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デビル・ジュエリー  作者: かかと
クレオール第2章
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第6話

 俺は闇にいた。ここはどこか分からない。ただ目の前には竜がいる。その竜は体が小さく幼竜と判断ができる。俺よりも大きくない。大きくない?俺は…。俺の手を見ていると大きく鱗に覆われている。俺は竜になってしまったのだろうか…。いや、違う。俺が見ているのは白い竜の頭だ。俺は白い竜の上に乗っていた。幼竜よりもずっと大きく古代竜と言われる竜だ。俺が使役しているとでもいるのだろうか。

 俺の目の前で幼竜が膝をつく。俺に服従を誓うのか。俺は再び闇に飲まれていった。



「竜が…」

「ああ、おそらくエネルギーをすべてクレオールに吸収されたようだな。クレオールからは逃げることができるだろうが、彼を止めなくてはメンバーの一員とは言えないな。」


 ラスとソフィーも頷いている。


「最終的な目的はクレオールの意識を奪うこと。そして拘束するところまでが俺たちの仕事だ。さて大変なことはなにかわかっているな。」


 ラスはクレオールを観察している。クレオールの目は遠くを見ているようで焦点があっていない。説得なんてもっての他なのはわかる。しかし、先程のクレオールとは変化しておりプレッシャーが強い。今まで出会った傭兵のなかでも上級に及ぶほどだ。その上、術が普通ではない。あのゼリー状の液体に触れるとたちまち負けることになる。間接攻撃が主体ではあるが…。


「あのクレオールが槍を持っている。」


 ソフィーはクレオールの変化に戸惑っていた。彼は普段、無口だが、こころ優しい人間であったように思っていた。しかし、今の彼には怒りではない。無という感じだろうか。なにも考えていないのだろう。それよりもあの槍を使いこなせてもいないのに使っていることに驚く。


 クレオールは彼らの戸惑いに意も介せず一歩一歩進んで来てくる。テディーは警戒をしている。後ろで倒れている竜には目もくれず、クレオールを見ていた。クレオールが右足に力を込めた瞬間に距離を一瞬で詰める。クレオールはそれに反応をしたが少し動きが止まる。クレオールの足には蜘蛛の糸のようなものにからめられている。


「隙ありだ、クレオール!」


 テディーはクレオールの首筋に向かってナイフの柄の部分をつき出す。テディーはそれを途中で止めて右に飛ぶ。槍の先端がテディーの左の頬を切る。槍の下を見ると柄が地面に突き刺さっている。すでに術の存在に気がついていたのだろう。雷の術を木の術で無効化している。テディーが気がついたときにはクレオールの右側からラスが切りかかる。クレオールはそれを難なく受け、足蹴りを見舞おうとしたが後ろに下がる。ソフィーは炎の弾丸を放ったようだ。テディーとラスはそれに乗じて下がる。


「2人とも大丈夫?」

「ああ、大丈夫だが…。」

「そうですね。隙があるようでないですね。特に相手に術を出させないようにするためには接近戦しかない。術の大きさでは彼には敵わないでしょう。それにしてもクレオール君がここまで接近戦を得意としているとは思いませんでしたが。」


 テディーは首を横に振った。


「クレオールは涼しい顔をしているが、実際には限界を超えているはずだ。暴走では狂戦士化することがわかっている。一種のトランス状態だ。その状態は長く続くものではない。しかし、クレオールの場合には後ろの竜のエネルギーをもらっている分、トランス状態は長く続く。反動も大きいと思ってはいるがな。」


 クレオールが少し表情を変えていた。今までの涼しい表情ではいられないのだろう。暴走も長く続けば続くほど体力を消耗する。俺たちは走って向かってくるクレオールを向かい打つ。




 彼らはクレオールと拮抗していた。しかし、徐々にラスは息を切らし戦いについていけなくなる。ラスが見上げると体力と集中力が低下したところにクレオールの槍が向かってくる。テディーは身体強化を使い、槍の下にナイフを下げ、一気に上へ弾き返す。クレオールもさすがに予期してしていなかったのか、槍を手放しはしないものの槍と共に後ろへ上体がそれる。それを見逃さずテディーはクレオールの懐に入り拳をいれる。雷の属性を付与している分、威力は強くクレオール後方まで飛ばすことができたが、クレオールは怒りの表情を浮かべて立っていた。


「あれでは意識を飛ばすことはできないようだな。感触的には半死ぐらいまでいくような感じで術を使ったが、どうも雷の属性は木の属性と相性がよくないみたいだな。」


 テディーはこのように言っているが、実際に木の属性を使っている術師はいまのところ過去を含めても2名しかいない。そのうちのクレオールが2人目になり、もう1人は文献にしか載っていない過去の人だ。


「しかし、対策の打ちようがないわ。この戦いがいつ終わるかは分からないけど、クレオールもさすがに限界でしょう。木の属性に対処できるのは火の属性でしょうけど残念ながら木に対処できるほどの術を持っている人はいないわね。」


 ソフィーはそう言った。その間もラスの治療を行ってはいるが、すでに術エネルギーをラスは枯渇寸前まで使っているため治療も効果がない。


「こちらとしては何とか次の攻撃を凌いで反撃の際に意識を失わそうと思っていたが…。」


 テディーはクレオールを見て術エネルギーが蓄積されているのがわかった。クレオールはいまだに倒すことのできない敵に癇癪を起こしているのかもしれない。それでなくても情緒不安定なのだ。無理もない。


「最後にこの攻撃にかけようというみたいだな。残念ながら、俺たちは脅威の敵と判断されたに違いない。」

「非常に不味くないですか。」

「ラスのいう通り、非常に危険な状況ではあるが、術の範囲を考えると逃げるのは不可能だろう。そうなれば、わかるな?」


 ソフィーとラスは立ち上がる。


「堪え忍ぶ。それしかないということね。」

「そういうことだ。全員、歯を食いしばって耐えろ。」


 テディーは土の壁を何層にも渡って作る。しかし、それが気休め程度であることを2人は自覚していた。ソフィーは地面の水分をすべて抜き取り強固な地面へと変える。ラスは雷の術を使い、鉄などの成分を分け、一番手前の土壁に含ませる。テディーが感心する。


「わりと器用だな。」

「ええ、子供の時は貧しかったもので土木作業も手伝っていましたから。そう言った意味ではわりと得意ですよ。土の術も。」


テディーたちは各々に強化術を付与する。


「これで安心ということはない。ただ、生き延びることができそうだというだけだ。そろそろ術が完成する。あとは自分達で切り抜けろ。さすがの俺もお前たちをカバーできるほどの余裕はない。」


 2人とも頷いた。


「来るぞ。」


 3人は同時に吹き飛ばされた。ラスとソフィーの意識はなくなった。


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