をしているのか?」


 クレオールは回りを見渡したが人間はこの空間にはいない。


「普通の反応だ。前々から思っていたことだが、人間はどうも傲慢なところがあるな。竜は基本的に知性があり、意思疏通を図ることができる。声は人間みたいに発達しているわけではないのだから、自然と念力を使っての会話になってしまうが。」

「あなたのいうことは理解はできるが、そもそもモンスターと話ができると聞いていないことがあるのだろうな。」

「そうか、昔は従者というモンスターもいたのだがな。最近は狩られる存在としてしか役割がないのか…。嘆かわしいことだ。」


 クレオールは役割という言葉にひっかかる。確かに人間にもそういった考えを持っている方もいるが、それ以上に竜が言っている意味はおそらく違う。役割というのは倒されることもしくは従者として使えることに意味があったということだろう。


「使役をしているという意味であれば今でも使える人もいる。」

「そういうわけではない。使役というのはあくまで人間が強制的に従わせているだけだ。従者というのはモンスターの意思を尊重している。君が言っていることとは全く違うな。」


 クレオールはやはり納得できない。自由意思でついてくるモンスターなどいない。


「さて、そろそろ時間のようだな。」


 クレオールに向かって光が延びてくる、その先には空間が広がっているように見える。


「そもそも俺をここに呼んだ?なんのために?」

「だいぶん先になるだろうが、分かるときが来る。それにはある男が関係しているはずだ。お前が知る必要はないな。さっさと行け。」


 クレオールは後ろから来る強風に晒されて前に進まざるを得ない。こんな体験をするのは自分だけなんだろうかと自問自答してしまう。クレオールは不思議に感じながらもその場をあとにした。



 一方、テディーは壁に打ち付けられていた。強化の術を使い衝撃を和らげたが体全体に痛みが走る。すぐに術を発動し、生体探査をかける。


「くそ、俺だけで対応するのか。」


テディーは思わず悪態をつく。生体探査をかけたソフィーとラスは無事なのは分かった。ただ、目を覚ます気配はない。おそらく、脳震盪かなにかを起こして気絶しているのだろう。今から起こすことはできるが、現状あの2人にはほとんど術のエネルギーが残っていないために動かない方が彼らのためだ。クレオールは先程の術でエネルギーを使いすぎたのか肩を上下に動かしながら息をしている。回復されたらテディーには勝機がない。


テディーはクレオールに向かっていく。





クレオールは目を開けた。先程とは違いテディーたちのもとへ帰ることができると思っていたが、そうではないらしい。周りを見てみるとには白い風景が広がっており、どこまでも真っ白だった。クレオールも自分の格好を見てみると白いシャツに白いメンパンを履いていた。その上、靴まで白い。これではまるで天使のようだ。


しかし、遠くのほうには黒い風景もあるようだった。その黒い風景が徐々に大きくなっていく。そこには先客がいた。


「よう。元気?」


まるで友達のように話す彼は誰だろうか。クレオールとは対照的だった。すべて黒い。まるで悪魔のようだ。服も黒いが髪の毛も黒いため萎縮してしまう。


「まあ、元気そうだね。」

「はい。体調は大丈夫です。それであなたは誰です?そもそも、ここがどこだか聞いても?」


彼は黒く長い髪を手で払う。気のせいか彼の目が赤いような気がした。


「俺はすべてを破壊する者だ。君の力がほしいのさ。」


その瞬間に頭上から光が見える。圧倒的な力にクレオールは対抗することもできない。しかし、彼の術には悪意を感じなかった。光はやがて格子状になり、クレオールを包む。黒い男はその様子をみてうなずいた。


「ふむ、“あいつ”と同じように選ばれし者か。面白いな。俺を会う日まで死ぬなよ。」


クレオールが質問をする前にその男は消えていた。黒く覆われていた風景も消え、元の白い風景に戻っている。クレオールは意識が覚醒するのを感じた。



クレオールが奇妙な体験をしている頃テディーは防戦一方になっていた。初めは雷系の術で動きを止めるように攻撃をしていたが、身体能力が爆発的に向上している影響か動きを止めてもすぐに反応されてしまう。その上、一度受けた術には対応するようになる。クレオールの暴走は本能で動いているようで、実際には冷静に動いているように感じる。粗削りだった動きも徐々に滑らかになっていく。テディーの動きをみて、体捌きや道具の使い方を吸収しているに違いない。このままいけば負けてしまう。


「強いな。」


ダガーをクレオールは槍で受けていたが、こちらの力が負けている。速度を上げて切りかかっているから速度に合わせた力がかかっているはずだが、クレオールは止まったままで受けている。地面に亀裂が走る。

 テディーは少し不思議に思いながらも距離を置く。クレオールは全身に汗を流していた。

そこではじめてテディーはわかった。先程の身体強化の術は木の術ではあまり適したものではないのだろう。

 テディーは全力で身体強化を施す。周りに光で眩しくなるぐらいに体が発光する。

「クレオール、お前はこの先強くなるだろうがさすがに経験が足らないな。そのような事態に陥るのであればあえて接近戦を選ぶ必要もあるまい。」


 テディーは地面を蹴る。地面は陥没し、周りには地割れが起きている。クレオールはそれに反応をしようとするが体はついていかなかった。テディーの拳がクレオールの腹部にめり込み、クレオールは壁まで吹き飛ばされた。


テディーは倒れたクレオールを見ながら、生体探査を行う。さすがに体は疲弊しており、奇襲をかけられたら反対にやられることもある。生体探査では以上は見られなかった。普通に気絶しているだけなのだろう。ソフィーとラスの方へ行き、治療をしながらこれからのメンバーの運用を考えていた。


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